荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」第4部の登場人物・設定をもとに、乙一氏が書き下ろしたオリジナル小説。1980年代、恋人にビルとビルの隙間に落とされ出られなくなった女性の運命と、2000年、密室の中で交通事故に遭い亡くなった女性の事件を発端にした物語が並行で綴られます。
原作の魅力である「スタンド」(背後霊みたいなものによる超能力、とでも言えばいいのかな)による機知に富んだバトル、登場人物の個性あふれるキャラクターとセリフまわしなどを存分に味わわせてくれました。また、随所に登場する「ジョジョ」にまつわるセリフやエピソードの引用は、「ジョジョ」のコアなファンならにやりとすることの連続でしょう。とにかく、乙一氏の「ジョジョ」へのリスペクトが詰まった一冊という印象です。かといって、原作を知らなければ楽しめないというわけでもない。そのための配慮もされています。
個人的には、読後感が不思議な物語だったところが印象に残っています。悲しくもあり、不気味でもあり、希望を感じることもできる。そんな読後感はこの小説で初めて味わった気がします。
残念なのは、小説内で「詳しくはコミックスを」など、物語内で登場人物が自らフィクションであることをしゃべってしまう点。どうしてこんなことをしたのかすごく疑問です。