公式サイト:TVアニメ「氷菓」京アニサイト | 京都アニメーション
以下、ネタバレなしです。
物語
地方の進学校・神山高校に入学した省エネ主義の折木(おれき)(男)、お調子者に見える福部(男)、好奇心いっぱいの千反田(ちたんだ)(女)、小柄な毒舌・伊原(女)の四人は「古典部」に入部。季節が移ろう中発生する「日常の謎」を折木が解いていき、4人は人生の階段を踏みしめていく。
感想
原作者・米澤穂信さんの短編集「満願」についてのメモがきっかけで、友人がこのアニメを紹介してくれて、おかげさまで全話観ることができました。
「満願」が「謎を破綻のないロジックで解く小説」だったので、ミステリとしての期待をもってこのアニメを観ましたが、この作品の魅力はそれ以外のあちこちのところに予想以上のレベルで輝いていました。
まず、端正な画。
背景描写の美しさにここまでうっとりしたアニメは初めてかもしれません。舞台の神山市は岐阜県高山市がモデルらしいのですが、高山に行ってみたくなるくらいに惹かれました。「聖地巡礼」するファンが多いそうですが頷けます。
季節の移り変わりも丁寧に描写されていて、日本の四季の魅力全開です。高山には去年行ったのですが、この作品を観た後だったら絶対巡礼してたな・・・
関連リンク:TVアニメ「氷菓」オフィシャルサイト news/高山市公式・氷菓舞台散策マップが完成しました! 聖地巡礼のお供に役立つこと間違いなし!
登場人物のほとんどが高校生ということで恋愛のエピソードが多いのかと思いきやそれはかなり控えめ。
むしろそれ以外の登場人物の心情、特に「持って生まれたものの有無」など、この年代で恋愛以外に実感し考えを巡らせ時に悩む事柄に物語がフォーカスされています。ここにもしびれました。特に「クドリャフカの順番」シリーズのラストの折木と福部の会話。奥深く、ほろ苦い。
古典部の4人それぞれのキャラクターの魅力も素晴らしいし。
要所要所で使われているクラシック音楽、G線上のアリアや無伴奏チェロなども実に効果的。
個人的にはフォーレのシチリアーノがどはまりで。
(1947年演奏のパブリックドメイン音源)
謎解きは、正直、上記の魅力ほどの力強さはなく、「満願」のレベルには達していないのですが、それでも物語の魅力を高めるスパイスとしての役割は十二分に果たしていると思います。
「なぜ毎週同じ本が同じ時間に貸し出されるのか」「なぜ温泉宿に首つりのようなシルエットが浮かんだのか」そして「なぜ古典部の文集タイトルは『氷菓』なのか」など。
個人的には、文化祭の出し物として2年生のクラスが撮った映画を巡る「愚者のエンドロール」のラストが一番余韻に残りました。「「女帝」入須はなぜ映画のラストを折木に推測させたのか?」
実に味わい深い作品でした。紹介してくれた友人に感謝です。