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放送大学「ビートルズde英文法」14, 15(最終回)ー Taxmanのものの言い方はどこがむかつくか

放送大学の「ビートルズde英文法」第14回~第15回(最終回)を聴いて学んだことのメモです。

過去の講義のメモはこちらです。

Session 14 - Taxmanのものの言い方はどこがむかつくか

Taxmanの言い方に込められた嫌味

この講義で、Taxmanの歌詞には内容以上の皮肉が込められていることを学べました。

どういうことかというと、まず冒頭の歌詞、"Let me tell you how it will be".

Let meはともかく、その後に"tell you"がつくと高圧的に聞こえるのだそうです。ここでのtellは一方的な通告を表します。
「いいかね」というような忠告や苦言のイメージです。

なのでこの歌詞は「どのようになるか教えてやろう」というような意味になります。

ところで、ポール・マッカートニー"Say Say Say"のPVでは、ニセ薬売り行商人に扮したポールが"Let me tell you all about Mac & Jack wonder portion"(マック&ジャックの不思議な薬の紹介だよ)と口上を述べていますよね。あれは高圧的ではないのかな。まあただ、一方的な通告という点ではそのとおりですね。

さてこの歌詞、まだここまでだと、この人物が何を言っているのかわからないですよね。

続く歌詞は"one for you, nineteen for me".

これ、直訳すると「あなたが1なら私は19」つまり95%は私のもの、ということはよく知られていますが、英語ネイティブのこういう言い回しを把握しているとより皮肉さが伝わります。

実は、"one for you, one for me"というフレーズがあるのですね。「あなたにひとつ、私もひとつ」。ものを配るときの言い方です。

「あなたにひとつ、私は19」・・・さっきから偉そうなもの言いで、しかも自分は19って、おまえは何者だ!

そこで次の歌詞"'cause I'm the taxman."

ここではじめて、これまでのセリフの意味と、この人物が何者なのかがわかるのですね。

こんな皮肉センスがつまった冒頭だとは、恥ずかしながら今まで理解できていませんでした。

これはジョージやるなあって感じです。ジョージのソングライティングセンスがぐっとアップするこの時期、これは音楽面だけでなく歌詞の面でもそうだったんですね。

こうして、ビートルズの楽しみ方も広がりつつ英語フレーズも学べる、他にはない「正規の大学の講義」。あと1回とは残念だなあ・・・

本当に"one for you, nineteen for me"なのか

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ところで、前から気になっていたのが本当に"one for you, nineteen for me"なのか、ということ。

調べてみると、イギリスでは50~60年代、所得税の最高税率は90%だったという記事がありました。 → History of direct and indirect taxation in the United Kingdom("Taxation in Post-War Britain"の章)

95%まではいかないものの、90%というのも相当なエグさですね。

ちなみに現在の所得税率の最高はイギリス24.9%*1、日本は45%*2です。

なお、日本の所得税率の歴史を調べてみたところ、昭和62年(1987年)は最高60%だったことまではわかりました*3


Session 15 - Lucy in the Sky with Diamonds

ついに最終回。寂しいなあ。

キーボーディスト難波弘之さんと英文学者佐藤良明さんのルーツは同じ!

第3回に引き続き、難波弘之さんがゲストとして登場。

Lucyが収録されているアルバムSgt. Pepper'sを、当時中学生だった難波さんと高校生だった佐藤さんが別々のところで聴き、受けた衝撃などを語ります。

そこで明かされたのが、それぞれ違う道を歩んた二人が今の仕事につくきっかけになったのがこのSgt. Pepper'sのLucyであり、そのさらにルーツである「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」だということ。

これは驚きであるともに(お二人も驚いていました)、偉大な作品はさらに偉大な作品の源になり、そして時代を超えて人々に影響を与え続けるという好例ですね。

英語とは直接関係ないですが、こういうエピソードも英語学習のスパイスになりますし、何より非常に興味深いです。

サイケな言葉の解説

この曲は、tangerine treesやmarmalade skiesなどサイケデリック感ただよう言葉がどんどん出てきますが、これについての解説もさすが英文学教授陣、と感じる内容でした。

"rocking horse people"は「rocking-horse(馬の形をした揺り椅子)の頭をした人々」くらいの認識だったのですが、 これと"horsefly"(あぶの一種)をくっつけた"rocking horsefly"という言葉が「鏡の国のアリス」に出てくるのですね。

また、"newspaper taxis”についても「その後"climb in the back"という描写があるから、少なくとも後部座席はある」という指摘は、ここまできちんと歌詞を把握していなかったのでまた自分の中のビートルズ世界が広がりました。

歌の拍と歌詞の強弱の関係

この講義では、第1回でも強調されていた「歌の拍と歌詞の強弱の関係」についての説明が再び行われます。これが「ビートルズde英文法」で講師陣が一番伝えたかったことのひとつなのでしょう。

今回の内容の骨子は「英語にははっきり発音する単語(伝えたい名詞・動詞等)と、通常弱く発音する単語(前置詞など)がある。この強弱がそのまま歌の拍に関係する」ということ。

たとえばLet it Be. 冒頭の"When I find myself in time of trouble":最初の2語は弱く発音していますが、同じように歌も弱い拍で始まっています。

このLucyではどうでしょうか。

"Picture your self in a boat on a river with..."

これは弱弱・弱弱・・・歩格ではダクティル(dactyl)ですね。

(歩格についてはこちらのメモをご参照ください)

そして、テキストにありますが、ポールのベースも強い拍に連動しています。

ビートルズの歌を何百回も聴くことで身体でしみ込んだこの感覚を、こうしてきちんとひも解いて理解し、英語を実際に使う時に応用していく。これが私がこの講義で学んだ、英語学習面での最大のポイントだったと思います。


締めくくりのメッセージ

講義の締めくくりには、講師それぞれからのメッセージがありました。要約したものを列記します。

佐藤先生:長い間「学校で教える英文法はもっと簡略化できる」「文法は英語の思いを盛り付ける容器」だと思っていた。それで「ミニマル英文法」という講義を考えたが、その時どこから英文のサンプルを持ってこようかと考えたとき、ビートルズがあるじゃないかと気づいた。それから手探りで教材をつくっていった。

中野先生:ビートルズもデビューする前に何年もの下積みがあった。ハンブルク時代、仲間を見つけて切磋琢磨していた。そこで培った基礎体力がその後に役立っている。英語学習も同じ。繰り返しが大事。つらいときは仲間と乗り切ってほしい。

大橋先生:この講義は歌って練習するというのが画期的。身体でリズム・強弱を理解できる。これは英語という言語の根本。 そして歌詞を覚えられる。そうすると単語や言い回しを覚えることができる。"I should have known better"なんてそのまま。そして楽しい。これからも楽しみながらビートルズと英語を勉強していっていただければと思う。

このメッセージを大切にして、英語の勉強を続けていき、英語に触れる機会を継続できればと思っています。

佐藤良明先生は、大学での英語学習における大家でいらっしゃいますが、お歳からしてもこの「ビートルズde英文法」は、先生の最後の授業のひとつではないかと思います。最後のあいさつではお声が震えておられたような・・・

そんな佐藤先生が教育キャリアの締めくくりのひとつに選んでくださったのがこの「ビートルズde英文法」だったこと、ビートルズが大好きな英語学習者として非常に幸運でした。中野先生のギターによる講義のサポートと大橋先生の快活なガイドもとても楽しかった。3か月半、本当にありがとうございました。


講義テキスト


これまで講義のメモ

この講義の聴き方、概要、先生方についてと、第1回で学んだことについて。

第2~5回。他の英語の講義ではあまり聞かれない「歩格」と、英語とは別に"Because"にいかに音楽的な独創性があるか、等。

第6~10回。「恋のアドバイス」という邦題へのツッコミ、「僕が64歳になったら」という意味なら未来の話。なぜwillを使わないのか?等

第11~13回。This Boyに仮定法と直接法が混在している理由等


関連メモ



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