この日の放送でいちばん楽しみだった慶野由利子さんのご出演。ナムコ「ゼビウス」「ディグダグ」などの音楽で知られていて、ゲーム業界初の音楽専門職採用者とも言われている方です。冒頭は聞き逃すわ、録音は失敗するわで私自身のせいで残念な面はありましたが、放送そのものからはいろんな事実を知ることができました。(枠内は、よしてるによる要約です)
ディグダグ
当初歩行音は「音」だったが、いいものができなかった。大野木(宜幸)さんがミュージックにしてみたら?と言ってくれたので、音楽にしてみた。歩行音は音楽なので、歩くのを停めると音楽も止まる。
この「歩くのを停めると音楽も止まる」というのはディグダグを初めてプレイしたときに「えっ」と思ったことをはっきり覚えています。でも、ちょこちょこ歩けば音楽もちょこちょこしたりするのが自分でBGMを操作しているみたいで楽しかったんですよね。ちょっとしたことですが、大切な思い出・感触です。そのことをまた思い出すことができました。
ゼビウスの慶野さんお気に入りサウンド
第3位 シオナイト
第2位 空中物破壊音。音源が3音しかない中、贅沢にも3音すべて使っているので、空中物を破壊している間はBGMが消える。
第1位 バキュラ。これも2音使っている。得点にならないものに音を使っていて贅沢。
たしかに贅沢だ。でもこの「BGMが途切れる」のも含めての「ゼビウス体験」なんですよね。
パックランド
アメリカのパックマンアニメの音楽をもとにしたが、アニメのビデオはあったがスコアがいつまでたってもこないので耳コピした。
今ならメールで一発のところ、当時はこういうこともあったんでしょうね。
当時の状況・他
生意気なことを言うようですけど・・・長い音楽の歴史の中では、新しい楽器ができればその楽器のための新しい音楽が生まれてきた。当時も、音源が新しい楽器と捉えると新しい可能性が広がっている、と考えていた。
フォゾンの少し前から音源チップが変わった。ドラゴンバスターからノイズをいじれるようになった。
これは当時のゲーム音楽のおもしろいところですよね。ハードの進化が日進月歩ながら表現力は不十分、使用できるメモリなども不十分、その中でどこまで表現を落とし込むか、そのせめぎあいのようなところ。
高校まではクラシックの作曲を勉強していた。大学で他の音楽に幅が広がった。
東京芸大で民族音楽専攻でいらしたのですよね。
オリジナル曲
数々のエピソードも楽しかったですが、白眉はやっぱりこのオリジナル曲たち。
いちばん感銘を受けたのは、パブリックな場では初めてという蔵出し音源「DBDD」(DragonBusterDigDug)。「ディグダグがドラゴンバスターの世界に迷い込んだところ、お姫様が登場し、華麗な舞踏会が開かれ・・・でも時は過ぎ、岩が落ちて死ぬ、という設定」で両方のメロディを見事にミックス、ゲームへの愛情と職人技の両方をビシビシ感じてしびれました。あのディグダグの歩行音がだんだんハ短調(ドラバスと同じキー)になってドラバスBGMに、そして仮面舞踏会っぽい音楽に・・・しかも、(私には感知できませんでしたが)「DBDD」だから「レシレレ」を60分の1秒で鳴らしている箇所もあるそうで・・・じっくり聴いてみたかった。
次に披露されたのは「交響的舞曲」。といってもラフマニノフのではなく慶野さんオリジナルで、チャリティアルバム「Game Music Prayer 2に収録されていたそうですが、私ははじめて聴きました。中近東な感じのメロディが心地よかったのですが・・・オンエア中にマッピーBGMが入ってしまってました*1。NHKからのお詫びのあと、慶野さんが「ここでしか聴けない(バージョン)ですね」とフォローされててさすがのお人柄だと感じましたが。
最後にオンエアされたのは「セリア姫のポプリ」。ドラゴンバスター・セリア姫の音楽にディグダグなどがミックスされてる。こちらも「DBDD」同様ゲーム愛と職人技に脱帽でした。
終盤には、ファミコンの実機で動く新作!ゲームキラキラスターナイトでも一部の音楽を担当されているという、今もゲーム音楽に関わっていらっしゃるというニュースもあり、懐かしさだけでなく今にもつながるとても楽しくうれしい番組でした。
(参考)慶野さんに関する他のメモ:慶野由利子さんインタビュー(シューティングゲームサイドVol.5)
*1:これは事故ですよね?アレンジではなく