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阪神間モダニズム建築の最高傑作・ヨドコウ迎賓館と夜間見学

イギリス研究会のメンバーで、夙川から御前浜の大好きな散歩道を歩き酒蔵をまわった後は、タクシーで阪急蘆屋川駅の北にある、ヨドコウ迎賓館に。

今日は、一年の間でも一定期間しか行われない夜間見学ができ、しかも所有者ヨドコウ(淀川製鋼所)の社員さんによるガイドツアーのある特別な日なのです。


ヨドコウ迎賓館とは

大阪と神戸のあいだ、つまり阪神間には、戦前に建てられた個性的な洋風建築が点在しています。

これらは「阪神間モダニズム建築」と言われていますが、その中でも最高傑作かつ別格なのがこのヨドコウ迎賓館なのです。

(以下、昼間の写真は2019年5月・2020年2月に訪れた時のものです。)
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この建物の歴史は次の通りです。

ヨドコウ迎賓館は、山邑家別邸として1918年(大正7年)にアメリカが生んだ近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)によって設計されました。

ライトがアメリカに帰国後は、彼の弟子である遠藤 新と南 信が引き継ぎ、1924年(大正13年)に竣工。1947年(昭和22年)に株式会社淀川製鋼所が社長邸として建物を購入し、1989年(平成元年)より「ヨドコウ迎賓館」として一般公開しています。

1974年(昭和49年)には、大正年間の建物として、また鉄筋コンクリート造の建物として初めて、国の重要文化財に指定されました。

日本では旧帝国ホテルの設計者として知られているライトですが、建築当初の姿をほぼ完全に残すライトの住宅建築は、日本にはこのヨドコウ迎賓館のみです。

引用元:当館について – ヨドコウ迎賓館


こうした「国内に唯一残ったライト建築」「鉄筋コンクリート造り初の重要文化財」そして最近は世界遺産登録もされそうだといういろんな肩書も圧巻ですが、建物そのもののデザイン性が非常に個性的かつ美しく荘厳である点も、他の追随を許さないものです。

私も一度訪れてから心奪われ、1年の間に3回訪れました。

アクセスは、阪急梅田駅から20分、阪急芦屋川駅下車、北側(山側)の坂道を徒歩10分程度です。

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昼のヨドコウ迎賓館

外観と主な部屋

外観

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玄関。中に入ったとき広さを感じるため、入り口をわざわざ小さいものにしているのだそうです。

使われている石は大谷(おおや)石。栃木県宇都宮市大谷町付近一帯から採掘される、流紋岩質角礫凝灰岩の総称*1。ライトが気に入り、他の帝国ホテル等の作品にも使用しています。

主な部屋

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応接室。独特の直線の組み合わせがクール。


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和室。ここはライトの設計ではなく、施主の要望を受けて弟子の遠藤新・南信によるものです。でも、さすがにライトらしさは十分あり、他の部屋との違和感はありません。


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食堂。欧米では、食堂は「祈りという儀式の場」でもあるという考えがあるそうです。そのせいか教会のようなたたずまい。


デザイン

ライト流のデザインも、この邸宅のあちらこちらで堪能することができます。


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棚。この幾何学感。


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書斎のデスクと椅子。足の位置がユニーク。


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階段の天井。


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食堂の天井。


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トイレの窓ですら普通ではすまさない。


工夫

快適な生活のための工夫も凝らされています。


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換気のための小窓。しかし、ライトの予想以上に雨の多い日本では、これが老朽化の一因ともなりました。

しかしこんな場所にある窓、開け閉めが大変では?実際は、お手伝いさんが開け閉めしていたそうです。いろんな意味で富豪しか住めない家ですね。


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夫人の部屋から見た書斎。施主の妻が畳に座っている視点と、床が下がった書斎で椅子に座った施主の視線が合うように設計されているそうです。


バルコニー

この邸宅は、外観と内観の他、眺めも抜群。

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バルコニーへの出口。

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バルコニーを出て振り向くとこんな感じです。

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(クリックすると拡大)眺望。遮るものは何もない状態で、芦屋の街を一望できます。


ヨドコウ迎賓館夜間見学

さて、この日(2019年11月30日)は、期間限定の夜間見学が楽しめ、かつ、ヨドコウ社員さんのガイドツアーつきという特別な日。西宮の酒蔵エリアからタクシーで移動、2,000円ちょっとでした。

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外観。いつもはすいていますが、この日はやはり人が多いです。


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応接室から見える夜景。同じ部屋でも昼間とはやはり雰囲気が違います。


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4Fバルコニーからの夜景。さらに・・・


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通路を通って3Fバルコニーへ行くと・・・


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3Fからの芦屋の夜景です。


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ちなみに、混雑ぶりはこんな感じです。

ヨドコウ社員さんの説明も非常に興味深いものでした。この邸宅が一時期社長宅として使われていたというのはよくわかる話ですが、社員寮として使われていた時期があったというお話にはどよめきがあがっていました。

そして、ヨドコウさんが少なくない資金を投じてこの文化財を維持してくださっている点、企業メセナの一環として高く評価したいと思います。


注意点

このように魅力がたくさんのヨドコウ迎賓館ですが、注意点もあります。

まず、斜面に建てられているという構造上、階段や段差だらけです。足やひざがつらい方にはおすすめしません。


もうひとつは、周辺に飲食店が少ないというかほぼない点です。

芦屋は質の高い飲食店や洋菓子店が多いエリアですが、この迎賓館を含む阪急芦屋川駅周辺は、とにかくお店が少ないのです。あるのは豪邸ばかり。

駅の反対側(南側・海側)を10分ほど歩き、JR芦屋駅に近づくとお店はたくさんあります。迎賓館を出るときには、それくらいを歩けるエネルギーを残しておいたほうがいいと思います。


ちなみに、夜間見学の当日、イギリス研究会のメンバーとどこに行ったかというと、こちらのお蕎麦屋さんです。

迎賓館からは20分近く歩く必要があります。こんなに歩かなくてもお店はあったのですが、よさそうだし、予約なしでも席が空いているところがなかなかなかったのでこちらにしたのですが、結果的には満足でした。


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乾杯

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牡蠣のお蕎麦をいただきました。


とてもよく歩き、しゃべった一日でした。


関連メモ

当日、迎賓館に行く前に訪れた場所。


阪神間を、村上春樹さんのエッセイにあわせて歩いたときのこと。


引用元・注釈等


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