大正〜昭和初期を舞台にしたミステリ短編集。この時代から連想される世相の暗さ、爛れ、臭いのようなものを見事に文章化していました。朝の通勤電車にはふさわしくなかったですが。
最近読んだ北村薫「円紫さんシリーズ」が小気味よすぎて、比較してしまうとどうしても「謎解き」のインパクトは少し弱くなってしまうのですが、それでも「どうやって事件を起こしたか」より「なぜ事件を起こしたか」に焦点をあてた流れは楽しませてもらいました。
一番印象に残ったのは、子どものころの断片的な記憶が何を意味するのか、大学生になってからその驚愕の事実を知る・・・という「白蓮の寺」です。