[物語]
朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキーは、妻に先立たれ息子たちともうまくいかず、孤独の日々を送っていた。彼の楽しみは愛車、フォード72年型グラン・トリノだけ。そんな中、隣にアジア系モン族の一家が引っ越してきた。人種差別主義者のウォルトはそれを苦々しく思っていたが、ふとしたきっかけで一家との交流が始まり・・・
[感想]
さすがイーストウッド監督、異なる人々・文化とのコミュニケーションや「年をとったとき若者に何を教えられるか」ということの重要性を伝える部分だけでも傑作級なのに、それだけでは終わらせない決着のつけ方。「ミリオンダラー・ベイビー」ほどではないにしても、映画の中盤で感じていたほほえましさ、あたたかさから重い「本当のテーマ」に無理矢理観客を対峙させ、深い余韻と感動をもって締めくくる。本当に、ずっしりした手応えを必ず残してくれる監督だなと私の中での「イーストウッド格付け」がまた上がった作品でした。
といいつつ、観終わってしばらくたった今改めて映画の内容を思い起こすと、今の自分に問いかけられているのはやはり「年をとったとき若者に何を教えられるのか」というテーマではないかという気がします。今39歳の私は、映画のタオ(モン族の少年で、ウォルトからいろいろと学んでいく役回り)ではなく、ウォルトの立場に近づいていっています。これから、自分の子どもを含め、若い人に何を伝えられるのか。自分がかかわったことにはウォルトのような決着がつけられるのか。今までそんなことはほとんど考えたことはなかったのですが、そういう新たな問いを投げかけてくれた作品でした。