友人と3人で村上春樹作品を再読しZoomで語り合う会の記録、第10回。「ノルウェイの森」の元となった短編「蛍」を含む「蛍・納屋を焼く その他の短編」についてです。

総評-どうしても「その後」に気が向いてしまう
この短編集に収録されている「蛍」は、数年後に「ノルウェイの森」に「発展」します。
また「めくらやなぎと眠る女」は、約10年後に大幅に短縮され「めくらやなぎと、眠る女」になります。
その上、他の収録作品もどうも別作品との関係・類似性が気になってしまうんですよね。
私たちの話題もどうしてもそういったものが多くなりました。
この短編集の特徴はそんなところにありそうです。
蛍
あらすじ:「僕」は東京の寮から大学に通い、高校時代からつきあいのある彼女と再会し、別れる。
- 35年ぶりに読み返して、20歳の頃に読んだ時とはまた違った印象にちょっと驚いた(よしてる)
- この会のおかげで再読できてよかった
- 「青春小説」という感じで、気恥ずかしさも感じるが、それがまたいい。
- 「ノルウェイの森」の同じ描写のある個所よりも簡潔
- この作品が発火点になってあの「ノルウェイの森」が書かれ、大ベストセラーになるなんて感慨深い
納屋を焼く
あらすじ:彼女が家に連れてきた身なりのよい男は「時々納屋を焼くんです」と言った。
- 前半は「ファミリー・アフェア」に似ている。妹のような感じの女性が親しくなった「きちんとした」男を家に連れてくる。
- 「回転木馬のデッド・ヒート」に出てきそうな話にも思える
- 物語の舞台となっている環境(おそらく東京近郊の住宅地)に納屋があるとは思えない(だからこそこの話が成り立つともいえるが)
- 「納屋を焼く」って「barnをburnする」ってこと?ひょっとして春樹さんのジョーク?
踊る小人
あらすじ:夢の中で小人が出てきて、踊りませんかと言った。「僕」は象を作る工場で働いている。
- まだこの頃の春樹さんは「人の食い方」が攻撃的
- 春樹さんが失望したという全共闘時代への思いにつながっているんだろうなあ
めくらやなぎと眠る女
あらすじ:「僕」は14歳のいとこの耳の治療につきあって病院に行ったとき、高校時代に友達のガールフレンドを見舞いにいったときのことを思い出した。彼女は「めくらやなぎ」という架空の植物について語った。
- 後日短縮されたバージョンよりも危険性をはらんだままで、ホラー要素がある
- 不穏感もより強い
- 病を抱えた人はこう感じているのかも
- もしかすると「アンダーグラウンド」(地下鉄サリン事件へのインタビュー経験)の経験が短縮版の執筆につながったのかもしれない
- 大好きな作品。なぜ好きなのかは説明できないけれど(よしてる)
三つのドイツ幻想
- (三人とも)消化できなかった作品
- 世の中によく見られる「ラベリング」について書かれたものなのだろうか
