庭を歩いてメモをとる

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2020年の収穫(1) ラジオ等音声メディア-10分で決算、平野啓一郎、ディスカバー・ビートルズ他

2020年、コロナ禍の影響で一番変わったのは、音楽以外の耳で聴くコンテンツ、具体的にはVoicy、ポッドキャスト、ラジオを楽しむ時間でした。こんな流れで。

仕事の半分以上が在宅勤務になる
 ↓
通勤による毎日約8,000歩の運動と約40分の通勤時間がその分減る
 ↓
その欠落をジョギングと家事等で埋める
 ↓
その間も何か楽しみたいが、通勤時のように本や雑誌を読んだりできないので、耳で「本や雑誌みたいな情報」に触れたくなってくる

そんなわけで、今年新しく聴き始めた音声コンテンツをご紹介します。

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Photo by Matt Botsford on Unsplash

Voicyとポッドキャスト

個人が音声コンテンツをアップできるプラットフォームという点でいえば、Voicyは音声版YouTubeみたいな存在ですね(ただし審査制である点は異なります。)。YouTube同様、音声が簡単にはダウンロードできず(以前はできたみたいだけど)、通信料がかかるのでもっぱら自宅で家事をしながら聴いています。

10分で決算が分かるラジオ

Voicyで一番楽しませてもらっているのがこれです。ほぼ毎日更新、1回15分前後、無料。

タイトルだけ見るとお勉強系の番組に見えますが、実態は上場企業の業績変化とその背景を解説してくれる内容です。

このご時世、企業の業績はどこもコロナの影響を大きく受けているわけですが、その影響度は企業によってかなり違います。それを決算内容から読み解いてくれる。実際、この番組を聴き始めてから、登場した企業それぞれの見え方がかなり変わりました。

例えばヤクルト。コロナの影響はあるものの業績はかなり好調(売上高は減少しつつも、営業利益は増加、純利益は29%もの大きな増加)。しかもヤクルトレディを正社員化した。もちろんそれはメリットがあってのことだけど、それはなぜなのか、とか。

語り手は「妄想する決算」さんで、どんなバックグラウンドの方か存じ上げないのですが、決算書をもとにした解説なのでトンデモな要素はありませんし、今後の業績予想も予想ではなく「妄想」と言うところも控えめだし、素朴でありながら要点をまとめたトークにも好感が持てます。

私は20年以上法人営業の仕事をしていたので、企業動向を知るのが習慣になり果ては純粋にそれを知ること自体が好きになってしまっているのですが、その興味関心を日々満たしてくれるこの番組、重宝しています。

Voice of ちきりん

社会派ブロガーちきりんさんによる、ブログ執筆者などコンテンツクリエイターへ向けたアドバイスやご自身の活動の舞台裏。私がVoicyを聴くきっかけになった番組です。ほぼ毎日更新、1回10分、一部有料。

語られる内容そのもの(編集者とのつきあい方とか)も興味深いのですが、ちきりんさんの思考プロセス、例えばご自分の本が図書館、ブックオフ、メルカリにあるのを見て感じることがそれぞれまったく違うそうなんですがそれはなぜなのかとか、そういうのが特におもしろい。

あとは、この方はとにかく生産性と価値を上げることへの思考量がすごい。そしてその思考を行動に移して結果も出していらっしゃるように見えます。その実績を見るにつけ、もちろんご本人の「気づく力」「言語化」の才能のすごさもありますが、やはり「自分の頭で考える」って人生の基本にある大切なことなんだなあと感じ入ってしまう次第です。



三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast

音楽評論家の田中宗一郎さんがゲストを呼んで音楽、映画、まんが、ゲームなどについて雑談。週1回、1時間×2本。Spotifyのポッドキャスト。モデルの三原勇希さんの時々のコメントもなかなか新鮮。

その分野に詳しい人たちが居酒屋で語り合っていて、時おり、若い人がそれを聴いてコメントする感じ。なのでなじみのない話題だとあまり楽しめないので、自分が多少なりとも親しみを感じるテーマに絞って聴いています。

最近だと、筒美京平さんが亡くなられた直後くらいにやっていた歌謡曲の回で、ゲストのOKAMOTO’Sオカモトコウキさんが語った「(昔の日本の)歌謡曲を聴くとお金をかけてる感じがする、最近のK-POPもそう、自分がすっごいお金かけてるなって感じるのはダフト・パンクの"Random Access Memories"」とか、音楽ジャーナリストの宇野惟正さんの「小沢健二のライブはオケが服部孝之だからチケット高いのは当たり前*1」「キャンディーズの『エプロン姉さん』はスティービー・ワンダーの"Sir Duke"そっくり*2」とか、そういう会話を聴いて「なるほどね」「そういう考え方もあるか~」と思いながらジョギングしています。

タナソウさんによる番組企画時の想定リスナー像は「クラスで一番聡明な14歳女子と、クラスで一番世の中のことをケッと思ってる16歳男子」だそうです。私はこの番組を聴いてそんな感じは全然しないし、むしろ回によっては「50代の人間が年若い人たちに、昔のこの音楽ってすごいんだよ~一度聴いてみたら!と熱く薦めたいけど、現実世界でそれやると逆効果になることがあるので気軽にはできない、でもリスナーの代わりに俺たちがやるのでその鬱屈を晴らして」な展開もよくあるくらい。沢田研二さんの回とかではでそれを感じたなあ。でも、その心意気やよし(って偉そうですが)で、タナソウさんのまっすぐな思いはいいですね。

ラジオ

去年は村上春樹さんの「村上RADIO」と、たまに山下達郎さんの「サンデーソングブック」と桑田佳祐さんの「やさしい夜遊び」を聴くくらいでしたが(今も)、ラジオを聴く時間も去年と比べ大幅に増えました。

日経トレンディ2020年11月号のラジオ特集で伊集院光さんも語っていたのですが、ラジオを聴ける端末(スマートフォン)がこれほど普及した時代はかつてないし、しかもradikoタイムフリーで聞き逃し番組を聴くこと、エリアフリー(有料)録音も簡単にできるわけです。この環境もラジオ時間増を大いに後押ししてくれました。

平野啓一郎のそろそろいい時間

月に1回1時間、作家の平野啓一郎さんとラジオパーソナリティ・トムセン陽子さんの番組。FM東京系列。

私は平野さんの小説のファンですが、音楽の趣味はかなり違います。ジャズ、ヒップホップ、ハードロックという私にとっての「興味あるし時々聴くけどなかなかそこから先に進まない3大ジャンル」に特にお詳しく、重なるのはグレン・グールドとスティービー・ワンダーくらい。だからこそ、毎回ほぼ私の知らなかった質の高い音楽を紹介してくださるこの番組は貴重です。

たとえば、岸部四郎さんが亡くなったことにちなんで平野さんがかけたJungle Brothers / Funky Magicって、ゴダイゴ/Monkey Magicのヒップホップカバーなんですけど、全然知らなかったし、こういうのもかっこいいなあと。

時事問題に対する考察や平野さんご自身の動静も興味深く、毎月楽しみにしています。ポッドキャストでも配信されていますが、肝心の音楽がカットされているので(ラジオが元のどのポッドキャストもそうですが)こちらはラジオ一択です。

なお今のところ、平野啓一郎さんの小説で一番感じ入ったのはこの「マチネの終わりに」と「ある男」です。

ディスカバー・ビートルズ

NHK-FMで毎週日曜1時間。2020年限定番組(のはず)。

11月くらいから聴き始めたのですが、もったいないことしたなと思っています。杉真理さんもトライセラトップス和田唱さんも、(1)正真正銘のビートルズファン(ビートルズ好きです~というレベルではなく、もっともっと「好き」が強い)で、(2)正確な知識をお持ちで、(3)(私にとって)新しい聴きどころや視点を提示してくださる、という3点がすべてそろっている番組なので。

(3)の例としては、和田唱さんがおっしゃっていた「Honey PieやWhen I'm Sixty-four, You Gave Me the Answerなどのポール作曲作品が『ボードヴィル風』と説明されることがよくあるがそれは適切ではないのでは」という話、実にいい点を突いてるなと思いました。たしかにこれらの曲はそういわれることが多い。でも、番組では実際にボードヴィルショウの音楽を流してくれましたが、たしかにポールのそういう曲とはかなり違うんですよね。じゃあなんて言えばいいのか、はまた難しい話ですが。ちなみに和田さんは「戦前ポピュラーミュージックスタイル」という名称を提案されてました。

かつて、ビートルズやメンバーを扱った番組は、上記の3点のうち最初の2点すら満たせていないものがよくあり、そのせいで私もこの番組をしばらく聞いていなかったのですが、杉さんと和田さんの名前を知った時点でその予断をなくしておくべきでした。ほんとうにビートルズについての新しい発見がある、名前負けしていない番組です。



そんな感じで、コロナの影響で音声コンテンツを楽しむ時間が増えた、という話でした。じゃあ音楽は?それはまた別のメモに書こうと思います。


関連メモ


注釈

*1:でも今度のライブ、オケなしで小沢さん一人だけどチケット1万円以上しますよね。あ、これは密回避による席数減のためか・・・

*2:これ当時有名だったんでしょうか。私は当時幼稚園児だったのでまったく知らずでした。


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