庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

2022年の収穫(2)-ギャラリーアイ、慎泰俊さん、Wet Leg、近代建築特別見学

2022年に買ったり出会ったものの中で特によかったもののご紹介、第2弾です。

買い物

今年一番の買いものは先日書いた「ビートルズの英国オリジナル盤Revolver(回収マト1)&専門店と同じレコードプレイヤー+カートリッジ」ですが、2番目はこれかな。

美術鑑賞用単眼鏡「ギャラリーアイ」

美術館などで、作品の細かいところを観るために使うスコープです。柵やガラスで作品に近寄れない場合にも便利。

奈良国立博物館の正倉院展で多くの人が持っていたのを見て、たしかにこれはあるといいかも、と思い購入。

その後、京都国立博物館の「特別展 京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」で陶磁器や絵画(特に水墨画)に使ってみたところ、なんでもっと早く買わなかったんだろうと悔しくなるくらいでした。

音楽をいい音で聴くのに似ています。見えなかったところが見えて作品全体の理解も変わり、その作品の核やクリエイターの思いに近づける、というと大げさでしょうか。でもそれくらいに「世界が変わる」品です。

この手の製品ではヴィクセンの「アートスコープ」が有名ですが、私は↓のブログを拝読してケンコーの「ギャラリーアイ」を選びました。ヴィクセンのものに比べより視野が広く、眼鏡をかけたままでも使いやすいみたいです。

参考にさせていただいたブログ:【徹底比較】単眼鏡はケンコー?ビクセン?両方使った美術館オタクのおすすめ(4倍) : アートの定理


リングフィットアドベンチャー

こちらは、生活を変えてくれたソフト。Nintendo Switch用フィットネスゲーム+専用コントローラーのセットです。



家族全員インドア派の我が家、コロナ禍でますます外で身体を動かす機会が減っているのでこれを買ってみましたが、ふだん運動していない我々には非常によかったです。

ちゃんとやると冬でもしっかり汗をかくくらいには身体を動かせます。というか、最初のうちははけっこうきついと感じるくらいでした(運動負荷は調整可能)。なにより、ベースは任天堂がつくったゲームだし何をしてもポジティブな音声で励ましてくれるので(これ重要)、楽しく身体を動かせます。

特に小5の次男は全ステージクリアするまでは毎日欠かさずやってました。私も6月に買って以来、週に5日くらい、1回20分30k~50kcalくらいのペースで続けています。

これだけで日々の「望ましい運動量」をまかなうことは難しいかもしれませんが、身体がなまるのを防いだり、気分をリフレッシュする程度であればもってこいです。


音声メディア

慎泰俊さんのTJ RADIO@stand.fm

以前から注目していた慎泰俊(しんてじゅん)さん。投資銀行を経て、「機会の平等を通じた貧困削減」を目指すNPOLiving in Peaceや、児童相談所がきちんと役割を果たすための日本児童相談業務評価機関を設立、現在は民間版世界銀行を目指す五常・アンド・カンパニーの創立者・CEOとして、グループ従業員8,500人とともに途上国5カ国139万人の顧客に金融サービス(マイクロクレジット)を提供*1する事業のかじ取りをされています。

このような社会貢献事業もそうなのですが、社会についての考え方、大量の読書や音楽・ゲームまで幅広く楽しむ行動力、乳児育児をパートナーさんと平等に分担するライフスタイル、はては生き方まで心から賛同するところが多く、私個人は「自分がやりたくても努力&能力&意欲不足でできてないことを代わりにやってくださっている方」として勝手に私淑しています。

そんな慎さんの動静はnoteで読むこともできますが、音声メディアstand.fmで今年からはじまったTJ RADIOでは「リスナーからの質問にひたすら応えていく」というスタイルなのでより身近というか、根っこの部分に近づけそうな感じがしています。

何より話題が幅広い。海外出張先の様子から世界情勢、読んだ本、美術展、文房具、はまったゲーム、好きなお酒など幅広い。今年一番「毎回のリリースが楽しみなコンテンツ」でした。

今のところ週1~2回の更新。今年放送された98コンテンツは全て聴きましたが(私の質問「好きなドラマーは誰ですか」にも回答いただきました)、これをいつまで続けていただけるのかは不明です。ものすごく密度の高い(多忙な)日々を過ごしておられる方なので、こういう内容を提供くださっていることにまず感謝、なのですが。

(2023年1月3日追記)2023年からはSpotifyで配信するとのことです。



マイケル・サンデル「実力も運のうち」


タイトル、逆では?ふつうは「運も実力のうち」じゃないの?と思いますよね。私も最初はそう思いました。

ですが、本書を読了した今なら、これはうまいことつけた邦題だなと思います*2。本書が訴えたいことをうまくまとめているので。

本書では、実力(実績)主義一辺倒の考え方への疑問を投げかけています。

実力主義への疑問?その人の実績に応じて得られるものが増えていく社会の何がいけないのか?家柄や縁故で人生が決まる社会よりよっぽどいいのでは?

私もそう考えていました。正確には「実績を生み出すベースになる遺伝や環境は平等ではないので、実績を積み重ねやすい環境にある人とそうでない人の差は確実にある。だから、実績によって人が評価されるのは望ましいけど、それ一辺倒では不公平」くらいに考えていました。

が、サンデル博士の思考はもちろんそんなレベルではなく、実力主義の弊害とそれへの代案が続々と提示され、論を深めていきます。

私は、その思考の入り口に過ぎない「実績といっても、何が社会で高く評価されるかは時代や場所で変わる。その人が実績を積んで評価されたといっても、それはたまたまそれが評価される時代・社会にいたからだ」という指摘だけでも相当目を開かれた思いでした。

よく言われる「名著とは、読んだ後に世界がそれまでとは違って見える本のことである」ということばを思い出させてくれた一冊です。

森川正之「生産性 誤解と真実」

生産性に関する論文のポータルサイトみたいな本なので、読んでおもしろい本かというとちょっと違う気がするのですが、得るところが大きかったという点ではこれも今年随一でした。

本書で学んだことは以下の記事にまとめました。

村上春樹作品再読会

今年から、ファンの友人二人と毎月リモート読書会をはじめました。

もちろん三人ともほとんどの春樹作品を読んではいるのですが、それをあえて再読して語り合う。ただそれだけなのですが、「時をおいて再読することによる自分自身の感じ方の違い」と「三人で話し合うことによる発見」が予想以上に愉しいのです。

読書会で語り合った記録の一覧はこちら。

音楽

再生回数上位ミュージシャン

今年のミュージシャン別再生回数トップ10は次のとおり。PCでのiTunes・Spotifyと、スマートフォンでのSpotifyでの合計です。

  1. The Beatles
  2. Aphex Twin
  3. J.S. バッハ
  4. 坂本龍一
  5. 藤原さくら
  6. Wet Leg
  7. Paul McCartney
  8. 小沢健二
  9. Susanna Hoffs
  10. Perfume


The Beatles

アナログレコードの再生回数は含まれていませんが、アナログはビートルズばっかりなので、今年の再生回数トップがビートルズというのはどちらにしろ変わりません。

ビートルズアナログレコード専門店B-SELSのおかげで知ることのできたアナログ盤の魅力犬伏功さん主催のRevolverなどのカッティングマスターテープを聴くイベントなどの影響で、アナログはもちろんデジタル音源も含めビートルズにGet Backしたことが大きな理由だと思います。

Aphex Twin

2位のAphex Twinは、高校生の長男がDTMを始めた影響もありこういう音楽への興味が俄然わき、結果その心地よさに身を委ねる時間が格段に増えた結果。

90年代初頭に話題沸騰だったSelected Ambient Worksも大好きですが、今のお気に入りはミニマム系のこういった曲です。



Wet Leg

今年新しく知ったミュージシャンの中で一番よく聴いたのはWet Leg。謎の中毒性があり、ついリピートしてしまうんですよね。チープなサウンドやワンノートベースラインの多用も彼女たちの手にかかるとなぜか心地よくなるのです。


ライブ Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022

今年一番のライブは、生ではないのですが、坂本龍一教授によるピアノソロライブ。闘病中のため数回に分けて録画したものをストリーミング。

音楽も音も極上でした。

音響。生のライブを意識して収録しており、ピアノのペダルの音も聞こえる。あえてそうしているのですね。もちろん音質もものすごくいい。配信会社のMUSIC SLASHは実にいい仕事をしていると思います。

選曲も。Lack of Loveは恥ずかしながらここで知りましたがこんな名曲を今まで素通りしていたとは・・・オリジナルアルバムに入っていないAubadeが選ばれたのもうれしいし納得。Wuthering Heightsの激しさには特に心揺さぶられました。

全編で、教授が普段のライブ以上に音楽に集中し生命エネルギーを注いでいるような静かな気迫がみなぎっていました。それが病の克服にもつながりますように、と心から願います。

ところでこのライブ、アーカイブはありませんでした。なので所定のストリーミング時間に聴くしかないのです。最初は不便だと思いましたが、本来ライブってそういうものですし、集中して教授の音楽を体感できたので、最終的にはこのスタイルには大いに納得しました。MUSIC SLASHがあえてこだわってそうしているようなのですが、ライブというものをよく理解した真摯な取り組みだと感心しました。

とはいえこれはぜひ円盤化してほしいです・・・

ドラムレッスンに通い始める

去年から自宅で電子ドラムを触り始めたのですが、これはちゃんと習いに行った方がいいと思い(妻にも言われました)、5月から45分×月3回で通い始めました。

当たり前ですが、教えていただくと全然違いますね。身につく度合いも、課題曲(といっても自分で決めてますが)の理解も、おもしろさも。

The Beatles / Back in the U.S.S.R、YMO / 体操(全編だと足がもたないので後半だけ)を経て、今は椎名林檎 / 正しい街を練習中です。亀の歩みでも「できなかったことができていく」のと、練習を通じて課題曲の理解が深まっていくのが実に愉しい。


お出かけ

仕事以外で関西圏から出ることはなかったのですが、近場でもいろんな新しい経験ができました。

村上春樹さんの小中高時代ゆかりの地を歩く

以下のメモに書いたとおりです。以前からこんなことができればいいのに、と思っていたことが、前述の「再読会」の二人が東京から来てくれたことで実現しました。

近代建築の特別見学

数年前から、明治期以降に建てられたいい感じの建築物を眺めるための街歩きをするようになったのですが、今年は関連イベントのおかげで、ふだん部外者以外は入れない場所に特別に入れていただく機会が何度もあったのがありがたかったです。

京都モダン建築祭

今年ついに実現したイベント。数々の名建築が見学対象になっていましたが、特にありがたかったのは教会建築。興味はある一方、冷やかしで入る場所でもないのですが、今回はこのイベントのおかげでしっかり見学できました。

以下、右側(スマートフォンの場合は2枚目以降)の写真が特別見学のおかげで見られた場所です。


聖アグネス教会

河原町カトリック教会

旧島津製作所本社(現在は結婚式場)の屋上に上ることができたのもいい記念になりました。

旧島津製作所本社

京都モダン建築祭、来年も開催されればいいな。 公式サイト:京都モダン建築祭

まいまい京都で行く 国立京都国際会館

この建築は前から大好きで、毎月開かれる部外者OKの日「Open Day」には参加したことはあったのですが、それでも会議場やバンケットルームには入れませんでした。ですがまいまい京都のツアーではそれらの部屋に加えVIPルームにまで見学でき、しかも職員さんのガイドつき。とても充実した2時間半になりました。

Open Day体験時のメモはこちら

近江八幡のヴォーリズ建築

宣教師・教育者そして建築家として名高いウィリアム・メレル・ヴォーリズが住み、建築も多数残る滋賀・近江八幡。こちらでGWにイベントがあり、ヴォーリズ学園(旧 近江兄弟社中学・高校)の講堂で行われた講演会に参加できました。

ほか、一日かけて多くのヴォーリズ建築を巡りましたが、特に印象に残ったのがこちら。

旧八幡郵便局

旧吉田邸

こうして「2022年の収穫」をリストアップしてみると、そのほとんどはどなたかに協力やきっかけをいただいて得られたものがほとんどであることがわかります。本当にありがたいことです。


関連メモ



注釈


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