(「この世界の片隅に」公式サイト応援キャンペーンTwitter投稿用画像より)
物語
広島で育ったすずは、昭和19年、18歳で約20キロ離れた呉に嫁ぐ。寡黙でやさしい夫、出戻りで口はきつい義姉、だんだんと慣れてくる嫁稼業、そして日々厳しくなっていく暮らし。それでも持ち前ののんきさと明るさ、時おり楽しむスケッチで毎日を生きていくすず。
感想
誰かに何かを伝えようと思ったら、声を大きくしたり激しい表情を見せたりすれば逆効果であることは誰もがわかっていると思います。
でも、伝えたいと思うと自然に声は荒げてしまうし表情も厳しくなるものです。そうしないでいることはとてもむずかしい。
しかし、この作品を創りあげた人たちは違います。本当に伝えるにはどうすればいいかを考え抜いた。
そこが本当に素晴らしい。だからじんわりと腹の底まで伝わってくるのです。
その他、特に感銘を受けたところ。
- おそらく膨大な資料をもとにひとこまひとこま丹念に丁寧に描きこんでいる。でも疲れない。情報量がものすごいのにうるさくない。それどころか自然。
- 空襲って、こんな順序で、こんな音で、こんなふうに広がるんだ。DVDでもいいかなと思ってたけどこの点だけでも映画館で観てよかった。
- 「なんでも使って暮らし続けるのがうちらの戦いですけえ」
- 義姉さん(徑子)の帽子。今の私たちと変わらないじゃないか。ということは・・・
- コトリンゴさんの音楽。場面場面を支え寄り添っていた。でも時々素晴らしすぎて「音楽のために場面に数秒集中できない」ことが何回かあった・・・劇伴には「良すぎる」という事態が起こりえるんだな。
- のんさんの声はすずと一体化していて、いい仕事してるなとか感じることがない(くらい自然)
- 終戦の日の1シーン1シーン、ひとことひとこと。これがあるのとないのとで作品の深みは大きく変わる。その重要なシーンをあえてこの短さにしたのが本当にすごい。
- この時代の日本を描いた作品で、自然に今の毎日につながり活力がわいてくるなんて初めてだと思う。
関連メモ
すずより15歳くらい年上だった祖父母が、この映画と同じ時代の経験を少し聞かせてくれました(2000年実施)。