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伊坂幸太郎「重力ピエロ」

重力ピエロ (新潮文庫)

[物語]
泉水(いずみ・男性)は遺伝子解析会社に勤めている。弟、春は街のグラフィティアートを消している。この兄弟は仲がよいが、父が違う。春は、母が何者かにレイプされた結果生まれてきた子なのだ。そんな二人が、仙台市内での連続放火事件の謎を解き明かすために行動を起こすが・・・

[感想]
ユニークなストーリーでしたが、実は途中で犯人の見当はついてしまいました(大半の方がそうではないでしょうか)。にもかかわらず、印象深い読後感が残ります。推理小説の王道「そうだったのか」という驚きではなく、著者の提示したメッセージに共感を覚えたのです。このメッセージ、1行で書き表すこともできますが、そうするとただの感情論に聞こえてしまうでしょう。それを小説というかたちで読者に問題提起し、考えさせ、感じさせる。その著者の手腕に感心しました。

だからといって、読んでいる最中、推理小説のわくわく感が弱かったというわけでもありません。エンターテインメントでありながら、メッセージも提示する。その両方に成功しているなかなかの作品でした。


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