このドラマを観ていてまず思い出したのは、小熊英二「<日本人>の境界」です。「日本人」の定義の変遷を克明に綴ったこの本には、日本に支配されていた時代の朝鮮人の中には「日本人」として名を成し、朝鮮の位置を高めようとした人々もいたことが書かれています。このドラマは、本編の恋愛物語の行間に、そういった人々が存在した空気をうまく伝えているように感じました。同様に、当時の日本人の朝鮮支配に関する意識も津川雅彦のセリフなどに流れている気がしました。根拠はないのですが、バランスよく伝えている気がしたのです。もちろん当時のことは実際には何も知らないので検証はできないわけですが、丁寧に空気を伝えている実感はありました。
長谷川京子さんの演技は期待していなかったのですが(ファンの方すみません。私も彼女のことが嫌いなわけではないのですが)、努力していたのではないでしょうか。木戸役の役者さんの存在感もあって、二人のやりとりは素直に胸に来ました。後から考えると、木戸の朋子への想いの根拠が弱い気もするのですが、北に向かうエピソードとその演技で、それをカバーしていたように思います。
ところどころに現代の街並みが見えるのが今のところ謎ですが、それ以外は物語に没入させてもらいました。金曜が楽しみ。