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地球温暖化は「たいしたことない」のか-「ウソ・本当」両方の意見を比べてみた(3)

地球温暖化の「ウソ・本当」両方の意見を比べてみたシリーズ。

これまでの振り返り

第1回は、地球温暖化は本当に起こっているのかについて確認してみました。
すると、この問題に対して肯定的な研究者だけでなく、懐疑的な研究者たちでさえ、ほとんどが「過去100年で0.7℃程度の温度上昇があった」ことについては異論がないということがわかりました。

第2回では、その温暖化が本当にCO2によるものなのかを確認してみました。
結果、次のようなことがわかりました。

  • IPCCの報告書の内容は、多くの専門家によってチェックが行われたうえ、指摘内容やその指摘への対処内容がすべてネットで公開されているため、かなり覆すのが難しい内容で、仮に誤りがあったとしても指摘・修正されやすい仕組みになっている。
  • その報告書に「地球温暖化の主な原因はCO2」と述べられている
  • また、研究者同士の討論を確認しても、「地球温暖化の原因はCO2」説についての反論・異論には再反論がなされていて、そこで討論が終わっている
  • よって「地球温暖化の原因はCO2を含む温室効果ガスである」という説は信頼できる


今回、つまり第3回では、地球温暖化は「たいしたことない」のかどうか、つまり「温暖化は起こっているが、人類や環境へのマイナスの影響はそれほどではなく、大金をかけて対策する必要はない」のか、あるいはそうでないのかを確認していきます。
方法としては、これまでと同様、研究者による文字ベースの討論をもとに、「たいしたことない」派・「対策すべき」派の意見を比較し、自分で考えていきます。

討論内容を確認(1)一般向け書籍

まずは一般向けの本に書かれた討論を確認してみます。

「たいしたことない」と考える理由

こちらの本で、武田邦彦氏はこう語っています。

  • IPCCの第4次報告書を読んだ感想は「たいしたことないな」。特に日本の場合は焦って対策する必要はない。
  • 今後の30年きざみで見れば気温は1℃しか上がらない。今から対策をしなければならない緊急性があるのか。
  • 30年以上先のことは考えていない。なぜなら技術革新などにより社会が大きく変わって、温暖化に対応できるようになるからだ。
  • 生態系についても、温暖化で生物の数も増える。温暖化肯定派の人と話していて、温暖化で減る生物と増える生物の比較したデータを見たことがない。
  • 50年後くらいから、大陸などでは大きな被害が出るが、日本で影響が出るまでにはさらに30年のタイムラグがある。今(2009年)の日本ができることはない。

「たいしたことない」とのご意見です。要は、温暖化が進んでも、イノベーションなどによって社会がそれを解決するから、温暖化の早急な対策は必要ないとのことです。

対策が必要なのはなぜか

それに対して、江守正多氏はこう話しています。

  • たしかに、温暖化を大げさにとらえている人は多い。温暖化で「文明の存続が危ぶまれる」と考えていた人が、自分(温暖化対策肯定派)の講演を聴いて温暖化は「健康的あるいは経済的に被害に受ける」ものだ、と認識を改めることも多い。
  • しかし、気温上昇もCO2濃度も、対策を始めてもすぐには止まらない。今すぐ(2009年現在)に対策を始めても気温上昇を2℃に抑えるのはすごく難しい。
  • 生態系への影響についても、温暖化に適応できないというデータは存在する*1
  • 日本が他の国に比べ温暖化の影響を受けにくいというのはその通り。海に囲まれていると同じ緯度の大陸の国よりは温度上昇もマイルドになるし、お金も技術力もあるからだ。
  • しかし、今後30年にわたって日本が深刻な影響を受けないという仮定には同意できない。食料輸入への影響、環境難民の問題、環境悪化による紛争の可能性なども考えられる。

武田氏の意見の一部は認めつつ、温暖化対策は日本においても必要、という考えです。

なお、この討論は、いったん以上のやりとりで終わっています。


討論を読んで感じたこと

私は両者のやりとりを読んで、両者の論の根拠は何かを確認してみました。

武田氏の「温暖化は対策しなくても社会の進歩により解決される」という意見の根拠は、「今までも社会は進歩してきているから」というものでした。具体的に「こういうイノベーションが現時点でここまで開発されている」というような例示はありません。

となると、これは根拠というよりは希望または願望だといったほうがいいように思います。

一方、江守氏の「温暖化対策は必要」という意見は、これまでの氏の意見と同様、IPCC報告書に基づくものでしょう。

となると、IPCC報告書の将来予測部分の信頼性が重要になります。この点について、学会誌の討論ではどう扱われているのでしょうか。


討論内容を確認(2)学会誌

討論のポイント

エネルギー・資源学会誌の2009年1月号・3月号「地球温暖化:その科学的真実を問う」での研究者による討論では、海洋研究開発機構地球シミュレーションセンター プログラムディレクター・草野完也氏と、横浜国立大学教授・伊藤公紀氏は、(IPCCも使っている)気候予測は信頼性が低いと述べています。

どのように信頼性が低いのでしょうか。

  • 草野氏:気候モデルによる予測は試行錯誤の段階にあるため、IPCCの報告書は一つの仮説と捉えるべき。
  • 伊藤氏:予測については、専門家による反論がある(具体例も挙げている)。

これらの意見に対して、江守氏は次のように反論しています。

  • 江守氏 → 草野氏:一般論としてたしかに予測に限界はある。それでも予測内容から温室効果ガスが温暖化の主因であるとはいえる。
  • 江守氏 → 伊藤氏:反論の具体例に対しひとつずつ再反論。そもそも伊藤氏の訳と引用の仕方に偏りがある点を指摘。


討論の着地点

これらの論争は、結局どのように終わっているのでしょうか。

草野氏と江守氏は「この討論は議論の結果としてどのような結論に至るかを怖れることなく、定量的な予測精度や不確実性を論じることの重要性」について同意し、江守氏の「現時点で得られている知見の総体に誤解なく照らしてIPCCの結論の妥当性を評価して頂けるならば、草野様と私の考え方の間に本質的な違いはなさそうです。」という言葉で締めくくられています。


伊藤氏と江守氏の間では、伊藤氏の次のような言葉で結びとなっています。

ご指摘のように、私は特に、間違っている点(科学的にでも他の面でも)を強調します。それは、間違いが拡大することで大きな環境政策的失敗を生む可能性があると感じるからです。江守様は、ゴア氏の記述に寛大なことでも分かるように、合っている点を強調されます。もちろん、その方が建設的な場合もありますが、そうでない場合もあります。

(中略)観点多様性の研究の結論によれば、多様性が維持されるためには、あまり当事者同士が仲良く討論しないほうが、質の差が保たれてよいそうです。とはいいましても、機会があれば、また是非このような異分野討論をさせていただきたく存じます。気候変動の問題には、まだまだ多様性が必要と感じますので。

以上の着地点を見る限りでは、IPCCによる今後の気候予測は「現時点(2009年)ではある程度信頼のおけるものだが、絶対に確実なものとまではいえない」というふうに読み取りました。


「ウソ」「本当」を比べて私はどう思ったか

以上の内容を読んで「地球温暖化は『たいしたことない』のか」という疑問に対して、私はこう考えるようになりました。

  • 「将来温暖化が起こっても社会が変わるので問題ない」という意見には賛成できない。根拠がないから。
  • では温暖化が今後必ず起こるのかというと、IPCCの予測にも不確実な部分はある。

ところで、上記の討論は、2008~2009年に行われたものです。

現在(2021年)はどうなのでしょうか。この「不確実な部分」はどこまで修正されている、あるいはまだ不確実なままなのでしょうか。

それを次回に確認しようと思います。


関連メモ

最初の疑問「地球温暖化は起こっているのか」について調べてみたことや、そもそもなぜ私が「温暖化がウソか本当か」を調べたくなったのかや、ウソか本当かを調べる方法について。


2番目の疑問「温暖化が本当にCO2によるものなのか」についてや、IPCCの報告書がどの程度信頼できるものなのかを確認。

注釈

*1:IPCC第4次評価報告書(第2次作業部会)によれば、森林の移動速度は1年あたり100メートル未満


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