(以下、ネタバレなしのつもりですが、ちょっとヒントをまぶしています。また、似た仕組みの他の作品についての記述はスペースを空けて記載しています。)
ミステリファンの友人が「気楽に読んでいたら、最後に驚く」、他の友人が「タイトルだけ見たらミステリーに思えない」とコメントしていたので気になっていた小説です。で、自宅から駅までの間の桜が葉桜になったのを見て読んでみることに(単純)。
で、噂どおり驚いたかといえば?
うん、確かに、気楽に読んでいたら最後はびっくりするでしょう。よく考えたよな。見事な仕組み。さりげないひとつのことばですべてが塗り変わるのです。「謎が明かされる」のではなくて「え、そういうことだったの?」と。
でも、最初から「最後に驚くって?ふむふむどこに伏線が?」なんて考えながら読むとどうかな。私はそのネタがけっこう初めのうちにわかってしまいました。驚かせる仕組み(内容は違います)がほとんど同じミステリーを先に読んでいたせいかな(後述)。
とはいえ、私はこのミステリーがかなり気に入りました。「驚きの展開」までの物語は少し冗長な気はするものの、退屈させない描写・情報をあちこちに盛り込んでいてかなり楽しめましたし、何より読後感が素晴らしい。タイトルの意味が明らかにされるエピローグには心があたたまりました。自分自身にとっても重要なメッセージだと思えたし。主人公の魅力も、そこで一気に上昇しました。
何はともあれ、秋になったら、駅までの道すがら桜の紅葉を楽しむつもりです。文字通りの意味においても、この作品を読んで知るようになった意味においても。そういう「先の楽しみ」を提示してくれたところが、私にとってこの小説の一番のお気に入りポイントです。
−−−さて、「驚かせる仕組みがほとんど同じミステリー」とは・・・(以下は、ネタバレではないですが、その作品を読んだことのある方については大きなヒントを含んでいますのでご注意ください)−−−
それは、この作品です。
なので驚きが半減したのは事実。でも、「葉桜」は無理矢理感はほとんど感じなかったので、その手腕はやはり見事だと思います。まあ、小説だからこそできるやり方ですね(だから「ハサミ男」が映画化されると聞いたときは驚きました。)。
あとで読んだこちらも「驚かせる仕組み(内容は違います)」がほとんど同じ。ただし内容の密度は上の2作より濃いめ。