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ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す」

ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)

SF、というより「世にも奇妙な物語」な感じの短編集。収録作品のあらすじ(一応ネタバレは避けてるつもりです)はこんな感じ。


ゲイルズバーグの春を愛す
古き良きたたずまいを残す街ゲイルズバーグ。開発業者は、今は存在するはずのない路面電車にひかれそうになり開発をあきらめる。古風な無人大邸宅が火事になると、馬車の消防車がどこからともなく現れ火を消し止めた・・・



悪の魔力
男が骨董品店で手にした眼鏡は、道行く人々が下着姿に見えるというものだった。そこで彼は・・・



クルーエット夫妻の家
クルーエット夫妻は、19世紀に描かれた設計図面を発見しそれを基に新たな邸宅を建てた。夫妻は19世紀の服装に身を包むようになり・・・



おい、こっちをむけ!
売れない作家が亡くなった。生前の彼を唯一評価していた評論家は、彼の幽霊を目にするようになった。導かれた彼は、彼の最後の望みを知る。



もう一人の大統領候補
今回出馬する大統領候補は、私の幼なじみだ。彼は子どもの頃からたいした奴だった。サーカスから逃げた虎を催眠術で眠らせ新聞を賑わしたほどだ。そして私はそのわけを知っているから・・・



独房ファンタジア
死刑執行を一週間後に控えた囚人は、最後の望みとして独房の壁に絵を描くことを許された。彼はドアの絵を描き始めた・・・



時に境界なし
刑事は大学教授に問いただす。最近、捜査している容疑者が次々と行方不明になる。そして彼らの写真や名前が、1885年や1927年の新聞や写真に出ているのだ・・・



大胆不敵な気球乗り
突然気球に乗りたくなったので、作って空を飛んだ。近所のご婦人が同乗させてほしいと言ってきた。そして・・・



コイン・コレクション
妻とはすっかり倦怠期。妻を怒らせてしまった後、彼はいつのまにか「もしかするとこうなっていたかもしれない世界」に足を踏み入れてしまっていた。果たして帰宅すると、妻は以前別れた女性だった・・・



愛の手紙
アンティークの引き出しの奥に、19世紀に書かれた女性からのラブレターが入っていた。私は試しに返事を書き、19世紀から存在する郵便局から投函してみた・・・女性の最後の手紙には何が書かれてあったのか。そして私がその後目にしたものは・・・



どの作品も、好みの差はありますがちょっとしたユーモアと強いノスタルジーを感じさせる佳作揃いでした。特に心震わされたのは最後の「愛の手紙」です。時を超える物語には傑作が多いですが(小説なら「夏への扉」「マイナス・ゼロ」、映画なら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「バタフライ・エフェクト」など)、これも私の傑作リストの仲間入り決定です。


そしてもうひとつ印象深かったのが、翻訳者福島正実さんによる、1972年に書かれた解説。要約すると、この小説は1952〜62年に書かれたもので素晴らしい内容だが、なぜフィニイは、そしてアメリカはこんなノスタルジックな作品を生み出せるのだろう、というような内容です。最後の言葉は「今の日本では考えられません。」。40年後の今、もはやこの福島さんの最後の言葉自体が「考えられない」日本になったな、との感慨を抱かずにはいられませんでした。


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