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ブックシェルフスピーカー選びから試聴、購入までの道のり- 2023年の収穫(1)

聴力の衰えを感じ始め、大好きな音楽を良い音で聴くなら今のうちだ、と思ったのが3年前。

それからレコードプレーヤー、カートリッジ、アンプなどを買い替えてきました。最後の仕上げはスピーカーです。

ただ、スピーカーをウェブや雑誌の評判だけで選ぶのは避けたいと思っていました。

なぜなら、過去に家電量販店で1万円前後のスピーカーを買ったときですら、機種によってサウンドの個性にかなり差があり、自分の好みのものを選ぶために試聴する意味があったからです。今回はそれよりはグレードの高いものを入手しようとしているので、実際にお店で試聴させてもらうのは絶対条件になると考えました。

つまり、単に「このスピーカーがおすすめ」と書かれたレビューがあっても、それはその評者にとってのおすすめであり、自分に当てはまるかどうかはわからないということです。まあ、どんな買い物でもそういう面はあるでしょうが、スピーカーは特にその要素が強い製品なのです。

じゃあどうやってスピーカーを選び、試聴させてもらい、購入に至ったのか。私はオーディオマニアでもなんでもないのですが、我流でやってみて満足のいく買い物ができたので、その道のりをメモしていきます。

大まかな絞り込み - 大きさと価格帯

ひとくちにスピーカーといっても、それこそ星の数ほどあるので、実際にお店で試聴させてもらうにはそれを数個に絞り込む必要があります。

そのためにまず、今年の5月ごろからサイズと予算を検討しはじめました。

(あとは、アンプ不要の「アクティブスピーカー」か、アンプが必要な「パッシブスピーカー」かの選択も必要ですが、アンプは購入済なのでこれは必然的にパッシブになりました。)

大きさ:ブックシェルフ一択

サイズについては、私の場合は机の上に置ける「ブックシェルフ型」一択でした。私は多くの音楽をPCで聴いていますし、家に床にスピーカーを置く場所もないので。本当は床に置ける大きなスピーカーのほうが迫力のある音が出るのでしょうが、こればっかりはしょうがありません。

予算:10万円前後

予算は今回、10万円前後としました。私のスピーカー歴(と言えるのか)は以下のようなものなので、次のステップはこれくらいになるかなと。そもそも先立つものもないし。

  • 学生時代~20代:CDラジカセ(できるだけソフトにお金をまわしたかった)
  • 30代:1万円程度のUSB接続アクティブスピーカー(それでもPC備え付けのスピーカーとは雲泥の差で、喜んで毎日使ってた)
  • 40代:5万円程度のUSB接続アクティブスピーカー(その後DACも追加) これを使用して現在13年目


試聴準備

候補を選ぶ-スピーカー

「10万円前後のブックシェルフスピーカー」という大きなくくりが決まったので、ここからはウェブの批評や口コミ、オーディオ雑誌(図書館で借りた)などで試聴候補機種を選んでいきます。

YouTubeの試聴動画も観ました。知識面ではある程度参考になりましたが、音の面ではやはりその番組の音そのものが今のスピーカーから再生されているので機種別の具体的な違いはほとんどわかりませんでした(もっといいスピーカーなら違いが判るのかもしれませんが。)。なので試聴動画をいくつか観た結果「これはやっぱり店頭で実物を聴いてみる以外ないな」という思いがより強くなったくらいです。

ちなみに、今回初めて知ったのですが、オーディオスピーカーの場合、かなりの人気機種でも大手ネット通販で取り扱っていないことがあるのですね。

具体的には、いくつかのサイトやオーディオ雑誌のレビューで評判がよく、実際にオーディオ店での販売数ランキングで上位を続けているSonus faber LUMINA Iは、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピング、ヨドバシのいずれでも売っていませんでしたし(2023年7月現在)、価格コムで検索しても出てきません。オーディオショップの通販では買えるのですが。

なのでスピーカーを物色するには、ネット通販のレビューや口コミだけでなく、オーディオファン向けのサイトやオーディオ雑誌などもチェックしたほうがよさそうです。

で、いくつかのサイトと雑誌を見てみた結果、これを比較試聴してみたいな、と思えるスピーカーを3つ選びました。どんな機種なのかは後述します。

候補を選ぶ - 曲

さて、試聴するなら曲も選ばないといけません。やはり自分が何度もよく聴いて細部まで知り尽くしていて、なおかつオーディオ性能をチェックできるような曲である必要があります。

私は基本的に音楽をデジタルで聴きますが、数年前からアナログレコードの魅力にも(今更ながらに)気づいたので、少なくともデジタル・アナログで1曲ずつ選びたい。

アナログは、A面かB面の1曲目にしたい。なぜなら再生がすぐにでき、試聴時間を少しでも短縮できるから。これはすぐに選べました。そのサウンドを一聴してアナログレコードの魅力を再発見するきっかけとなった、ビートルズの"Revolver"のUKオリジナル盤・A面マト2の1曲目"Taxman"。バンドサウンド面でも、それ以外のサウンド(冒頭の声や咳など)も前半にしっかり詰まっているので、試聴に最適です。ギターソロまでを試聴範囲にしよう。

となると、もう一つのデジタル曲は、録音音質が非常に良く、かつ私がロックの次によく聴いているピアノ独奏の音と大好きな弦楽器の音の両方がチェックできるものにしたい。この観点で選んだのは、坂本龍一"THREE"収録の”Parolibre"です。ピアノ独奏から始まり、途中からバイオリンとチェロが入り三重奏になるので、三重奏に入ってしばらくまでが試聴範囲だな。

いやあ、試聴曲を選ぶのが楽しくて、数時間かけてしまいました。選曲しながら、これがどんなふうに聴こえるのか想像するのも実に楽しい。

お店を選ぶ

次はお店探しです。

自分が聴きたいと思うスピーカーを取り扱っていて、レコードとCDの両方の試聴が可能。実はそういう店はあまり数が多くなく、関西圏では自分があたりをつけられたのは数店だけでした(もちろん、試聴させてもらったスピーカーのどれかは必ず購入するという約束はした上で、です)。

また、数百万円するようなスピーカーならいざ知らず、このクラスのスピーカーだと取り扱いをしていても試聴はさせてもらえないお店もありました。

そんな中「次のお客さんがいらっしゃる場合は10分間まで」という条件つきで私の希望に応じてくれるお店が7月に入ってようやく見つかりました。大阪日本橋の老舗オーディオ店です。

なお、そのお店には、自分のよく聴く音楽ジャンルと候補スピーカーを伝えた上で追加で比較できるスピーカーを提案してもらえるか伺ったところ、快く追加の1機種を提案してくれたりもしました。ますますこのお店にしてよかった、と思えてきます。

試聴日を選ぶ

試聴をいつにするか。

「平日の午前中」で「7月下旬以降、お盆より前」の日時を設定しました。平日で、午前中で、暑すぎて外出したくない季節で、ボーナス商戦時期から外れており、お盆休みでもない。ならば次のお客さんが来る確率も下がり、必要な試聴時間が確保しやすいかな、と思ったので。

実際に試聴してみた結果

待ちに待った試聴当日。試聴したスピーカーは次のとおり。

選んだ4機種

  • Sonus faber LUMINA I(ソナス・ファベール ルミナ1)
  • DALI MENUET(ダリ メヌエット)
  • B&W 606S2AE (バウワーズ&ウィルキンス 606S2 アニバーサリーエディション)
  • DYNAUDIO Emit10 (ディナウディオ エミット10)※これがお店が提案してくれた機種です。

モニタースピーカー系?

まずはビートルズ"Taxman"のレコードで4機種を比較試聴してみました。

一聴してわかったのは、この4機種は2つのグループに分かれるな、ということ。B&WとDynaudioはモニタースピーカー的。Sonus faberとDaliはそうじゃないタイプ。

モニタースピーカー的なサウンドは、ほんとに原音をそのまま、という感じです。なのでこれはいわゆる「正確な音」なのかもしれません。が、私にとっては「味付けが足りない」と言う印象です。

変なたとえかもしれませんが、蕎麦につゆをつけないで食べているような感じです(それは言い過ぎか…お寿司にわさびをつけないで食べている、位かな。)。その方がたしかに蕎麦本来の風味を感じ取れるのかもしれませんが、私はそれでは全く物足りないし、そもそも美味しくない。

もちろん、音楽を制作している人や、そういう「正確な」音が好きな人にはいい製品だと思います。B&Wはあのアビーロードスタジオ御用達のメーカーらしいし(やはりモニタースピーカーとして優秀なのでしょう)、DYNAUDIOはポール・マッカートニーのベースの一音一音が他とははっきり違うレベルで聴こえて(例:"If you drive a car"の部分のベースのフレーズがまるで音符を読むようにはっきり分離して聴こえた)「これすごいな、いいな」とも思ったんですが、私は大好きなあの曲やこの曲をこれらのスピーカーでずっと聴いていたいとは感じませんでした。

坂本龍一"Parolibre"のCDではこの「モニター系かどうか」の差がもっとはっきり出ました。味わいが全然違う。

Sonus faber? Dali?

じゃあSonus faberかDali、どちらにするのか?これは悩みました。

全体的にはDali Menuetが音がきれいでどの楽器もバランスよく気持ちよく聴けるように感じたのでそちらを選びかけたんですが、もっともよく聴く楽器であるピアノの低音、こちらがSonus Faber LUMINA Iのほうが艶やかだったんですよね。

なので、Limina Iを選びました。

最後に店員さんが「次のお客さんが誰も来なかったので、じっくり試聴していただけてよかったです」と、こちらが考えていたのとまったく同じことをおっしゃったので、私も店員さんに「まさにそうするために、人が出歩きたくないような暑い時期に仕事を休んで聴かせてもらいました。おかげさまでほんとにいい買い物ができたと思います。ありがとうございました。」とお伝えしました。

入手してみて

翌日、宅配で届きました。早速セッティング。

Sonus faber LUMINA I

一般的にスピーカーはエイジング(最初に数十時間音を鳴らすこと)を経てやっと本来の性能が発揮できると言われているのですが、私にとっては、最初から素晴らしいサウンドを十分に響かせてくれました。

全体的に音に艶が出ており、特に低音部において今まで聞こえなかった音が聞こえています(つまり、試聴で感じたことと同じ)。かといって、不自然に低音を強調したような音とはまったく異なる素直なサウンド。だから音を大きくしても疲れない。

そして何よりも驚いたのがオーケストラ曲。ダイナミックレンジ(小さな音と大きな音の差)が段違いに広くなっているんですよね。小さな音はより小さく繊細に、大きな音はより大きくダイナミックに。これはすごい。それまでは小さな控室の中で演奏していた楽団が大ホールで生き生きと演奏しているような感じ。スピーカーを良くすると音の明瞭度が上がるのは当然として、レンジも広くなることは知らなかった・・・

大好きだった音楽がさらに魅力的になって蘇ったかのようなこの感覚。まさに、毎日を豊かにしてくれている逸品です。もっと早く買えばよかった。間違いなく今年買ってよかったものの第一位です。

関連メモ


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