きっかけ
恒例の各社ミステリランキング(2014年)で史上初の「三冠」を達成したというので読んでみました。短編集です。
- 早川書房「ミステリが読みたい!」で2位以下に大差をつけての1位
- 文藝春秋「週刊文春ミステリーベスト10」でも、2位とはほぼダブルスコアに近い得点で1位
- 宝島社「このミステリーがすごい!」でも、読書のプロから万遍なく票を集め、堂々の第1位
- 「ミステリが読みたい!」がスタートした2008年以降、東野圭吾『新参者』、横山秀夫『64』など二冠を制した作品はあるものの、上記ランキングで三冠を制覇した作品は『満願』が初めて
- (以上出典:http://www.shinchosha.co.jp/news/blog/2014/12/10.html)
感想
- まず、昭和の香りがする端正な文章に驚いた。著者はまだ30代なのに。
- 矛盾のない論理。いわゆる「ずるい展開」がない。小気味よく鎖がつながる感じ。
- このあたり、北村薫さんの「円紫さんシリーズ」にも通じる印象。まあ、円紫さんの「日常の謎」と違ってこちらは殺人などが普通に起こるけど。
- と思ったら、著者の米澤さんは大学時代に北村薫の『空飛ぶ馬』『六の宮の姫君』を読み衝撃を受けたらしい。やはり。
- 職業小説としても愉しめた。「夜警」では交番勤務の警察官の、「万灯」では海外で資源開発に取り組む商社マンの世界を覗けた。
- 記載内容が実態に近いかどうかは確かめていないが、リアルさは十分。
- ただ、全編を通しハッピーエンドはなし。陰鬱な気持ちになる。
- それでも読んでよかった。どの短編も(好みの差はあるが)期待を裏切らなかった。
各短編の出だしストーリー(ネタバレなし)
夜警
後輩は警官に向かない臆病なところのある男だった。彼が撃たれ殉職する時の言葉は「こんなはずじゃなかった。上手くいったのに、上手くいったのに・・・」なぜこのような言葉が発せられたのだろうか・・・
死人宿
自殺の名所にほど近い、人里離れた旅館。その風呂場に落ちていた遺書。持ち主は誰なのか・・・
柘榴
「人は私の容姿を褒めてくれたし、私自身もそれを誇り、自らを磨くことを怠らなかった」女は、生活能力のない男との結婚生活を終わりにしようとしていた。彼らの二人の娘は・・・
万灯
バングラデシュでガス田開発を目論む商社マンは、説得を聞き入れない現地村人を殺害。すべてはうまくいったと確信していたが・・・
関守
伊豆のある峠だけが死亡事故率が高いことを教わったライターは、それを雑誌記事にすべく取材に赴く・・・
関連メモ
同じ著者が原作のアニメ。
同じように評判を聞いて読んでみたミステリー。