経済学者・暉峻淑子さんによる「対話的研究会」に影響を受けて始めた、5人がリモートで行う「対話会」。
第3回は、2024年の兵庫県知事・斎藤元彦氏再選の是非について対話してみました。
※2025年2月9日におこなったので、参加者の意見はその時点でのものです。
世間の主な意見
いつものように、対話の前に、支持・不支持双方にどんな意見があるのか、おもなものを整理してみました。
| 支持者の主な意見 | 反対派の主な意見 |
|---|---|
| 既得利権と戦う改革派の元知事が評価され再選されたことは望ましい | パワハラ等の問題のある政治家の再選は望ましくない |
| マスコミによる元知事についての一方的なネガティブ報道に対しNOを突き付けることができた(報道のあり方に一石を投じることができ意義があった) | SNS上の対立候補についてのネガティブキャンペーンにより対立候補が一方的に不利な立場に立たされたため、公正な選挙とはいいがたい |
| 多くの有権者が自主的に考えることで当初の世論と異なる選挙結果を出せた | 当選を前提としない立候補者による「支援」は有権者の民意を適切に反映しないため問題 |
参加者の意見
※参加者の仮名は、各回の意見表明順に「A・B・C・・・」と機械的にふっています。つまり、以前の対話会のAさんと今回のAさんは同じ人とは限りません。
Aさん(兵庫県在住・女性)・・・支持しない
- SNSで支持が拡散して当選したが、人は「乗りやすい」のだなと怖くなった。
- 生徒(Aさんは学校教員)も「斎藤さんは正しかった」と熱心に言っていた。SNSは怖いと思う。
- パワハラで人が亡くなっているということも支持しない理由のひとつ。
よしてる(兵庫県在住・男性)・・・支持しない
- 前提:私はお金に細かい、はっきり言えばケチな人間なので、毎回、選挙でだれに投票するか考えるときには、国・自治体への自分の納税額を計算し「誰にXX万円を託すのか」を考えてしまう。
- 今回もざっと計算してみたが、兵庫県からは年間XX万円徴収されていることがわかった。これくらいの金額を使った(払わされた)のであれば、ある程度の時間はかけて検討し、少しでも納得のいく先に投票したい。
- 一方で、兵庫県予算でもっとも多く配分されているのは商工費*1(中小企業対策や観光振興)であり、これはもちろん重要な分野だが自分と家族との直接の関連はあまり強くない。かつ、兵庫県から徴収されているのは全納税額の18%程度(私の場合)。なので以下は、市政選挙や国政選挙(どちらも兵庫県より大きな額を徴収されている)に比べると踏み込みが甘い面もあるとは思うが、検討した結果を発言します。
- 自分の結論:斎藤知事には税金をまかせたくない(再選されてほしくなかった)
- 理由:改革意思と能力はあるかもしれないが組織(特に人)を動かす資質に難があるように見える。なので結局改革(をやっているとしても)も頓挫するのではないか。車に例えればエンジンは優秀だがタイヤに難がある、というような感じ。
- そう考えるようになったきっかけ:(今回の知事選挙前の情報は、マスコミ・SNSともに情報が適切に整理・検証されているように感じられなかったので、斎藤氏についてのマスコミ等の情報は本人が認めた内容に絞って確認)
- 「20m歩かされた時に強く注意した(知事本人の説明:『20メートル歩かされたことに対して注意をしたというよりも、円滑な会場入りのための経路が確保できていなかったことに対する注意だったのです。』*2)」・・・これがパワハラにあたるかどうかは別にして、このような言動をする人物の性格・傾向はある程度想定できるのではないか。
- これまで本件に関連して亡くなった方への斎藤氏の発言についても、大組織のトップとしては、もう少し配慮のある発言ができたのではないかと思う(例:「道義的責任が何かわからない」)。
- 上記の他にも、できるだけ一次情報に近い情報として、複数の兵庫県職員による斎藤氏評を、その職員さんたちとのつきあいがある私の複数の友人(ともに30年以上のつきあい)から聞いた(つまり一次情報ではなく二次情報なのだけど)。
- それによると、(兵庫県職員が働く)現場の負担軽減を訴えても相手にしてくれなかったことがあった、との話があり、その複数の職員が共通して斎藤氏を支持していなかったので「人を動かす資質に難がある」という推測が自分の中で強まっていった(組織を改革するなら現場の心をつかむことが重要だが、それができていない)。
- 以上の積み重ねがあったので、県議員・兵庫県内の市長たちからの反発*3が前例のない規模になったとき「よっぽどの利権を奪われたくないから」なのか「よっぽど人望(信頼)がないから」なのかどちらなのか? → 後者なのではないか、と思うようになった。
- 上記のほか、(西播磨県民局長の)公益通報*4に対して告発されている本人が問題ないと判断したことも、(いくら弁護士に相談したとはいえ)大きな問題だったと考える。
- なお、知事選におけるマスコミ(いわゆるオールドメディア)の報道はたしかに一方的で、斎藤氏に対して公平だったとはとても思えず、これはこれで問題。
- しかしマスコミ以外の情報も真偽不明のものが多かったと思う。特にSNSは、ただ画面に流れてくるだけでも、一応自分で1回は検索したりした結果ではあるので「自分で調べた」という気になりがち。そのことで「自分で重要な情報にたどり着いた」という錯覚を起こしやすいような気がする。そういう危険性をはらんでいると思う。
- 斎藤氏が無能な人とは思っていない。努力家でもあると思う。その点で、やや歯切れの悪い意見になったかもしれないが、ある研究者の方が「調べれば調べるほど断言できることが減っていく」とおっしゃっていたことを思い出す。あまりわかりやすい答えは疑ったほうが適切なのかもしれない(それはそれでエネルギーが必要なことではあるけれど)。
Bさん(兵庫県以外の関西在住・女性)・・・支持しない
- 告発した人への対応がよくないから。
- SNSの情報も裏がとれない。
- (疑問)「SNSに書かれている情報は真実だ」というのが常識になっているのだろうか?
- →(疑問に対する意見)エコーチェンバー*5があるからというのと、実際は受動的に情報に接しているだけでも「自分で調べた」と錯覚しやすいから、というのもあるのでは。
Cさん(関西以外の地域に在住・女性)・・・事実がわからないので支持・不支持はない
- 関西の人はこの再選をどう思っているのか知りたくて対話会に参加した。
Dさん(関西以外の地域に在住・男性)・・・事実がわからないので支持・不支持はない
- 斎藤氏が当選したんだ(と驚いた)というのが正直な感想。
- 兵庫県民の二人(Aさんとよしてる)に訊きたいんだけど、斎藤さんになって何が変わったの?
- Aさん:変化は感じられない。
- よしてる:暮らしの面ではっきりわかるような変化はない。前述したように、兵庫県の予算でもっとも配分が大きいのは中小企業対策や観光振興(自分の生活への直接の影響が少ない)、ということもあるのかも。その次に配分が多いのは教育費なんだけど、(よしてるには高校生と中学生の子どもがいるが)これも正直実感はない。唯一感じたのは、地域電子マネーの「はばタンPay」のポスターに斎藤さんの顔写真が載るようになって「出たがりの人やな。まあ選挙対策としては賢いやり方かも」と思ったくらい。

兵庫県庁舎2号館 案内板。知事室は6階(よしてる撮影)
意見表明のあとの対話
地域による違い
- 斎藤さんの当選にSNSが大きな力を果たしたのなら、兵庫県のなかでも都市部(SNS利用率が高そう)で支持されたのかな?地域別のデータはないかな。
- (その場で検索して)地域ごとの得票率の伸びを調べた記事がある:斎藤元彦氏の得票率、低支持だった地域で増加 兵庫知事選データ分析 [兵庫県] [兵庫県知事選]:朝日新聞
- これによると、神戸市を除けば、都市部よりも地方部(特に日本海側)で得票率を伸ばしていることがわかる。
- 意外!どうしてなんだろう。
- 兵庫県は、本州では青森と山口という「先端」を除けば、唯一日本海と太平洋(瀬戸内海)の両方に接している県。もともと日本海側と太平洋側では気候も文化も気質も違うといわれているが、その両方がある。当然、今回の選挙においても、南部と北部ではいろいろ違うんだろうね。具体的に何が違うのかはわからないけど・・・
年代による違い、投票理由
- 年代別では、やっぱり若い人の支持が強かったのかな。
- (その場で検索して)この記事のあとのほうに世代別投票先のグラフがある:県民に聞く…斎藤氏に投票した理由は?再選を果たした斎藤前兵庫県知事の明暗を分けたSNS支持 取材した鈴木エイト氏が感じた“違和感”とは【news23】 | TBS NEWS DIG
- 「30代までの若い世代の多くが斎藤氏に投票しています。40代や50代も半数以上が斎藤氏に投票している」とあるね。
- これは推測どおり。
- その下に「選挙で何を重視?」というグラフがあるけど・・・
- 1位が「政策公約」、2位が「人柄・イメージ」!なんで2位がこれなのか・・・
- 支持する人たちからしたら「選挙戦を一生懸命闘っているまじめな人」「改革を推進する熱心な人」っていうことなのかな。
- さらにその下には「斎藤県政 評価する?」ってあるけど、「大いに評価」「ある程度評価」あわせて75%。
- 何を評価したんだろう。さっきDさんが「斎藤さんになって何が変わったの?」と聞いてくださったのはすごく意味のある質問だったと思う。ここにいる兵庫県民二人は「わからない」のだけれど。
- 県政って住民の生活にすぐに影響が出るものって少ないと思うんだけど、実際は県政の影響を受けている人が多いってこと?それともSNS等で出ていた「改革の実績」をそのまま評価したってことかな。
ほかの「対話会」
関連メモ
この「対話会」はこの会のイベントのひとつです。
注釈
*2:兵庫県/知事記者会見(2024年6月26日(水曜日))
*3:県内市長会有志の22市長が対立候補だった稲村氏を支援表明したことは刑事告発・受理されています:https://www.sankei.com/article/20250205-6C6OS5CHBNP35DPHSBFNPI5HP4/
*4:公益通報にあたらないと考え直した弁護士の方もいらっしゃるようです:公益通報者保護法・兵庫県知事再選で振り返り | 桑原法律事務所|福岡市博多区