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放送大学「ビートルズde英文法」第11~13回 This Boyに仮定法と直接法が混在している理由

放送大学の「ビートルズde英文法」第11回~第13回を聴いて学んだことのメモです。

過去の講義のメモはこちらです。

Session 11 If I FellとThis Boyで腹の底まで実感する仮定法

冒頭、大橋先生が、映画「ハード・デイズ・ナイト」でこの曲を歌うときの4人の表情が「すっごく好きなんです」と実感込めまくりで話されているところ、ここもビートルズ愛があふれていていいですね。

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“If I love you too, oh please,”の訳し方

If I Fellのここ、訳しにくい個所としてあげられています。単純に「もし僕が君を愛しているなら、お願い」と訳すと意味が通らないからです。

ではどう訳すか。本当は”I love you too”と言いたいところだが、この歌はあくまでif(仮定)の中で話が進むので、あえてifを使っている。それがわかっているなら、あえて「もし」は日本語に訳さなくていいのでは。・・・それが佐藤先生の解釈でした。

This Boyの歌詞ではなぜ仮定法と直接法が混在しているのか

ここは穴埋め問題文になっているのですが、この歌詞がこんな「仮定法と直接法の混在」になっていること、この歌を聴き続けて30年目にしてやっと気づきました・・・穴はすぐ埋められるのですが(耳で覚えている)、正確な意味がやっとわかった、というべきか。

“Oh, and this boy ( ) be happy just to love you.”

ここはwouldですね。ifはなくてもjust以降に仮定の気持ちが入っているから仮定法のwouldになる、と。ここは以前から理解できていました。

で、次の、

“But oh my- that boy ( ) be happy till he’s seen you cry”

ここはwon't、つまり現在形will not。なぜここは仮定法ではなく直接法なのか?

それは、that boy(恋敵)がhappyにならないのは仮定ではなく間違いないことだから(と、this boyが信じていることが表現されている)。

その後の”till he’s seen you cry”が現在形ではなく現在完了になっているのも、「ちゃんと泣くのを見届けるまでは」というしつこさを強調するため、とのこと。

そして”If this boy gets you back again.” ここは「もう一度君を取り戻す」ことに「もし」なんていう気弱な要素がないから仮定法ではない、つまりgotではなくgetsになっている。大橋先生も「こう言ってもらわないと女子の気持ちも動きませんね!」とはっきりおっしゃっています。それに対し佐藤先生「わかりました。気をつけます。」

this boyの嫉妬心や気持ちの強さが仮定法と直接法によって表現されているんですね。ここ、文法の理解がどれだけ重要か、まさにビートルズの歌詞で非常に強く実感できた箇所でした。


Session 12 She Loves Youは完璧なコミュニケーション英語

先生3人でワシントンDC公演の熱気について盛り上がったあと、テキストにもあるようにこの歌が「完璧なコミュニケーション英語でできたポップソングの古典的名作」との説明。どういうことなのでしょうか。

歌に「感情のこもった語り」と同じリズムがある

“She says she loves you” 「彼女が愛しているのはおまえだって」: Youが話者が一番伝えたいことですし、歌でも一番強く歌われています。

"you’re not the hurting kind”や“you should be glad”もそうですね。

ベタな情報とメタな言及

この講座で新しく得た視点の一つに、情報伝達では「ベタな情報*1とメタな言及」がある、ということと、それが日本語と英語で異なる、という点があります。

  • ベタな情報:情報の本体 例: She loves you (彼女はおまえを愛している)
  • メタな言及:情報についての情報 例:She says (って、彼女が言ってるぞ)

日本語では、ベタからはじまり、メタでしめるのが一般的。 例:「彼女はおまえを愛しているって言ってるぞ」(太字がベタ、以下同じ)

英語ではメタは自由に差し挟める。 例:She says she loves you / you know you should be glad

また、講座では、会話の中や終わりに挟む”you know”は「よね」「だろ」というような感覚で使われているが、あまり使いすぎるとなれなれしくなるので注意・・・との解説がありました。

ただこれ、ポール・マッカートニーってインタビューとかで言いまくってますよね・・・あれほどの大スターだから「インタビュアーも緊張しているだろうから」って配慮なのかもしれませんが(ポール自身、親から人を緊張させるなと言われていた、と語っているのを聞いたことがあります。)。


Session 13 Yesterdayは文の途中でも韻を踏んでいる

テキストにはこの歌についての「いびつな歌?」というエッセイが収録されています。

ポピュラー音楽市場もっとも成功した歌のひとつと言われるこの歌、音楽的には実は収まりがよくない。ひとつのヴァースがふつうは8小節なのに7小節であるとか、そういう「いびつ」な点がある、でも歌詞は韻律の規則に従っていて収まりがよい、そうです。

中間韻

歌詞はそれぞれの行の最後で韻を踏むのが一般的で、これを脚韻(end rhyme)といいますが、このYesterdayでは行の真ん中でも韻を踏んでおり、これを中間韻(internal rhyme)という、とのこと。

(以下、太字が中間韻)
Why she had to go
I don’t know she wouldn’t say
I said something wrong
now I long for yesterday

日本語の「は」の代わりの英語の倒置

日本語では、「は」を使って、一部の語句をハイライトできます。

例:赤いの捨ててしまったが、緑のここにある。

英語にはこの「は」に相当する言葉がないので、倒置を使って文の一部をハイライトさせる、とのこと。

この説明で、倒置の必然性について腑に落ちました。

例:The red ones I’ve thrown away, but the green ones I have here.

Yesterdayでは”Why she had to go I don’t know she wouldn’t say”のwhy節が倒置で前に出てきて、ハイライトされていますね。



こんなふうに毎回新しい学びをビートルズの歌を通じて学べる貴重というか唯一無二の講座、あと2回となりました。最後まで楽しませてもらいます。

次のメモ:


講義テキスト


これまで講義のメモ

この講義の聴き方、概要、先生方についてと、第1回で学んだことについて

第2~5回。他の英語の講義ではあまり聞かれない「歩格」と、英語とは別に"Because"にいかに音楽的な独創性があるか、等。

第6~10回。「恋のアドバイス」という邦題へのツッコミ、「僕が64歳になったら」という意味なら未来の話。なぜwillを使わないのか?等


関連メモ



よしてるの英文ブログ

*1:佐藤先生曰く、わかりやすくするために作った言葉で、正式な文法用語ではないそうです。そりゃそうか。でもそれこそベタなこの言葉、「メタ」と音的にも対になっているし、何よりすっと頭に入ります。


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