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発達障害の人とオタクの違いとは

以前、発達障害とは何なのかを調べてみて、こういうことを知りました。

  • 発達障害には、大きく3つのカテゴリーがある
  • そのうちのひとつ「自閉症スペクトラム」の特徴は次のとおり
    • 偏食・同じ服をいつも着るなどの特徴的なこだわりや特定の興味に熱中する 等
    • 友達関係をうまく築くことなどが困難

(その他、詳細は次のメモを参照)


この「特定の興味に熱中する」という点はいわゆる「オタク」と何が違うんだろう。

以前から感じていたこの疑問に、次の本が答えてくれていたので、その内容と感じたことをメモします。

発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち (SB新書)
(2018年発行。著者の本田秀夫氏は精神科医・医学博士で、日本自閉症スペクトラム学会常任理事[本書発行当時])

大前提

発達障害の人とオタクの違いを考えるにあたっての大前提。

それは、発達障害の特性には強弱がある、ということです。

つまり、発達障害と「ふつう」の間に明確な境界線はなく、グラデーションになっています。

それじゃあますます発達障害(自閉症スペクトラム)の人とオタクの違いがわかりにくくなるじゃないか、と感じた方もおられると思いますが、あえて違いを挙げるとすれば、次の点になるそうです。


発達障害の人とオタクの違い

それは、自閉症スペクトラムの特性が強い人は、こだわりと対人関係を天秤にかけた時、こだわりを優先するのです。

本書では、ゴルフオタクの例が挙げられています。プライベートの時間はゴルフに捧げ、ゴルフ仲間との情報交換も頻繁に行い、お酒や食事を共にしながらゴルフ談議で熱くなる。そんな人です。ゴルフに熱中するだけでなく、そこから派生する対人関係も大いに楽しんでいるようです。

一方、自閉症スペクトラムの特性がある人も集まる、アニメ好きな人たちの集まりではどうか。参加者は共通の趣味がある人との交流を喜んでいますが、そこから「今度お茶しよう」というような話にはなりにくいのだそうです。ここではアニメそのものを見ることや語ることが主要な目的で、対人関係はそうではない。

これが発達障害の人とオタクの違いといえます。


「黒ひげ危機一髪」の楽しみ方の違い

関連して、本書では「黒ひげ危機一髪」の楽しみが発達障害特性のあるなしで変わるケースも紹介されていました。
黒ひげ危機一発 (2011年 NEWパッケージ)


メーカーが提示している遊び方は、

  • 「参加者が一人ずつ」剣をタルの穴へ刺していき、黒ひげが飛び出たら負け

です。

誰の番で黒ひげが飛び出るのか、そのドキドキを共有する遊びです。

一方、自閉症スペクトラムの特性がある子どもたちは次のような遊び方をすることがあるそうです。

  • 「一人が連続して」剣をタルの穴へ刺していき、黒ひげが飛び出たら次の子にまわす
  • それまでの間、他の子は自分の好きな別の遊びをする

つまり、この子どもたちは、黒ひげ危機一髪の仕組みには興味があっても、ドキドキを他の子と共有することには興味がないのです。

これも、自閉症スペクトラムの人とオタクとの違いである「対人関係よりもこだわりを優先する」ことにつながっていて、興味深いなと感じます。


優劣ではなくて多数派・少数派

ところで、この「黒ひげ危機一髪の遊び方の違い」について、本書ではこのように述べられています。

(黒ひげ危機一髪でドキドキを共有しない遊び方をするのは)「通常のやり方を楽しむ能力の欠損」となるのでしょうか。

いえ、そんなことはありません。もしも、楽しみ方に優劣があると考える人がいるとすれば、それは多数派のおごりでしょう。AS(自閉症スペクトラム)の人たちの楽しみ方は、ただ少数派というだけです。

同様に、発達障害の人とオタクに違いがあったとしても、それには優劣はない。というか、どちらも社会全体から見れば少数派という点では同じではないか、と私は思います。

そもそも、発達障害と「ふつう」の間の境界線はグラデーションなんだし。

発達障害の人とオタクの違いについて知るとともに、両者の共通点に新たに気づくことができた。本書はそんな本でした。


関連メモ


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