庭を歩いてメモをとる

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ポール・マッカートニー ベスト・ソングス30

レコード・コレクターズ2020年9月号。ミュージシャンやライターの方々がそれぞれ「ポール・マッカートニーのベストソングス30」を選び、それを順位ごとに点数をつけて集計しベスト100を選出。各位のベスト30も掲載されています。

レコード・コレクターズ 2020年 9月号

これに影響されて、自分でもやってみました。

順位なんてなかなか選べない。毎日でも毎時間でも変わるようなものですから。ただ、思い立ったが吉日、There never could be a better moment than this one. 今この瞬間の、あくまでごく個人的なお気に入りを選んでみました。


第30位~第21位

30. Hold Me Tight

もちろんビートルズのではなく、Red Rose Speedwayラストメドレーの1曲目。メドレー全体も楽しいですが、ピアノガーン+直後にドラムが入るところがいちばんしびれるのでこの曲を。

29. Too Much Rain

アルバムChaos...の中で一番繰り返し聴いているのはEnglish Teaなのですが、最近はこの曲がもっとも胸に沁みるようになりました。どうしてかな。曲調かな、歌詞かな、ポールのヴォーカルかな。

28. Daytime Nightime Suffering

勝手に「音楽の魅力凝縮ソング」と呼んでいる曲がいくつかあります。ひとつの曲の中にいろんな要素が詰め合わされている - 例えばキーやテンポ、拍子やサウンドがカラフルに変わる - のに破綻せず忙しさも詰め込み感もなくむしろ完成度が高まっている、というような。ビーチボーイズのGood Vibrationsが筆頭、といえばわかっていただけるでしょうか。その「魅力凝縮ソング」の中でも、特にお気に入りのひとつ。一方、長年の謎は「歌詞に出てくるriverってなんやねん」ということ。英文学の先生やネイティブ数人に訊くもわからずじまい。(2021年1月16日追記:解釈例を提示している本を見つけました↓)



27. You Gave Me the Answer (Venus and Mars)

イントロのピアノからもう夢の世界へ。フレッド・アステアですね。ポールがテレビでロン・ウッドと対談しているとき、アステアのCheek to Cheekをうれしそうに口ずさんだ表情が忘れられませんが、その憧れをもとにこうしてクラシカルかつオリジナルな歌を創ってしまうマッカ・ミラクル。

26. Move Over Busker

最近ジョギングしながらよく聴いているのでランクインしました。特にブリッジのところが走ってて盛り上がるのです。そういえばStrangleholdのMV冒頭でこの曲のエンディングが流れますが、あれ絶対頭からフル演奏していると思うのでそれを公開してほしいのですが、残ってないのかなあ・・・

25.(I Want To) Come Home

21世紀に入ってからのポール作品にも好きなのはいくつもありますが、これはその中でも特にポールらしいというか、安定のポール節な感じがする佳曲。From a Lover to Friendに磨きをかけた感じ、というとDriving Rainのファーストシングルに失礼か。映画「みんな元気」の主題歌でもありますが、この映画、小津安二郎の「東京物語」のオマージュ作品の、さらにリメイクということで興味津々なのですが未見です。
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24. Souvenir

Flaming Pieは好きなアルバムのひとつで、曲をどれかひとつ選ぶのは少し難しいのですが(そんなの"Beautiful Night"に決まってるでしょう、という方が多い気がします)、私は1曲だけならこれです。冒頭のキーがもたらす感覚がすごく独特で(音感がないので実際はどうなのかわかりませんが)その味わいが余人(曲)をもって代え難いので。

23. This One (album ver.)

大人のポップソングの王道というか、完成度の高さが比類ないなあと。これもブリッジ部分が特にお気に入り。ブリッジから始まるバージョンもありますが、アルバム収録の、ブリッジは中間部に大切にとってあるバージョンのほうが好きです。

22. Soily

70年代のライブでのポールって、ビートルズ時代よりも「おりゃ~誰も俺を止められないぞ!」感を感じるのですが、その集大成のような迫力にしびれます。しばらくベースが同じフレーズを刻み続けるところにも病みつきになってます。

21. Tug of War

このアルバムもどの曲がいちばん好きかがよく変わるのですが、今日はこちら。ジョージ・マーティン先生のオーケストラアレンジの功績も非常に大きいかと。ポールの歌声やギターよりもそちらに耳が行くことのほうが多いかも・・・


第20位~第11位

20. Only Love Remains (album ver.)

サックスやパーカッションが入っていないバージョンのほうが好きです。MVはサックス入ってるほうですが、映像は好きです。ポールとリンダが年老いた未来予想図が少し描き出されますが、これ実現しなかったんだなと思うと一層哀しくまたOnly Love Remainsな気持ちになります。

19. Lifelong Passion

Fireman名義のものをここに入れていいのかという問題はさておき、Electric Argumentsって00年代のアルバムで一番のお気に入りかも。このとき限りの新境地。そんな中でも静かな希望と光に満ちたこの曲を。日本盤に歌詞そして対訳もないのは残念。

18. Your Loving Flame

音楽って音楽だけで評価すべきものという考えもあるでしょうが、自分にとって長く聴き続けている音楽には、必然的に個人的な想い出が伴走するものではないでしょうか。この曲は私にとってその筆頭で、2002年の来日公演と分かちがたく結びついています。もちろん、曲自体のすばらしさがあって当時愛聴していたからそうなっているわけですが。今もピアノのイントロを聴くとあの肌寒くなり始めの11月中旬の空気までもが蘇る。ヘザーがポールの音楽キャリアに残した数少ない功績のひとつ、と書くと怒られそうですが、そう思っています。

17. Queenie Eye (Live at Tokyo Dome 2013)

こちらも同じく来日公演の想い出の曲(というだけではない魅力がいっぱいの曲でもありますが)。なので曲の合いの手、みんなでOh!と叫んでいるのがばっちり収録されている東京公演バージョンを選んでしまいます。

16. Same Time Next Year

不倫映画(略しすぎ)のテーマとして作曲したもののボツになった作品らしいですが、なんともったいない。それはともかく、そういう背景を知らずに聴いたときから長調のメロディが紡ぎだす独特の切なさのとりこです。映画のほうも観てみたいのですが日本語字幕の入っているDVDや配信はないみたいで・・・
SAME TIME NEXT YEAR(日本語字幕なし)

15. Goodnight Tonight (8" single)

これも私にとっては「魅力凝縮ソング」。スパニッシュギターから始まってあのベースライン、穏やかな歌いだし、だけど気がつくとディスコサウンド。聴いててとっても楽しい。"Don't say it! (goodnight tonight)"と連呼しまくるのにMVのラストに大きく"goodnight"と映し出されるのはなんでやねんって感じですが。

14. The Back Seat of My Car

はじめて聴いたときの衝撃が忘れられない曲のひとつ。「これから何が始まるんやろうって感じのピアノやな~わくわく、ポールの艶っぽいヴォーカル最高、なんやこの低音ヴォーカル?ふざけ始めたか悪い癖やな、うわ次はファルセットか、ギターのカッティングかっこええな、オーケストラアレンジも流れるようや・・・」最初にどこまで感じたかは覚えていませんが、とにかく驚いて、1か月くらいこの曲を毎日聴いていました。今も飽きません。

13. Junk

最初、イギリスで長く歌い継がれている民謡か何かと思ったんです。グリーンスリーヴスみたいな。ポールが作曲したというより「すでに神様が完成させているが世の中にまだ姿を見せていない曲をポールが取り出した」ような感覚さえ覚えます。タイトルも曲の雰囲気も「小品」ですが、私の中では堂々たるスタンダードです。

12. Loveliest Thing

ポール+フィル・ラモーンのサウンドがとにかく好み。派手なエコーはそんなに好きじゃないのですがこのコンビのはなぜか味わい深く感じるし、ちょっと乾いた感じのパーカッションの音などもポールの曲をうまく支えてくれてます。特にこの曲はメロディやサウンドも含めた抒情感がフィル・ラモーンのプロデュースにぴったりはまっている。最後のポールの"Ah...hah...ah..."のメロディとその後の"Hmmm..."って息づかいまで含めて絶品。このコンビが続かなかったこと、返す返すも残念です。

11. Wanderlust (Tug of War)

もともと大好きで、特に後半の「違う歌詞とメインヴォーカル同時進行」のところを聴くたびにじーんとしていたのが、旅行で「いい景色やな・・・」「ええ想い出になるな・・・」などの「いい場面」に遭遇すると自動的に脳内再生される癖がついてしまったので、もともと素晴らしい曲に素晴らしい旅の想い出がmixされて最強に強まっている(スタパ齋藤さん風)次第です。


第10位~第1位

10. The Lovers that Never Were

この曲を聴くときに感じる「世界で二人だけ」「決然とした想い」「歩む先に見える光」の要素が唯一無二で、なのでこんな上位に来ています。三拍子なのも後半リズム隊がシャッフルするのにも、理由はわかりませんがすごく惹かれます。ピアノの使い方もイントロからして効果的。

09. Mull of Kintyre

日本では91年に出たシングルに入っているグラスゴーでのライブのはじけ具合も最高ですが、やはりオリジナルの地に足の着いた盛り上がりにしみじみします。さっきWanderlustのところに「旅のいい想い出にはWanderlustがもれなく流れる」というようなことを書きましたが、これはさすがに例外です。

08. Another Day

ポールの「魅力凝縮ソング」の筆頭。イントロなしで始まるヴォーカルの"(every) day she takes a morning bath she wets her hair / wraps a towel around"まで同じ音階が続くのに、とてもそうは聞こえません。ベースがだんだんと複雑になっていく過程だけでもうっとりです。中間部で拍子が変わっているのはしばらく気づかず、それだけ(私にとっては)自然だったということなんですが、後でわかるとこれもおもしろいなあ、と。最初から好きになったけど、何度か聴いているといろんな仕掛けがわかってきてさらに好きになる・・・そういう奥深い、聴きどころ満載の曲です。

07. Once Upon A Long Ago (long ver.)

頭のピアノ、ポールのしっとりとした歌いだし、中間部のコーラスとその後のギターソロ、ナイジェル・ケネディのバイオリン、ラストのポールのシャウト(long ver.)に続くコーラスの厚みと、どこをとっても心に沁みるサウンドが続きます。アメリカではシングルカットどころかアルバム(All the Best)にも収録されなかったなんて・・・まあMull of Kintyreを差し置いてGirls' SchoolをA面にするくらいですしね。

06. Temporary Secretary

めちゃくちゃかっこいいポールの曲といえば私の中ではこれです。2017年の来日公演でこれをやってくれたときには狂喜乱舞でしたね。だいぶ前にクラブイベントでこの曲を流したときに「これほんとにポール・マッカートニーの曲?」と驚いた方がいらっしゃいましたがまさにそれこそがポール、とも思ったりもします。

05. Venus and Mars / Rock Show (Wings Over America)

アルバム"Venus and Mars"収録バージョンの終わり方(ピアノフレーズの繰り返し)も好きなんですが、このライブの迫力には替え難い。ベースを弾きながら歌う「おりゃ~」全開のポールも実にかっこいいし。

04. No Words

メロディラインの先の読めなさがとにかく気持ち悪くて(最大級のほめ言葉)。その点、ポールが変名でピーター&ゴードンに提供した"Woman"と少し似ていますが曲の魅力はこちらがはるかに上です。

03. Getting Closer

ラジオをチューニングしたらギター一発!ってイントロだけで十分しびれます。その後も全編ソリッドなギターサウンドがぐいぐい曲を引っ張っていくこの曲、ライブで体験したいなあ・・・(友人たちとコピーバンドにリクエストしまくったあげくこのギターが鳴り響いたときはうれしかったなあ。次はポールで・・・)

02. That Day is Done

葬送、人生の終着。そんな深遠な出来事を歌い上げるポール。音量は控えめだけど曲の深みをより増してくれるピアノを弾くニッキー・ホプキンス。もともと心にずっと響いていた特別な歌でした。それが先日、朝日順子さんによる動画「”That Day Is Done” PAUL McCARTNEY 歌詞解説」を拝見してこの曲が創られた背景を知ったことが、この曲をこの順位にしています。

01. Maybe I'm Amazed (McCartney)

Wings Over Americaの「ハートのささやき」のほうが完成度は高いかもしれないけど、愛してやまないのはこちら、"McCartney"収録のオリジナルです。オルガン(メロトロン?)があることだけでもかなり違います。


25年前の「初書き込み」もポールベスト10だった

さて、実は25年前の今日、私はネットの世界に初めて書き込みをしました。正確にはインターネットではなくて、Nifty-Serve(現@nifty)が提供するパソコン通信サービスだったのですが。

ここにロックファンが集まる電子会議室があったのですが、95年、ここで「アンソロジー」発売に向けてビートルズの特設会議室(のち常設化を経て2004年閉鎖)ができ、ファンが毎日いろんな話題をやりとりしていたのです。

それをしばらく眺めていた私は、あまりにも楽しそうなので、そこに参加したいと思い、当時行われていた「メンバーのソロ作のベスト10」企画に投票。それが「初書き込み」でした。

ちょっと恥ずかしいのですが、その内容をほぼそのまま(一部削除・誤字訂正)抜粋してみます。

00881/01407 *** よしてる RE:ソロベスト10(ポール編)募集
(15) 95/09/21 00:09 00616へのコメント コメント数:2


 はじめまして。奈良に住むよしてると申します。25歳の社会人です。
2ヵ月ほどROMを続けていたのですが、〇〇さんの企画を拝見して、「これは参加せねば・・・」と思うに至りました。パソ通に関して初心者ですが、みなさんどうかよろしくお願いいたします。

 THE BEATLESに出会ったのは大学1年のころで、もっと人生の早い時期に出会えなかったのが少々残念なのですが、それでもTHE BEATLESは確実にいろんな事を教えてくれています。楽器を演奏する楽しさもその一つで、最近は会社の帰りにピアノを習いに行くようになりました。

それでは、私のポールのソロベスト10です。

1 Maybe I'm Amazed (McCartney, Wings Over America, Tripping the Live Fantastic)
イントロから、サビのシャウト、ポール特有の左手が強いピアノ、全てが好きです。ライヴもいいけど、スタジオ録音(McCartney収録)のオルガンがいい味だしてると思います。

2 Getting Closer (Back to the Egg)
コンサートで是非やってほしい曲なんですが・・・あるファンの方が「この曲のプロモビデオを1ヵ月に1回は見てます。元気が出るんです。」とおっしゃってましたが、ほんとに力が湧いてくる曲です。ベースも「らしさ」満開です。

3 Loveliest Thing (Flowers In the Dirt 93年の再発盤のBonus Track)
もともとはシングルのB面曲で、その後も"Flowers...."の来日記念盤かでしか聴けなかった曲ですが、もったいない・・(ポールは時々こういうことをしますね。)ラストのフレーズは何度聴いても心が震えます。シンプルだけど味わい深いバラードです。

4 The Back Seat of My Car (RAM)
ポールのボーカルの幅広さと曲構成の複雑さが見事に溶け合って、何度聴いても飽きない大曲に仕上がっています。

5 Wanderlust (Tug of War, Give My Regards to Broad Street)
"Tug of War"はいわゆる「早送りのいらない」アルバムのひとつですが、そのなかでも一番好きです。後半の同時に違うメロディが展開する所など、"Eleanor Rigby"その他でお馴染みの得意ワザですよね。

6 Venus and Mars ~ Rock Show (Venus and Mars, Wings Over America)
このメドレーの曲間の劇的な変化は、それだけで世の中に多々ある凡作を吹き飛ばしてしまう迫力があります。その点でもライヴのほうが断然お気に入りなんです。映画"Rock Show"でこの曲を歌いながらベースを弾きまくるポールはほんとにかっこいい!

7 Hi Hi Hi (Wings Greatest, Wings Over America)
これもコンサートで聴きたい・・サザンの「シュラバ・ラ・バンバ」を初めて聴いたとき、とっさにこの曲を連想しました。

8 Once Upon a Long Ago(All the Best, Press to Play93年の再発盤のBonus Track)
コーラスの何ともいえないあたたかさが心にしみとおります。プロモビデオの、白黒の世界に音が色つきで出てくるシーン(わけわからない表現ですみません)も印象深いです。

9 Mull of Kintyre (Wings Gratest, London Town93年の再発盤のBonus Track)
91年の初め頃出たシングル"The Long and Winding Road"(ワールドツアーのライヴ)に入ってるグラスゴー公演の盛り上がりはまさに熱気が伝わってくる出来です。ポールのエンタテインメントの才に改めて感動しました。

10 C'mon People (Off The Ground, Paul is Live)
いくつになっても魅力的な作品を創り続けるポールの才能を見つけることが出来ました。"Off The Ground"もいい曲多いですよね。アルバムの最後を飾るにふさわしい(ほんとは最後じゃないけど・・・)スケールの大きな曲です。

10曲にしぼるのって大変ですね。ポールほど名曲が多いと。

うわ・・・25年たっても書いてる内容がほとんど変わっていませんね。特に曲のどういうところが好きか、という点は。前述のベスト30は、この25年前のベスト10をほとんど見ないで書いたし、そもそも何を書いたかを覚えていないというのに。

この時は、まだ自分がスコットランドのリアルMull of Kintyreに行く予定は立ててなかったし、自分の結婚パーティで"Maybe I'm Amazed"や"Mull of Kintyre"を演奏してもらえるとは、それに"Maybe I'm Amazed"はともかく"Hi Hi Hi"をポールのライブで聴けるとは夢にも思っていませんでした。そもそも、このときはまだ"Free as a Bird"も聴けていないのです。

それを考えると、この25年間はとても恵まれていたんだなと思います。これからの25年(って次は75歳か・・・)、何が起こるかはもちろんわかりませんが、少なくともポールを聴き続けることは変わらないでしょう。

ポール・マッカートニーの音楽があり、それを聴けて、さらに新曲を楽しみにできるこの現実・現在に改めて感謝します。


関連メモ

ポールについて書いたメモの目次です。100以上、つらつら書いています。


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