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萩尾望都「恐るべき子どもたち」

恐るべき子どもたち (小学館文庫)

[物語]
今世紀初頭(多分)、フランス。中学生のポールは、憧れの美少年ダルジュロスから石の入った雪玉を当てられたことがきっかけで持病が再発、学校をやめ自宅で療養することになる。姉エリザベートとの閉じられた世界。そんな中、エリザベートがダルジュロスにうり二つの女性アガートに出会い、自宅に連れてくるが・・・

[感想]
いくつもの禁断の意思とその悲劇を、実に格調高く描いているまんがでした。妖しく端正な彫刻の群れを見ているかのような気分。

十代前半から徐々に歳は重ねるものの、「子ども」のままで居続ける姉弟。豪邸の一角には「子ども部屋」が作られる。その異様さ。彼らが姉弟げんかをしたかと思えば、姉の弟に対する思いにはどこか道に外れた雰囲気がある。弟ポールは少年ダルジュロスの女装写真を宝物にしている・・・こういう要素って、俗っぽく書こうと思えばいくらでも書けると思うんですけど、それがまるで何かの様式の一部であるかのように整然と、古代劇のように進行していきます。

内容と絵柄の相性も見事です。その絵も美しいのですが、この作品の美は絵だけではなく、構成、描写、物語、すべての総体として伝わってくるものです。

ジャン・コクトーの原作は未読ですが、萩尾さんのこの作品はこれでひとつの作品として成立しているのではないでしょうか。オリジナル作の独創性も際だった方ですが、アレンジも極めて巧みになさる方だということがわかりました。さすがだと思います。


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