英語のレッスンが終わってから妻と食事に行くまでの間、中途半端に時間が空いたので図書館とまんが喫茶へ。
村上龍「歌うクジラ」
まずは雑誌「群像」の最新号(2006年3月号)から連載が始まった村上龍「歌うクジラ」。近未来にグレゴリオ聖歌を歌うクジラが発見された・・・という設定だけ聞くとメルヘンっぽい、下手したら奇作「だいじょうぶマイ・フレンド」みたいな作品かなと思いきや、舞台は約100年後、性犯罪者などとその家族が暮らす隔離島。全然メルヘンじゃありません。続きが楽しみだけど、この人の長編によくある「後半だれてくる」展開にはならないようにしてほしいものです(「半島を出よ」はまずそれがなかったので素晴らしいと思ってます。)
岩明均「ヒストリエ」
アレキサンダー大王の書記官エウメネスの生涯を描こうとしている作品。まず、まんがでは他に見あたらなそうな時代と人物に作者が果敢に挑んでいる点に驚きました。しかも物語は期待通りの「先が予想できなさそう」な展開。
主人公が持ち前の知識と機転で運命を切り開いていくところに唸らされたり、この時代の都市生活が現代社会と変わらないような点*1と奴隷制が同時に存在している点に独特のいい意味でのショックを感じさせられたり。おもしろいだけに、不定期連載でなかなか話が前に進まないのが非常に残念です。
しかしこのエウメネス、実在の人物だったんだ。
高橋ツトム「スカイハイ」
不慮の事故や殺害された人の魂は、死後3つの道を選ぶ必要がある。その3つとは「天国へ行き輪廻に入り新たに生まれ変わる道」「現世をさまよう道」「現世の人間を一人だけ呪い殺せるが、その後自分の魂は地獄に落ちずっと苦しみが続くという道」です。たいていの物語は、登場人物が死にこの3つの選択を迫られるところから始まります。でも、登場人物がそのどれを選ぶかというよりも、死ぬことになってしまった背景やなぜその道を選ぶのかという「道のり」部分がしっかり描かれていて読ませる内容になっていて飽きませんでした。
ただ、個人的には、ひとつのエピソードが長く続く「スカイハイ・カルマ」よりも、一話完結タイプの方が物語の完成度が高いように感じています。
TVドラマ化もされていたようですが、そちらは未見です。
*1:学校があって、級友とのつきあいや女の子のためのプレゼントを物色する場面があったり、本屋が普通にあってない本は注文すれば手に入る、とか