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NHKスペシャル 映像詩 里山II 命めぐる水辺

NHKスペシャル 映像詩 里山II 命めぐる水辺 [Blu-ray]

琵琶湖北部の集落で、人々と自然が共生する様を捉えたドキュメンタリー。

って書くとすごく平板になってしまうのですが、この作品にはいろんな点で驚かされました。まず、現代に、しかも京都駅から電車で50分+徒歩十数分のところにこんな世界が残されていたなんて、ってところに。

琵琶湖のほとりに、水路が張り巡らされた集落がある。家の中には「川端(かばた)」と言われる、水路が家の中まで入り込んだ箇所がある。ここでコイが人間の食べ残しを食べ、また人間は野菜を洗ったりする。水路にはわき水があり、わき水でしか生きていくのが難しい魚や水草が生きている。集落の漁師はコイをしかけで捕るが、一部の魚は鳥たちに還元する・・・そんな様子が静かに美しく映し出されていきます。

私は1970年代に小学生で、よくいる「虫が大好きな子」で、かつ水生昆虫(ミズカマキリとかタイコウチとかヤゴ[トンボの幼虫]とか)に特に関心がありました。しかし当時は(個人的な感覚では)川や池の水が一番汚かった時期。恋い焦がれた「水に生きる虫たち・生き物たち」は、大阪のベッドタウンとして人口が急増していた私の実家周辺では、遠い世界の存在でもありました。だから今でも水の美しい風景には特別な憧れを感じていて、機会があれば訪れています(尾瀬、柿田川から中国・九寨溝など)。

しかしそれから30年以上たった現代でも、その頃理想的だと感じた世界が同じ関西に生き残っていたわけです。それも、虫だけではなく、魚・鳥・植物・爬虫類・人間も含めて、持ちつ持たれつ生を営んでいく世界がハイビジョン映像で綴られている。こういった「社会」を保っている方々とそれを丁寧に追った映像スタッフの方には、子どもの頃の自分を含め感謝の気持ちでいっぱいになりました。

加えて、この作品は、ただ「共生」を描くだけでなく食物連鎖の厳しさも同様に「丁寧に」捉えています。「持ちつ持たれつ」って本質的にはそういうことでもあるんですよね。誰かが誰かの命の礎になっているという。そこをごまかさずきちんと見せてくれるところにも制作された方々の意気を感じました。

現地に足を運んでみたいという気持ちがふつふつとわき起こってくる作品です。

(2011年9月25日追記:現地へお伺いしました)


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