コロナ禍で大きな打撃を受けている産業を支えるため、政府によりGOTOキャンペーンが実施されています。
GOTOトラベル、GOTO Eat、GOTO商店街はスタートしており、街を歩いていても、これらのキャンペーンに参加しているお店が目につくようになってきました(Eatはまもなくポイントが底をつくそうですが・・・)。
しかし、GOTOイベントは、まだユニバーサルスタジオジャパン(USJ)とサンリオピューロランドだけしか対象になっていないようです(2020年11月14日時点)。
GOTOイベントは、コンサート・展覧会・観劇・スポーツ観戦を対象とするものだと公式サイトに書かれていますが、そのどれもがまったく放置されているように見えます。
これはなぜなのでしょうか。
コンサートやスポーツ観戦は人の密度が高く飛沫も飛ぶので慎重になっているという話も聞かれます。
しかし、本当にそれだけでしょうか。
そう思って、イベント(エンターテインメント・スポーツ)と、トラベル、Eatの市場規模を比較してみました。
「イベント」系産業の規模
このグラフのうち、「コンテンツ」からGOTOイベントにかかわるものを抜き出してみます(別メモではその内訳もグラフ化しています)。
- 音楽ライブ・・・3,875億円
- 舞台・・・1,987億円
- 映画興行・・・2,225億円
- 美術館入場料等・・・504億円
- 計・・・8,591億円(a)
内訳記載のグラフはこちら↓
さらに、グラフの「スポーツ」のうちGOTOイベントに関係するのは以下かな。
- 施設提供等・・・2兆5,394億円
- 商業・輸送・・・1兆5,516億円
- 計・・・3兆9,110億円(b)
この二つを合計すると、a+b=4兆7,701億円。これが「GOTOイベント」に関連するだいたいの市場規模といえると思います。
「トラベル」「Eat」産業の規模
一方で、グラフの「旅行」のうち、コロナ禍でGOTOをもってしても回復が見込めない「海外旅行国内分」「訪日外国人」を除くと、「GOTOトラベル」市場規模は20兆5,000億円。
グラフの「外食」からは、「料理品小売」「集団給食」を除いた22兆3,705億円が「GOTO Eat」市場規模といえるかと思います。
GOTOイベントが後回しになっている理由
上記の3産業の市場規模を比較した結果が以下です。
- GOTOイベント:4兆7,701億円
- GOTOトラベル:20兆5,000億円
- GOTO Eat:22兆3,705億円
GOTOイベント産業の規模は他2つの1/4程度にすぎないのですね。これが「GOTOイベント」が後回しにされている理由のひとつかも。
もちろんこれは産業規模をかなり単純化した比較ですし、たとえばGOTOトラベルのクーポン対象店にも外食はもちろんコンビニや家電量販店まで含まれたりしていますので、各GOTOキャンペーンを特定の産業に紐づけるのも荒っぽいやり方かもしれません。
とはいえ、イベント産業は旅行産業や外食産業よりかなり規模が小さい、ということはいえますし、これだけ差があれば、支援策の優先順位を下げるという発想は、政治の場では充分あり得るように思えます。
特殊な趣味かもしれないけれど
前のメモにも書きましたが、私には、親族にも友人にも音楽が好きな人が多いですし、音楽を仕事にしている人も何人かいます。
そんなわけで、「(無観客)ライブ行ってきた(観た)」「ライブの練習をした」という話やツイートに、このご時世でも毎週のように接しているのですが、それがいかに特別な環境なのかを思い知りました。
音楽ライブってどちらかというと「特殊な趣味」だったんですね。その規模、国内旅行産業の50分の1以下*1ですから。私はどちらも大好きですけど。
ライブハウス等が苦境に立たされている話などを見聞きするにつれ、「なんでGOTOイベントってライブ系をほったらかしにしてるのかなあ。密・飛沫が危険、といっても居酒屋もそんなに変わらないと思うし、対策次第でリスクは減らせると思うんだけど」と思って調べてみた結果、それがわかったという。
だからといって、イベント産業への支援が後回しにされてもいいとは思わないですけれど。
出典一覧
- コンテンツ産業
- スポーツ
- 日本政策投資銀行・日本経済研究所・同志社大学「わが国スポーツ産業の経済規模推計」P.18 2016年分スポーツGDP。
- 旅行
- 一般社団法人日本旅行業協会「数字が語る旅行業2020」P.18 2018年分国内関連総消費額(日本人が海外旅行で使った金額を除く)
- 外食
関連メモ
*1:音楽ライブ3,875億円 ÷(国内宿泊15兆8,000億円+国内日帰り4兆7,000億円)