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諸星大二郎「孔子暗黒伝」

孔子暗黒伝 (集英社文庫―コミック版)

[物語]
孔子は、古代周帝国の繁栄の秘密を調べるうちに、地下で一人「いくら食べても減らない体をもつ動物」を食べて育っている子どもを発見する。この子ども赤(せき)は老子と思われる老人と旅し、インドで被差別民の少年アスラと出会い、釈迦入滅と同時に二人は一人の「ハリ・ハラ」となる。ハリ・ハラは南国で少女との悲劇の出会いを経て弥生時代の日本に到達するが・・・


[感想]
この作品をお読みになっていない方が上のあらすじを読まれても、何を言っているのかさっぱりわからない((C)ポルナレフ)ことと思います。でもこれはそういう作品なんです。似たものが他にない、本当に独特で奇妙な物語です。

でも、想像力を駆使して書いたという感じでもないんです。諸星さんはまるで見てきたことをそのまま書いているような、確信を通り越した自然かつ詳細な描写で突き抜けた「孔子暗黒伝ワールド」をこれでもかと展開させ続ていました。いやはや。

この作品を知っている誰もが書いていることですが、これが、連載作品の人気投票結果で連載継続/打ち切りが決まる週刊少年ジャンプで連載されていたとは。びっくりです。編集部の度量が広かったのか、読者の度量が広かったのか。当時(1977年)も人気投票システムは機能していたはずなので、両方なんだろうとは思いますが、たいしたものです。

15年ほど前にこれをある方から紹介いただいて読み、驚愕した記憶は今もまだはっきり残っていますが、それ以来何度読んでもまだ核心に触れた気がしません。容易に「わかった。面白かった」と言わせない力にあふれたまんがという気がします。まあそもそも、この作品は理解しようとするよりただ感覚で受け止めるのが正解なのかも知れません。


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