庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

社会と課題

ルワンダ大虐殺はなぜ起こったのか-ジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」(下)

文明崩壊(下巻)posted with ヨメレバジャレド・ダイアモンド/楡井浩一 草思社 2005年12月 AmazonKindle楽天ブックス7net 機会があったのでこの本を再読しました。今までこのブログで何度も取り上げてきたこの本ですが、もう一度メモしたいなと思える部分が…

日本の戦争敗因二十一ヵ条とは - 山本七平「日本はなぜ敗れるのか」

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)posted with ヨメレバ山本 七平 角川グループパブリッシング 2004-03-10 AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo 本書はフィリピンでの戦闘経験のある著者が、同じく戦中のフィリピンに技術者として派遣された…

アンドルー・ゴードン「日本の200年」(下)

上巻に引き続き下巻を読み終わってみて。今まで読んだ日本の近現代に関する歴史本の中で、個人的に一番楽しめ、ためになりました。理由は、上巻でも述べた「広範囲な対象を簡潔に記述している」「その当時の労働者・一般市民にも光をあてている」「客観性を…

アンドルー・ゴードン「日本の200年」(上)

この本の概要 江戸時代、庶民は豊かだったのか貧しかったのか 日本人の国民性? 明治維新はなぜ成功した(日本の国力が増大した)のか 女性の地位 植民地政策 元老・重臣の存在 この本の概要 歴史を学び、そこから自分なりの考え方を持つことのメリットって…

エドワード・W・サイード「オリエンタリズム」

私たちが「オリエント」という言葉を聞いて思い浮かべるのはどんなイメージでしょうか。私の場合は、それは中央アジアあたりの砂漠の都市とラクダを連れたキャラバンだったり、タイあたりの民族衣装を着た女性の優雅な踊りだったりします。みなさんもこの言…

ロバート・B・ライシュ「暴走する資本主義」

この本に書かれていることは明解で、次のようなものです。1970年代以降、「消費者」「投資家」としての私たちは強くなったが、「市民」「労働者」としての私たちは弱くなった。そのとおりだと思います。なんとなく日々の生活で実感していたことを豊富な例を…

ピエトラ・リボリ「あなたのTシャツはどこから来たのか?」

アメリカ人の学者が、自分がフロリダで買ったTシャツがどういう「一生」をたどるのかを追いかけた本。アメリカで栽培された綿が中国に渡ってTシャツになり、またアメリカに返ってきて買われ、古着になり慈善団体などを経てアフリカで「一生」を終える。その…

ポール・ホースト「戦争の経済学」

正直に告白すると、私はこの本を飛ばし飛ばし読みました。この本は、大学の経済学部の学生のテキストにもなるように書かれているということで、数式がたくさん出てくるのです。そこを読み飛ばしました。それでもあきらめず最後まで読み通せたのは、やはり書…

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

(2017年12月26日更新)父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年posted with ヨメレバケン ハーパー 早川書房 2001-08 Amazon楽天ブックス7net 北極点初到着者ピアリーの知られざる一面 人類で最初に北極点に到達したと言われている…

玄田有史「14歳からの仕事道」

ちなみに、上のエントリで書いた「仕事についての視点」をわかりやすく、明確に提示しているのがこの本です。中学生向けに書かれた本だそうですが、「仕事」についての様々な考察とアドバイスは、小学生から社会人まで様々な年齢層の人に示唆に富むものだと…

松宮健一「フリーター漂流」

けんごくんのブログで知って読んでみた本です。さまざまな年齢・境遇のフリーターへのインタビューで構成されています。フリーターへのあたたかい視線を保ちながら(この視線が上原隆のそれに似ている感じがしました。上原氏の本は大好きで何度も読んでいま…

なぜセルビアが「悪者」になったのか - 高木徹「ドキュメント 戦争広告代理店」

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)posted with ヨメレバ高木 徹 講談社 2005-06-15 Amazon楽天ブックス 90年代のユーゴスラヴィア紛争において、セルビアには国際的に強い「悪」のイメージがつきました。日本ではそういった…

日本はなぜ真珠湾攻撃を行ったのか その3

そう外国人らしき人に訊かれて、うまく説明できないので少し本を読んでみてから(その1・その2)、一応返答してみました。英文ブログ:Why did Japan attack Pearl Harbor?この英文ブログ、もともとは「外国人向け私的FAQ」のつもりで書き始めたものなので、…

日本はなぜ真珠湾攻撃を行ったのか その2

大川周明のラジオ講話「なぜ日本は真珠湾攻撃を行ったのか」について、前回とは違った視点で書かれた本を探していたところ、妻が一冊の本を紹介してくれました。戦後、東京裁判において政治家以外で唯一A級戦犯(平和に対する罪)で起訴された大川周明が、太…

吉田裕「アジア・太平洋戦争」

先日のメモでも取り上げた本ですが、先日のテーマ「日本はなぜ真珠湾攻撃を行ったのか」からははずれるけど興味深かった部分をメモ。 戦時下の国民生活の窮乏度枢軸国はどこも窮乏していたと思っていたのですが、ドイツと日本ではかなり事情が違っていたよう…

日本はなぜ真珠湾攻撃を行ったのか その1

英文ブログで、日本人が真珠湾攻撃についてどう感じているかを書いたところ、「日米交渉中だったのに、そもそもなぜ真珠湾攻撃を行ったのか」という質問コメントがつきました。きちんとお応えしたいところですが、実は私もよく知らないので、本を読んで調べ…

統合失調症の遺伝子はなぜ残っているのか、虐待の影響を受けやすい子とそうでない子がいるのはなぜか

(2018年2月10日更新)前回に引き続き、印象深かったところをメモ。 統合失調症の遺伝子はなぜ残っているのか 統合失調症は、世界中どの民族でも同じくらいの頻度(1%)で発生する。 これは特別で、遺伝子に影響される多くの病気は、一部の民族に特有である…

ベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」

ナショナリズムについて考えようとしたときに、この本がいろんなところで引き合いに出されていたので読んでみました。ただ、あまりにたくさんの情報が詰め込まれていて私の頭にはオーバーフロー気味だったので、ものすごく乱暴に単純化した上でメモします(…

障害者が実刑判決を受けやすい理由 - 山本譲司「累犯障害者」

知的障害者は「犯罪を起こしやすい」のではなく「実刑判決を受けやすい」、聴覚障害者への教育の問題等、まったく知らなかった世界を教えてくれる本。

経済が早期に発展した国、遅れてキャッチアップした国、なかなか伸びない国の違いは何か - ウィリアム・バーンスタイン「『豊かさ』の誕生」(第2,3部)

第1部からの続きです(点線部分は、正確な引用ではなく、よしてるによる要約です。)。この本の第2部では、経済が早期に発展した国(イギリス、アメリカ)、遅れてキャッチアップした国(フランス、スペイン、日本)、なかなか伸びない国(イスラム諸国等)…

マグナ・カルタはなぜ影響力を持ち続けたのか - ウィリアム・バーンスタイン「『豊かさ』の誕生」(第1部)

1820年頃はなぜ人類史において特別なのか 1820年前後は、人類史において特筆すべき時期。なぜなら、それまでは経済成長はあってなかったようなものだったけど、その時期から急激に経済が成長し始めたから、なのだそうです。この本の第1部では、なぜそれが古…

ブラッド・ダイヤモンド

[物語]アフリカのシエラレオネ共和国。村を反政府軍RUFに襲われ家族と生き別れになったソロモンは、RUFのダイヤモンド強制採掘場で偶然大粒のピンクダイヤを発見し、それを隠すことに成功する。一方、白人の密輸業者ダニーはそのピンクダイヤを手に入れるた…

デイヴィッド・プロッツ「ジーニアス・ファクトリー ノーベル賞受賞者精子バンクの奇妙な物語」

「氏より育ち」とはよくいいますが、本当にそうなのか。これまでここで取り上げたシンガポールの政策や「ヤバい経済学」のメモからは、「育ちより氏」の側面が強調されていたようにも感じます。もうちょっとこのことを掘り下げて知りたいなと思っていたとこ…

フィリップ・ゴーレイヴィッチ「ジェノサイドの丘−ルワンダ虐殺の隠された真実」(下)

ルワンダでの虐殺を描いた上巻に続き、虐殺後のルワンダを綴った下巻。虐殺に荷担した人々が逃亡先の国外からルワンダ国内に戻ってきて、生き残った人々とまた隣り合わせで(つまり、自分の家族を殺した人間がすぐ近くに住んでいる)暮らしているという状況…

フィリップ・ゴーレイヴィッチ「ジェノサイドの丘−ルワンダ虐殺の隠された真実」(上)

ルワンダの死亡率は、ホロコースト中のユダヤ人のほぼ3倍に達する。これは広島と長崎への原爆投下以降、もっとも効率的な大量虐殺だった。 映画「ホテル・ルワンダ」を観て、なんで同じ国の人同士でこんな虐殺が起こってしまったのかが気になったので、読ん…

ホテル・ルワンダ

ルワンダの虐殺については話では知っていたけど、映像で観ると受ける印象はまったく違いますね。言葉を失いました。残虐なシーンは最小限に抑えられています。だからそこからショックを受けたわけではありません。彼らも、私たちとさして変わらない生活をし…

朝日新聞特別報道チーム「偽装請負−格差社会の労働現場」

AさんはB社で働いているけど、B社の社員ではありません。その場合、労働形態として考えられるのは二通りあります。ひとつは、Aさんが人材派遣会社C社の派遣社員であるケース。この場合、AさんはB社社員の指揮命令の元で働きます。しかしB社の職場が製造現場…

現代の戦後観は60年代に発明された-「小熊英二「<民主>と<愛国>」第三部(1960年代以降)・結論

第ニ部からの続きです。 高度成長期 ・高度成長の進行とともに、生活の安定をもたらしてくれる「日本」への信頼と安心が、無自覚的なナショナリズムというかたちで定着しつつあった。NHK放送世論調査所の調査「日本人と西洋人の優劣」に対し、「日本人が優れ…

戦後民主主義が「欺瞞」と思われたきっかけとは-小熊英二「<民主>と<愛国>」第二部(1950年代)

第一部からの続きです。 教育界 ・戦時中、教育者は生徒の模範であらねばならないという意識は、彼らを当時の規範に従わせる要因となった。そのため彼らは、他の学問分野に比べ、戦争協力に巻き込まれる可能性が高かったようである。・戦後の教育学者の中か…

新憲法制定時、最大の反対勢力は日本共産党だった-小熊英二「<民主>と<愛国>」第一部(1940年代)

戦後日本の思想・言論の潮流と、それに基づく言葉の意味の変化(同じ言葉でも、時代時代によって意味が違う)を、膨大な資料をもとに明らかにしていっているこの本。前回読み始めてからまた2年ほどほったらかしにしていたのですが、このゴールデンウィークに…


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