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地球温暖化は起こっているのか-「ウソ・本当」両方の意見を比べてみた(1)

地球温暖化。

もはや知らない人のいないレベルの社会問題であり、「一般常識」「既定路線」になってしまっています。

そして、毎日のように流れ続けているのが、この温暖化対策に巨額の投資を行うというニュース。

ところが、ネットや書店には、温暖化はウソであると書かれたものが大量に存在しているのも事実。

もし温暖化がウソなら、地球温暖化対策に使われている巨額の投資や税金は「壮大な無駄」ということになってしまいます。

なので、「ウソ・本当」どっちが正しいのか、できる範囲で調べてみようと思います。

目次



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私の疑問と理由

私が調べてみたいと思ったのは次の4点です。

  1. 地球温暖化は起こっているのか
  2. 地球温暖化の原因は人間の出すCO2なのか
  3. 地球温暖化は「たいしたことない」のか
  4. 地球温暖化への対策は正しいのか

この4点が気になる理由は二つ。

ひとつは、純粋に「実際のところはどうなのか」「なぜこんなに意見が分かれるのか」を知りたいから。

もうひとつは、納税者として、税金をできるだけ自分が意味あると思うことに使ってほしいと考えているからです(もちろん、納税していない人も、生きている限り社会問題に関心を持ち、必要に応じて声をあげる権利はあります。)。

1. 「そもそも、地球温暖化は本当に起こっているのか。」これがウソなら、2.以降の確認は不要になりますね。

2. 「地球温暖化は起こっていることは認めるが、それは人間の出すCO2のせいではない」という説も目にします。これが本当なら、現在お金が湯水のように使われている脱炭素対策は壮大な無駄遣いだということになります。

3. 「地球温暖化は起こっているが、大騒ぎするほどのことではない。人類に与える影響は少ない。」こういう説です。これも、もし本当なら「脱炭素対策は壮大な無駄遣い」になります。

4.「地球温暖化は起こっていて、それは人類の出すCO2が原因で、深刻な問題だ。だが、現在行われている脱炭素対策は間違っている。」これももし正解なら「現在の脱炭素対策は壮大な無駄遣い」です。


では最初の「地球温暖化は本当に起こっているのか」という疑問について調べてみます。


気象庁のサイトでは

まずは、気象庁のサイトを見に行ってみました。

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/figs/p07.png
気象庁「地球規模の気候の変化」から引用

一目瞭然で「地球温暖化は起こっている」という感じなのですが、「ウソ」の意見をあれだけ目にすることから考えると、このグラフを覆す重要な情報がほかにあるのかもしれません。

「ウソ」の意見も読んでみたいと思います。

ちなみに、このグラフを見ると、日本での実感と違う、日本は過去数十年でもっと上がっていると感じる方もいらっしゃるかもしれません(私もそうでした)。たしかに日本でも都市部に限ると過去100年で2~3℃ほど上昇しているのですが、これは地球温暖化の影響より、人間活動が出す熱や緑の減少、アスファルトの蓄熱など、いわゆる都市化によるものが大きいそうです*1


異なる意見の比べ方

さて、私は地球温暖化問題の専門家ではない、単なる納税者です。

専門家ではないので、「温暖化はウソ」「本当」それぞれの説の妥当性を単独で判断するだけの知見がありません。どちらの意見を読んでも、「そうなのか」としか思えないことが多いです。論の立て方がおかしかったり、グラフやデータの使い方が恣意的だったりする場合は別ですが。

でも、研究者同士がこの問題を討論しているのを読めば、どちらの言い分に納得できるか、くらいの判断はできるかもしれない。

そこで、この地球温暖化問題「ウソ・本当」両方の意見を、こういうふうに比べていくことにしました。

  • 「ウソ」「本当」それぞれ違う意見をもった人同士の討論を読む
  • 補足として、「温暖化はウソだ」「本当だ」それぞれの意見が単独で書かれたものを読む
  • どちらにより納得できるか、自分で考える

また、前提として、それぞれの意見は「文章で書かれたもの」「根拠について出典が明らかなもの」に限ることにします。動画による説明や討論は、そこで述べられている意見だけでなく、発言者のプレゼン能力によって説得力がかなり変わりますので文章で。そして出典が明らかでない根拠を示されると、その根拠と発言者の両方が信頼できなくなるためです。

なお、今後、「温暖化はウソだ」という意見が強い人を「温暖化懐疑派」、「温暖化は本当だ」という意見が強い人を「温暖化肯定派」とします。あんまりはっきりカテゴライズするのはよくないとは思いますが、発言者の基本的な考えを把握しやすくするためにあえてこうします。


討論内容を確認(1)一般向け書籍

さて、研究者同士の討論。そんな本はあるのでしょうか。

ざっと調べてみたところ、この本が見つかりましたので読んでみました。

「温暖化論のホンネ」2009年の本です。

中部大学教授(以後、肩書は文献記載内容によります。)・武田邦彦さん(温暖化懐疑派)、国立環境研究地球環境研究センター・江守正多さん(温暖化肯定派)、環境ジャーナリスト・枝廣淳子さん(温暖化肯定派だが本当のところを知りたいとお考え)による鼎談です。

さて、この本で懐疑派の武田邦彦さんがなんと述べているかというと・・・

20世紀に気温がだいたい1℃、IPCCによると0.7℃ですが、それくらい上がっているということについては、IPCC以外でも多くの研究者がそのように言っていますから、議論の余地はないと思います。」(同書P.29)

地球が温暖化していることには異論がない、とのことです。そうなんだ・・・

丁々発止の議論を期待していたのですが(実際、この後はそういう議論もあるのですが)、この点についてはあっさり決着がついてしまっています。


IPCCとは

ちなみに、IPCCとはなんなのでしょうか。今後、非常によく引き合いに出される機関ですので、ここで言及しておきます。

気象庁によると、以下の通りです。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、2021年8月現在、195の国と地域が参加しています。IPCCの目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることです。世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しています。

出典:気象庁

IPCCが出す報告書については、次のような過程を経ています*2
‐約500人の科学者が分担して世界中の学術論文を調査し報告書を作成

  • その報告書は約2,000人の専門家や政府関係者がチェックし何度も書き直し
  • 最後に、各国の政府代表者が集まり、報告書の要約を一文一文承認し、報告書が完成

つまり、ここの報告書は多くの専門家の目を通してチェックされたものだが、政策提言までは行っていない、ということです。

ちなみに、2007年、IPCCはノーベル平和賞を受賞しています。

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討論内容を確認(2)学会誌

他にそういう討論の記録はないのでしょうか。

調べてみると、エネルギー・資源学会会誌の2009年1月号・3月号に、専門家によるe-mail討論の模様が収録されていることがわかったので、学界に問い合わせたところ、有料で該当箇所を提供していただきました(ありがとうございました)。

討論のタイトルは「地球温暖化:その科学的真実を問う」

参加されているのは、アラスカ大学名誉教授・赤祖父俊一、横浜国立大学教授・伊藤公紀、東京工業大学教授・丸山茂徳、海洋研究開発機構・草野完也、江守正多の各氏。

この討論では、冒頭、論者の立場を把握するための事前調査結果を公表しています。

f:id:yositeru:20211031074806j:plain
出典:エネルギー・資源学会誌2009年1月号

これによると、江守さんのみがIPCCの報告内容に基づく5つのポイント(二酸化炭素人為起源、21世紀にはさらなる温暖化・・・等)すべてに賛同、その他の方々は多くに反対されています。

つまり、5人中4人は「懐疑派」ということですね。

しかし、論者5名全員がほぼ賛同しているポイントが一点だけありますね。それがこの点。

気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。」という点。(正確には、伊藤氏のみ「部分的同意」、他の方は「同意」)

温暖化に関して意見が分かれている専門家同士による討論の場でも、「地球が温暖化している」という点については、ほとんど議論になっていないくらい受け入れられているのです。

これはちょっと意外でした。


2021年ではどうなのか

上記の2つは、ともに2009年の出版です。

現時点(2021年)ではまた変わっているのかもしれない。

それで、2021年に発行された本も読んでみました。(こちらは、お世話になっている方に貸していただきました。ありがとうございました。)

「脱炭素は嘘だらけ」キヤノングローバル戦略研究所・杉山大志さんによるこの本、タイトルからもわかるように「懐疑派」です。

でも、こう書かれていました。

「温度上昇のペースは(中略)平均すると過去100年で0.8℃程度である。」(同書P.28)

本書ではこれを「ゆっくりとしている」と説明していますが、数値の変化についてはIPCCの見解(100年で0.7℃)とほぼ同じでもあります。

またしても、この点については結果的に「温暖化は起こっている」(それが深刻なものととらえるかどうかは別にして)という点で意見が一致しています。


まとめ

研究者の討論をざっと確認した限りでは、「過去100年に0.7℃程度の地球温暖化が起こっている」という点については、異論はないようです。

となると、このメモのタイトル「地球温暖化は起こっているのか」に対する答えは「起こっている」としか言いようがない

では何が議論になっているのでしょう。何が「ウソ」なのでしょうか。

それを次回以降調べていこうと思います。

(続きはこちらです)


注釈

*1:江守正多「地球温暖化の予測は「正しい」か?」P.30

*2:江守正多「地球温暖化の予測は「正しい」か?―不確かな未来に科学が挑む」2008


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