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横田増生「アマゾン・ドット・コムの光と影―潜入ルポ」

アマゾンは、その知名度の割にあまり内部の情報を聞く機会がない会社だな、と思っていました。注文した本はどうやって出荷されているのか、1,500円以上購入で送料無料なんてどんな仕組みでやっているのか(今やネット書店ではこれが標準ですが)、売上の規模ってどれくらいなのか、など。

実はアマゾンは、そういった会社の情報を外部に公開しない方針のようなのです。だから世間で知られている企業の割にそれを分析した本が少なかったよう。特に日本法人は、売上高すら公開していないとか。

そんな状況に業を煮やした元物流業界誌の編集長が、仕事を辞めアマゾンの配送センターにパートとして就職、書き上げたのがこの潜入ルポです。

出荷方法、送料無料の仕組み、売上規模

著者は、そこでの仕事と、昔のつてで日通(アマゾンの配送を一手に担う)の元役員へのインタビューを行い、アマゾンのビジネスを少しずつ明らかにしていきます。上記の個人的な疑問に関してもかなりの部分が(推測も含んでいるが)明らかにされていました。

本の出荷方法:約400名のアルバイトが、注文が20冊程度書かれたオーダーシート(ピッキングスリップというらしい)をもとに本棚から本をピックアップし梱包場所に運ぶ。このピッキング作業は、本のかたち・大きさが一定でないため機械化が難しい。

送料無料の仕組み:おそらく日通は、一冊300円程度の破格値で配送している。これなら、1500円でもぎりぎり足は出ないのではないか(業界標準の仕入れ値78%で計算すると、アマゾンが手にする粗利は330円になる)。

売上の規模:2003年度で500億円を超えているのではないか。1000億円を超す紀伊国屋、丸善までには至らないが、500億円規模の2番手・文教堂・有隣堂程度までには伸びている。他のネット書店の10倍程度にもなっている。

これらの情報も非常に興味深かったのですが、同時に関心を持ったのが、この配送センターでの労働環境についてです。

労働環境

アマゾンそのものについての記述の他に、このルポの柱となっているのが、本などを配送するセンターでの労働環境です。著者が働いた、本をピックアップする仕事では、時給900円(その後850円に下がる)。これはさほど珍しくないとしても、勤務終了時間が当日の勤務中に急に会社都合によって変化したり、1年で9割ほどの人が辞めてしまう(著者の推測ですが)という状態だそうです。これは少し驚きです。

個人的に、コールセンター構築・運営のコンサルタントをしている関係上、現場で働く方々の労働条件と、その中でいかにモチべーションをもって仕事に取り組んでいただくかというテーマにはどうしても敏感になってしまいます。コールセンターのオペレーターの方々は、話す内容にもよりますがある程度の知識や経験がないと定められたクオリティの仕事の遂行が困難なので、研修に時間をかけます。当然、そうなると人の入れ替わりがあると研修する側にとっては大きなロスになるのです。そのため、1年で9割の人が辞めてしまうという環境は悪夢以外のなにものでもありません。一方、アマゾンのセンターでは、簡単な説明だけで仕事に取りかかれるようで、人がどんどん入れ替わってもロスは少ないのでしょう。コールセンターとアマゾンの配送センターは、一見同じような労働環境に見えて、その実かなり違うものだということを今更ながらに痛感しました。

著者は、アマゾンについて、客として利用すると素晴らしいが、アルバイトとして働くのは願い下げ、というようなことを書いています。この二つを両立させてしまう企業が増えていくことについての違和感のようなものがこのルポのテーマのひとつのようです。私も、同様の感覚を持ちつつも、そのような企業が今後増えていく予感も同時に持ちました。


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