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かわぐちかいじ・藤井 哲夫「僕はビートルズ」(1)〜(5)

僕はビートルズ(1) (モーニングKC)僕はビートルズ(2) (モーニングKC)僕はビートルズ(3) (モーニングKC)僕はビートルズ(4) (モーニングKC)僕はビートルズ(5) (モーニングKC)


[物語]
2010年東京。人気ビートルズコピーバンド「ファブ・フォー」のメンバーが1961年、つまりビートルズレコードデビュー前年の東京にタイムスリップ。敏腕女性音楽プロダクション社長と出会ったポール役のマコトは、ジョージ役のショウを引き連れ「抱きしめたい」を自分たちの曲として発表。その後リンゴ役のコンタも加わり、「ファブ・フォー」のやっていることに反対だったジョン役のレイがついに「ファブ・フォー」に戻ろうとしているころ、リヴァプールの本物のビートルズたちは・・・


[感想]
この作品を週刊モーニングで断片的に読んだときには、アイデアは面白いかもしれないけどビートルズを軽く見てるんじゃないかという印象でした。ビートルズを愛しているはずのコピーバンドのメンバーがなんでビートルズの曲を自分の曲にしてしまうんだ。だいたいビートルズの魅力って曲だけじゃないし(曲だけ先に発表してもそれだけじゃビートルズにはほど遠い)。

しかし単行本で5巻一気に読んでその印象は変わりました。まず、マコトがビートルズの曲を自分たちの曲として発表する理由。彼は、ビートルズの曲が本物のビートルズに届けば彼らはそれ以上の曲を創ってくれるとの期待のもとにそうしていたのです。私個人はマコトのやっていることには疑問を持ちますが、それでも彼の言う「ビートルズの新曲」はたしかに聴いてみたい。

それに、いろんなところで、作者がビートルズにまつわる本当のエピソードや、当時の東京についてよく調べていることがわかりました。例えば、プロダクション社長が渡英する際のエピソードはビートルズを取材した星加ルミ子さんのそれを「引用」していますし、当時の東京の風景、これは私も本物を知らないのですが、その描き込みの緻密さからしてかなりの下調べをした結果だと感じられます(それだけに、ポールが61年までに創っていた「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」を61年に発表している点が残念。本物に訴えられる可能性があるからです。あとビートルズの曲をファブ・フォーが発表する順番が実際のリリース順とかなり異なるのも違和感ありです。)。

何よりこの作品が面白いと感じたポイントは、創造と模倣のせめぎ合いを描いているところです。レイがマコトに対して語ることば「演奏やしぐさ ミストーンさえも完璧にコピーできたとき 本物のビートルズから最も遠い位置に立っているんだ」にはそのエッセンスが凝縮されています。コピーバンドのアイデンティティという直接的な命題はもとより、何かをつくりだすとき誰もが経験する「憧れへ近づこうとする模倣」と「オリジナリティ」の境目はどこにあるのかという広い問いにも関わる、非常に興味深いテーマと言えるでしょう。

もうすぐ6巻が発売ですが、作者の想像力がどれくらいの「オリジナリティ」を見せてくれるのかが楽しみです。

(追記:全巻読んでの感想は↓に書きました)


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