1950年代に手塚治虫、藤子不二雄、赤塚不二夫、石森章太郎などそうそうたるまんが家たちが住み、お互いを切磋琢磨したアパート、トキワ荘。子どもの頃から行ってみたいと思っていたその場所に行ってみました。
トキワ荘そのものは残念ながら1982年に取り壊されて今はもうないそうですが、同地にはモニュメントがあり、また最近は記念館のような施設「お休み処」もできたとのこと。どんなところかな。
施設で休憩してモニュメントを見る・・・それなら30分程度かなと思っていましたが、実際にはこの街に2時間半いました。トキワ荘が今はないのに何をそんなに時間をかけたのか。何がよかったのか。そんなことも書いていきます。
駅から「トキワ荘通り」まで
池袋から西武新宿線で一駅、椎名町駅。トキワ荘の最寄り駅は他にもありますが、今回はこの駅を起点にしました。
椎名町駅。
で、改札を出て右側(南口方面)には・・・
スタジオ・ゼロの展示(時期によって展示は変わるようです)。
スタジオ・ゼロはトキワ荘にいた漫画家たちが設立したアニメスタジオ。駅を降りていきなりこんな展示があって、いやがおうにも盛り上がります。
さらにこの展示に向かって右側の階段にこんな看板が。名作まんがのキャラクターが一堂に会しているのを見て、改めてトキワ荘ってすごい場所なんだなと感じ入ったり。
駅を下りてすぐ、駅の壁に地図が。
この地図もよくできてはいるのですが、やはり散策するには事前にスマートフォンなどで地図を用意したほうがよさそうです。その地図がこちら:https://www.toshima-mirai.jp/tokiwaso/area/index.html
ちなみに、この後行く「お休み処」でもわかりやすい大判の地図をもらえますが、その「お休み処」までたどりつくのに地図がいるので、やはり準備はしておいたほうがよいと思います。
駅から10分程度歩くとトキワ荘のあった商店街に差しかかります。
このようなのぼりを目にするとトキワ荘に近づいたんだなと言う実感が持てますし、街を上げて「トキワ荘とその時代」を盛り上げている様子が伝わってきます。
トキワ荘通りお休み処
このエリアに入ってすぐ右手に「トキワ荘通りお休み処」が見えます。
外観。もともとはお米屋さんだった建物を改装したもの。
お休み処に入ると(無料です)、すぐに職員の方が出迎えてくださいました。そしてこの施設の内容について丁寧に気さくに説明してくださいました。
以下、お休み処の内部写真の撮影とブログへのアップは職員の方のご了解をいただいています。
1階
まず入って右手側に漫画家の先生方のサインがずらり。
右端の水野英子・山内ジョージ・よこたとくおの3先生方は実際にトキワ荘に住まわれています。永田竹丸・しのだひでお両先生は「(トキワ荘に住んでいないが)通い組」です。
個人的には、しのだひでお先生(学習まんがなど)や平松伸二先生(「ブラック・エンジェルズ」よく読んだなあ)のサインにしびれました。
左手側には・・・
手塚治虫先生、藤子不二雄先生等のまんが作品や関連書籍が収められています。
図書館のように座ってゆっくり読むことまでできます。
個人的に非常に嬉しかったのは「ブラック・ジャック」の雑誌掲載時の内容がそのまま読めるファイルもあったこと!週刊少年チャンピオンから「ブラック・ジャック」の部分だけ切り取ってファイルしているのです。なんと豪儀な。
なんと単行本未収録作品もここで読むことができました。「ブラック・ジャック病」のエピソードの続きです。雑誌掲載時の切り抜きが全て揃っているわけではありませんが、非常にありがたく貴重な展示です。
2階
2階に上がると、今度は「トキワ荘」そのものを中心にした展示です。職員さんが付き添ってずっと説明をしてくださいました。
まず階段を上ったところに、トキワ荘の兄貴分だった寺田ヒロオ先生の部屋を再現した一角があります。当時の宴会の様子を再現しているなどかなり凝った展示です。
その向かい側には・・・
トキワ荘にいつどのまんが家が住んだかの年表があります。
その他にはトキワ荘の服を復元したジオラマや、トキワ荘の周りがどのような街だったか、そういったものを展示したパネルが並べられています。
予想していたよりもかなり充実した内容でした。
グッズ
1階に戻ります。
奥にはグッズ売り場があります。いろんな商品がありましたが私が買ったものはこちらです。
紙の箱(500円)とクリアファイル(300円、だったかな?)。
紙の箱はトキワ荘を模した箱が簡単に組み立てられるようになっており、かつ中にものが入れられるようになっています。クリアファイルはご覧のとおり。長男が手塚治虫の大ファンでしかも古い作品(「新宝島」など)のファンでもあるので長男のために買いました。
自分のためにはこの冊子を買いました。こちらか提携している近所のお店でしか手に入らないものだそうです。各200円。
- トキワ荘通り写真集・・・トキワ荘やこの街のかつての様子を記録した貴重な写真集
- トキワ荘通りvol.1・・・当時の商店街のマップやお店の記録、水野英子・よこたとくお・丸山昭の3先生方のトークショーの記録。読み応えがけっこうありました。
- トキワ荘通りvol.2・・・寺田ヒロオ先生特集。
それにしても、この「トキワ荘通りお休み処」、無料にもかかわらず予想以上に充実しています。
職員の方にお話を伺うと、この街のある豊島区は東京23区ではあるものの人口が減少しており、この商店街も往時に比べお店も減っている。人を呼び込むための努力をしないといけない。そのような危機感があって豊島区がこの施設を運営しているとのこと。その想いがこの施設の充実につながっているんですね。
こちらを出たときには、街の様子が少し違って見えました。1950年代の空気が感じられるような気持ちになったのです。
トキワ荘跡地
お休み処を出て右に曲がると路地に出ます。
この左手にある中華料理店の看板が、かつてトキワ荘のメンバーが通った「松葉」さん。右側の道がトキワ荘跡地につながっています。まずは跡地へ。
角の案内板
ここ曲がってほんの30秒ほど歩くと・・・
この場所に出ます。日本加除出版という出版社の本社社屋です。
この右端に小さなモニュメントがあるのがお分かりでしょうか。そう、ここがトキワ荘のあった場所なのです。
それにしても会社の敷地の一角ににこのようなモニュメントを置かせてくださるとは、かなり理解のある会社だと思います。こうやって観光客がやってくるのにもかかわらず、ですから。
ところでこの日本加除出版、どんな本を出版しているのでしょうか。調べてみると法令等をまとめた専門書を扱っているようです。で、法令の改正等があった場合改正部分だけを差し替えることができるようになっている本が多いそうで、ページを加えたり除いたりできるので「加除」というようです。
参考:会社案内 会社概要|日本加除出版
モニュメント。ここにトキワ荘があって、手塚先生が、藤子先生が、赤塚先生がいて、編集者が原稿取りに来てたのか・・・
中華料理「松葉」と小池さんラーメン
次に路地に戻り中華料理「松葉」へ行きます。
外観
お店の扉にはまんが道の松原登場するシーンが描かれています。どんなお店なのか、これで一目瞭然。
(藤子不二雄A「まんが道」から引用)
店内。こちらもそうそうたるサイン。(撮影とブログ掲載はお店の方のご了解をいただいています。)
しかしその点を除けば、昔ながらの昭和の街の中華料理屋さん、と言う感じです。
下町とはいえ東京の中華料理屋さんですが、メニューを見ればわかるように料金も昭和設定。
また、写真にはとっていませんが、寄せ書きのノートが数冊あって、漫画ファンの熱心な書き込みがあります。中にはプロの漫画家さんの書き込みも見つけられます。
さぁ、噂の「松葉のラーメン」です。500円。写真の通りまさに昭和のラーメンと言う感じの醤油ラーメンでした。
このラーメンが、あのオバQの小池さんが食べていたラーメンのモデルだそうです。いやあ、感慨深い。そして「ンマーイ!」。正統派の東京のしょうゆラーメン。
まんがとラーメン両方のファンとしては感無量です。
ちなみにこのお店、おかみさんがお一人で店を切り盛りされています。つまりワンオペです。私はビールを注文したのですが、ごめんなさいね、自分で冷蔵庫から取って、とのこと。喜んで。
そんな感じでお店の方は一生懸命やっていらっしゃるのですが、どうしても人手が足りないようで、料理が出てくるのはスローペースです。そのことを理解した上でこちらのお店をのんびり楽しむのがいいと思います。
お客さんたちも、そのことがよくわかっているようで、皆さんおおらかにお待ちになっていた印象です。
ところで、小池さんラーメンのモデルはわかったとして、小池さんのモデルはいったい誰なのでしょう。
それがわかる記念碑にこの後行ってみます。
記念碑、紫雲荘、子安地蔵
記念碑
松葉を出て左に数分歩くと南長崎花咲公園に差しかかります。ここにトキワ荘関連のモニュメントがあります。
公園の角。
トキワ荘メンバーの中に小池さんが!
お名前は鈴木伸一さん。駅に展示のあった「スタジオ・ゼロ」の多くのアニメで作画監督をなさったアニメ会の重鎮です。この方がトキワ荘に来る前に住んでいた下宿先の表札が「小池」だったのだそうです。
記念碑
なんと2020年までにここにトキワ荘を復元することが決定しているそうです。トキワ荘と原寸大の建物を建てそこにミュージアムを置くとのこと。
紫雲荘
今度は、来た道を戻ってみます。トキワ荘の近く、商店街から少し道を入ったところに紫雲荘というアパートがあります。
ここは赤塚不二夫先生が実際に仕事をされていた場所だそうです。このアパートは現存しており、実際に人も住んでいます。
子育地蔵
さらに来た道を戻り、道を1本入ると・・・
子育地蔵。手塚先生の「トキワ荘物語」の冒頭に登場します。「すぐそばには子育て地蔵さまもおいででしたし・・・」
もともとはトキワ荘のモニュメントだけ見てすぐ帰るつもりだったのですが、実際には2時間半以上ここに滞在していました。やはり「トキワ荘通りお休処」と、「中華料理松葉」で過ごした時間が圧倒的に長かったです。
初めて来られる方も、まず「お休み処」で地図をいただき説明と展示を見て当時のイメージを頭の中に描くなり理解を深めるなりして(時間があればまんがも読んで)、それから街を散策するのがよいと思います。トキワ荘の跡地はもちろんのこと、街を歩く愉しさが倍増します。
そしてお昼は松葉で。時間に余裕をもってお食事と雰囲気を味わわれるのがいいでしょう。
トキワ荘のあった街は、そんなふうに時間を過ごすのがいいように思います。
トキワ荘の復元が完了したら、また訪れたいと思います。
関連メモ
手塚治虫
東京の手塚治虫ゆかりの地。
www.yoshiteru.net
息子・眞さんが語る父・治虫氏。
手塚プロダクションによる手塚作品の分析。
手塚るみ子さんと岡村靖幸さんの対談を含む。岡村ちゃんも手塚ファンだった。
夏目房之介さんによる評論。
その他
日本でのまんが産業隆盛の理由を歴史社会学者が論理的に分析。
まんが表現規制の経緯。なぜ規制が起こり、どう克服されたのか。
特に興味深かったまんがについての要約・感想メモリスト。