庭を歩いてメモをとる

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夏目漱石「こころ」

こころ (岩波文庫)

[物語]
東京の学生「私」は、鎌倉の浜辺で「先生」に出会う。「私」は「先生」に惹かれ、東京に戻っても訪ね続けた。「先生」は毎月誰かの墓参りにでかける他は、妻と静かに暮らすだけ。そして過去に負い目があるようだった。そんな中、「私」は父の病状が思わしくなくなったため里に帰るが・・・

[感想]
こんなに相反する気持ちを持ちながら読み続けた小説は初めてかもしれません。頭の中では、「先生」のやることなすことが自分本位に見えそうじゃないだろうとつっこみを入れまくっているのに、文章を追っている間、身体はどこかはかない美しさのようなものを感じている。そんな不思議な感覚の中、物語に引き込まれていました。

「先生」の人としての弱さを否定する気持ちも資格も私にはありません。同じような過ちを犯さないと言いきれる人は少ないと思います。しかし、私は「先生」に、遠藤周作「沈黙」のキチジローに対して感じたような「赦し」の気持ちを持つことはできません。それは「先生」が伴侶とともにいたからです。


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