遺伝はどこまで人生に影響を及ぼすのか。「氏か育ちか」問題に関連するメモのまとめです。
これらの本を読んで、結局私はどう感じているのか。
結論から書くと、最初にご紹介している本にある「楽譜が遺伝子、演奏家が環境、演奏が表現型」が一番しっくりきています。
- 遺伝の影響はとても大きい(曲を決めるだけの力がある)。
- 分野によっては、遺伝の影響を育ちでなんとかすることは難しいかもしれない(曲を変えるような演奏はできない)。
- とはいえ、やはり育ちの力も大きい(平凡な曲でも名演奏で輝きを与えることもできる場合がある)。
まあどうであろうが生まれた以上はできることをするしかないわけですが。大槻ケンヂ曰く「それでも、生きていかざるをえない。」 スヌーピー曰く「僕らは配られたカードでやっていくしかないんだ。」
「氏か育ちか」研究結果
例えるなら、楽譜が遺伝子、演奏家が環境、演奏が表現型。音楽は楽譜でかなりの部分が規定されるものの、演奏家によっても大きく変わる。そして、最終的には演奏となって表現される。
- 遺伝の影響が特に大きい能力(形質)ランキング(音楽、数学、スポーツ等)
- 言語能力は遺伝よりも共有環境(家庭など)の影響が大きいが、その他の大部分の形質は遺伝と非共有環境(友人関係など)の影響のほうがより大きい
- 幸せかどうかは80%は遺伝で決まる
- ちなみに身長の遺伝係数も同じ0.8くらいであるが、実際の幸福度は身長と異なり当然変動性がある
- 幸せに影響する行為は感謝の気持ち
相撲の八百長を試合結果データを分析し見抜いた若き学者が、同じくデータ分析で得た結論は:
- 勉強のできる子の親ってどんな人?→「母親が第一子を30歳以上で出産、高学歴・高収入」「育ての親の影響は遺伝子の力には負けてしまう」
- しかし、子供が大人になるころには事態は変わる
アフリカ系アメリカ人をはじめ、西アフリカに祖先をさかのぼる黒人が、短距離走では95%以上のトップタイムを持っている。
- 遺伝子ははじめから設計図を作り上げているのではなく、スイッチによるネットワーク(ある遺伝子の発現を強めると別の遺伝子の発現が弱まり、また別の遺伝子の発現が強まり・・・)の影響が大きい。それならば、そこに「育ち」などの外的要因が入り込む余地があるのではないか、と考えられるからである。
- 多くの双子の研究により、性格は遺伝性を持つものだということが明らかになりつつある。本来的な人格は、家庭環境の影響をほとんど受けない。
- ユーモアのセンスや食べ物の好みにはほとんど遺伝性がないようである。
遺伝子は受精から死ぬまで変わることはないが、生まれた後の状況により、あたかも遺伝子が変化したかのような事象が起こることはある。そういう事象「エピジェネティクス」について。
遺伝を意識して行われた「行動」
シンガポールのリー・クアンユー元首相が、学力の優秀さは遺伝するので、大卒男性は大卒女性と結婚するべきだと発言。大騒ぎになったが、結局彼はそのためのキャンペーンを実行し本当に大卒同士の結婚率を上げた。
アメリカには1999年まで「ノーベル賞受賞者精子バンク」が存在した。しかしその実態は極めていいかげんなものだった。
基本
この本以上に、古今東西の人間が持ち続けていた謎「生物は何のために存在するのか」に明解な答えを与えてくれるという興奮を得られる本はそうありません。それこそが本書の価値だと思っています。
その他
本じゃないですが。