■ご紹介下さった方
みちこさん(職場の同僚)
■管理人の感想
[内容]
メジャーリーグ選抜チームを無得点に抑えた投手としてならした後、ゲバラとともに12人の兵でキューバ革命を成功させ、現在もキューバを「独裁」し続ける男、フィデル・カストロ。この男を追ったフリージャーナリストによるルポルタージュです。
冒頭は、キューバ系アメリカ財団へのインタビュー。カストロ政権がどれほど過酷で、どれだけ多くのキューバ人がアメリカに亡命しているかが説明されます。しかし著者は、以前訪ねたキューバで見た人々の笑顔が忘れられません。自分の目でキューバを確かめ、カストロに会いたい一心で彼はキューバに飛びます。
[感想]
著者は基本的にカストロのファンであり、アメリカが世界に及ぼす力に懸念を抱いているので、どうしてもカストロへのシンパシーを感じさせる書き方になっています。しかし、あくまでジャーナリストとしての最低限の冷静さは保たれているので、ただのカストロ礼賛本に終わることなく、現在のキューバとカストロに抵抗感なく触れられる内容になっていると感じました。
そのようにこの本を読んでもっとも感じたことは、一口に独裁国家と言っても様々な形態があり得るのだということです。
カストロは自分の偶像をキューバ国内に建てることを法律で禁じています。他の独裁国家では聞いたことのないこの制度。一方で、彼は休憩なしで7時間の演説を行うなど、自己顕示欲はやはり並大抵ではないようです。そしてキューバがいかに素晴らしい国であるかに熱弁をふるいます。こんなところは他の独裁国家でもよく聞く話です。
結局彼は、制限のある環境下でキューバをいかに暮らしやすい国にするかということを世界に示すことでその底知れぬ自己顕示欲を満たしているのではないか、そのように感じました。きっとそれは、独裁者が自己を神格化し恐怖政治を行うのと根っこではそんなに違わないのでしょう。しかし結果は残酷なほど違う。
政治というものの力と、カストロという男の魅力、そしてキューバについて考えさせてくれる本でした。