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評判通りの作品か気になって読んでみた - ピエール・ルメートル「その女アレックス」

(ネタバレなしです)

物語

現代フランス。30過ぎの女性アレックスは、突然何者かに連れ去られ監禁される。なぜ彼女がこんな目に?しかし物語が進むにつれ、アレックスの意外な人生が浮き彫りになっていき・・・


感想

先が読めない、逆転が何度も続くといろんなところで話題のこの作品。「このミステリーがすごい!2015」の海外部門第1位など多くのランキングでトップを取り、文庫本の帯にも「予想はすべて裏切られる!」「慟哭と戦慄の大逆転サスペンス」の文字が躍っています。これは読んでみたいと思い手にとってみました。

たしかに謎が明らかになりそれまで認識していた世界ががらっと変わるのは1回だけではありません。物語の中盤から何度かそういう仕掛けがあります。また、シーンによっては疾走感・切迫感も十分。だからページを繰る手は止まらないし続きが気になる。かなりおもしろい小説だと言えると思います。

しかし、「予想はすべて裏切られる!」のかというと、そういうわけではありませんでした。いくつかの「謎」は想像がつきましたし、一つ一つの「謎」についてもそれがものすごく独創的かというとそうでもない。そういう点でいうと、この作品が評判通り・宣伝文句通りかというと、そうではない、と感じました。

ただ、それぞれの「謎」を惜しげもなくこのひとつの物語に投入している点は見事で、それこそが独創的といえるのかもしれません。

また、事件を追う刑事達 - 身長145cmで妻を殺人事件で亡くした主人公、その上司の大男、大金持ちだがいやみのない着道楽青年、ただでもらえる・使えるものはなんでも利用するけち男の4人がなかなかの味わいを醸し出しています。この作品、本編の物語にかなり陰惨な面があるのですが、この男達の「時には衝突しつつ最終的には事件解決のため協力し合う」人間くさい関係はそれを乗り越えて読み進める力を貸してくれます。

なので、この作品に対するよしてるの感想は「評判通りの作品かというとそれはちょっと違うと思うが、でもおもしろいのは間違いない」です。


他の「展開に驚いた」ミステリー

「その女アレックス」と物語はまったく違うけれど、読後の感想が似ていたミステリーはこちら。

でもこの「葉桜」のほうが「ひとことですべてが塗り変わる」仕組みが見事だし、何より読後感が素晴らしいのでよしてるは断然こちらがお気に入りです。ちなみに、メモの末尾には他の「ひとことですべてが塗り変わる」小説についても書いています。


映画で「謎が明らかになりそれまで認識していた世界ががらっと変わる」といえば、最近見たこちらの3本かな。


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