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本多裕「ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎」

ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎 (Hot‐nonfiction)

毎日昼寝をしないとその後はふらふらになってしまうほど、日中の眠気をよく感じます。だから、このナルコレプシー、つまり日中の耐え難い眠気を感じる病気には関心があり、以前からちょくちょく調べていました*1。妻がそのことを知っていて、図書館に寄ったついでに借りてきてくれた本がこちら。

内容はやさしく、ナルコレプシーの特徴や病気としてどういうふうに認知されていったかの歴史、研究の歴史、治療法など、網羅的な構成になっています。ナルコレプシーがどんなものか知るにはよくまとまっていると感じました。ただまあ、ちょっと「研究者サイド」の視点が多いかな。論文の発表順の話などが少し目立つので。丁寧な語り口調なのでいやみはありませんし、患者サイドの視点ももちろんあるので全体的には好印象なのですが。

今までに知らなかったことをいくつかメモしてみます。

・ナルコレプシーは遺伝で決まるが、一卵性双生児の研究から、遺伝子をもっていても発症しないケースもある。発症するには、睡眠不足や強いストレスなどの環境因子も関係しているようだ。

・遺伝で決まるので、人種間でも発生率に差がある。もっとも多いのが日本人で、少ないのはイスラエル人(ユダヤ人って理解でいいのかな)。その差は18倍。

・2001年に決まった道路交通法の改正の素案段階では、「危ない発作」を起こす可能性のある病気としてナルコレプシーが指定されかけた。これに対して患者の会が国に意見書を提出したことで、具体的な病名ではなく、症状面(設問でチェック)で判断するようになった。

最後のポイントでは、著者のいいたいことはこうでした。「ナルコレプシーは根本治療はまだできないが、薬等で症状を抑えることはできる。だから、病名だけで排除、という考え方は危険。なぜなら、ナルコレプシーは日本で20万人ほどいると推定されるのに、治療を受けている人は数千人しかいないから。要は「病気と気づいていない」ケースが多いことが問題なので、病名ではなく症状で判断すべき。」

何事も、単純な選別や排除は価値がないどころか危険だな、と痛感した次第です。

*1:まあ私の場合は、ナルコレプシーのもうひとつの大きな特徴、つまり「感情が高ぶると脱力発作が起きる」症状はまったくないので、ナルコレプシーではないようですが。