きっかけ
毎年、一人になって人生について考える旅を行っています。今年はいつどこに行こうかなと思っていたら、仕事の予定が変わり、急に休める日が出てきました。そういえば関西にずっといるのに高野山には一度も行ったことがないな、宿坊なら考え事にうってつけではと思い探したところ、よさそうなところ(詳細は後述)に空きがあったので予約を入れ出かけました。
大阪から高野山へ
南海なんば駅から特急こうやに乗り込みます。特急料金がかかりますが、「乗り替えなし・約1時間半の道中立たなくていい」はやはりありがたい。
シートカバーもらしい感じで。ビールをあおって昼寝。
一眠りで俗界と高野山の結界である極楽橋駅に着きます。もうこの時点で下界と隔絶された感はけっこうあります。
ロープウェイまでの乗り換え通路にこんな趣向が。思わず足を止めました。
ロープウェイ。
高野山駅に着きました。別世界感が漂います。標高867m。下界より少し涼しいです。この日はそうでもなかったですが、夏場だと下界より5度ほど低いようです。
高野山駅の和洋折衷のこのデザイン、JR奈良駅を連想しました。
ここから高野山のお寺や宿坊・お墓のあるエリアまではバスで(道路がバス専用なので徒歩は不可)。中心地の千手院橋まで約10分、宿のある場所まで約15分。
参考:
宿坊へ
宿坊最寄りのバス停は「苅萱道(かるかやどう)前」。
苅萱堂。実の親子がそれと知らずに修行をしていた逸話で有名だそうです(知らなかった)。
こちらに向かって右手の坂道を上ってすぐの場所に、今日泊まらせていただく上池院があります。
上池院
マスコットキャラこうやくん
入り口を入るとすぐお坊さんが事務をされているカウンターがあり、そこでチェックイン、部屋に案内いただきます。
部屋。きれいです。一人一泊夕朝食付き14,000円(夕食は後述しますが一番品数の多いもの。これより安い設定もあります。)
備品。テレビもありますが17インチくらい?で小さめ。
部屋のトイレ。ウォシュレットです。
1階には大浴場があります。その脇の自販機には般若湯がちゃんとありました。
夕方の散歩
部屋に入って早速くつろぎ、考え事を始めます。思うところを少しメモにとったりして約1時間。体を動かしたくなったので近所を散歩しました。
このあたりは自動車が頻繁に通る道はここだけ。バスもここを通ります。
上池院の庭もきれいなのですが、別のお寺にも行ってみたくなり、苅萱道の近くにある清浄心院へ。
よく手入れされた庭です。
さらに少し行くと、多くの魂が眠る奥之院ですが、ここは明日にとっておくことにしました。
宿坊に戻って大浴場に。温泉ではありませんでしたがあったまることができました。
夜
夕食
18時過ぎにお部屋まで持ってきていただきました。
精進料理と思いきや、もっとも品数の多いこのコースはそうではないとのこと。基本は精進料理だけど、茶碗蒸しにエビがあったり、魚をつかった料理が少しあったりでした。まあ私はそれでもまったくかまわないのですが。なにはともあれ、味がはっきりしていて(やや塩気が強かったかも)おいしくいただきました。なかなかのボリュームで満足。
そして般若湯は日本酒とビール両方を。部屋食なので、料理とともに自分のペースでゆっくりいただけたのが幸せ。
人生について考える(ゼロ秒思考)
満腹になりしばし休憩した後、般若湯とデザートをいただきながら、この旅行の第一の目的である「人生について考える」にだんだんと集中していきました。日々の生活、家族、親、仕事、身につけたいこと、なくしたいこと、変えたいこと、健康のこと、将来のこと、生きている間にしたいこと、そして今しかできないこと・・・そして今日から、明日から、一週間以内に、一ヶ月以内に、この夏に、今年の間に何をしていくのか。
今回は、赤羽雄二さんの「ゼロ秒思考」を参考に考えを進めていきます。
参考:ページが見つかりません。 | ブレークスルーパートナーズ
やってみると、たしかにこれは考え事を整理しまとめていくのによい方法だと感じます。それに、頭の中を何度もぐるぐるするやっかいな思い、時にはそれがぐるぐるする度にひっかかりを感じたり傷がうずいたりするような考えをざくざくと書き出していくのは、単純に気持ちよいです。
こんな感じでメモを30枚くらいとりました。
やはり一人で静かな宿に籠もるのは、こういう考え事にはうってつけですね。
気がつけば23時に。心地よい疲れとともに眠ることができました。
翌朝
朝のお勤め
部屋から見える上池院の庭。
いい天気の朝です。6時半からの朝のお勤めは、上の写真の左側に見える本堂で行われます。
お経の後、短い説法を伺います。この日は、弘法大師の「物の興廃は必ず人に由る、人の昇沈は定んで道に在り」という言葉について。世の中をよくするには、人が学ぶ姿勢を持ち成長することが不可欠。弘法大師様はそのために種智院を創られた。現代の我々も、大人になってから学ぶことはいくらでもできる。そのようなお話で、「人生について考える」この旅にぴったりのお話でした。それに、本で読むのと違い、お坊様のお声は腹に染みこみますね。本堂の音響効果、お坊さんの発声、何よりお話のされ方でそう感じるのかもしれません。
参考:http://www.musubidaishi.jp/message/2013/07/post-77.html
お経と説法で合わせて30分。正座がしんどい人のための椅子もありました。
朝食
朝食もボリュームがありましたし、おいしかったけど塩味が濃いのも夕食に似ていました。
その後は、くつろぎながら10時のチェックアウトまで、昨日の「ゼロ秒思考」で書き出した手書きのメモをBluetoothキーボードでiPhoneにまとめていきました。
宿坊・上池院 - 一般の旅館と比べてみると
以上、上池院ではお世話になりました。ここまでのメモだと、従業員の方がお坊さんであること以外は宿坊といってもきちんとした旅館との違いがわからない感じですが、一泊してみるとある程度の差異を感じました。以下の通りです。
宿坊ならではの、旅館よりよかった点
- 静か。夜も自動車等の音も含めほぼ聞こえなかった。他の宿泊客の方も、宿坊だからなのかたまたまだったのか、大変お静かでした。
- 朝のお勤めに参加できる
静かなのは、この旅の一番の目的「人生について考える」にぴったりでした。
旅館同様によかった点
- 食事がなかなかおいしく(ただし塩気がやや強い)、ボリュームもたっぷり
- 部屋食
- ふとんもお坊さんが上げ下ろし
- WiFi完備
お坊さんは、旅館の仲居さんのような訓練された愛想はないものの、丁寧で実直な方ばかりでむしろそちらのほうが落ち着きました。
旅館と少し違う点(人によってはデメリットになる点)
- お風呂は17~21時のみ。朝風呂なし
- 門限22時
- 朝は6時に起こされる
- 部屋鍵なし(金庫あり)
以上の点は、私にはどれもデメリットにはなりませんでした。朝風呂はなくてもいいし、夜もずっと宿坊にいるので門限も問題なし。朝はお勤めに出るので起こしてもらえるのはありがたいくらい。貴重品も金庫があれば安心。
奥之院
チェックアウト後、荷物を宿坊に預けて徒歩10分ほどの奥の院へ。片道2kmほどの墓地です。
お墓
奥の院入り口。
このような厳粛な自然の中を歩きます。高野山全体に言えることですが、他の観光地に比べ欧米からの外国人旅行者(白人)の姿がより目立ちます。
予備知識なしで伺ったのですが、あらゆる種類のお墓があるのですね。一般家庭のお墓の他に、
先の戦争で亡くなられた方々の追悼、
企業のお墓、
そして震災の追悼。
歴史上の人物のお墓も数多く・・・
大河ドラマ「真田丸」の登場人物だけでもこれだけの方々が眠っていました(写真に写っているものの他にもありました)。分骨がほとんどでメインのお墓は別にありますが、それにしても圧倒されました。
日本(と、日本に関わった外国の方)の歴史そのものを受け止めている場所のように感じました。
奥之院弘法大師御廟
約2kmのほとんど平坦な道にもかかわらず、2時間半ほどかけて弘法大師が今もいらっしゃるという奥之院弘法大師御廟に近づいてきました。
ここから先は撮影禁止。
御廟は、厳粛で美しい反面、うまく言えないのですが、おおらかで開けた雰囲気もありました。お堂の向こうにある御廟に近づいてお祈りができるようになっている仕組みからも、そういった空気を感じることができました。
金剛峯寺、根本大塔
その後は宿坊まで戻り荷物を引き揚げ、バスで千手院橋へ(数分)。ここの交差点の角にあるコインロッカーに荷物を預けて、高野山の中心的存在に伺います。
千住院橋のあたりが高野山で一番お店が多いところだと思います。とはいえ、このとおり落ち着いた雰囲気です。
ここから徒歩数分で総本山金剛峯寺へ。
金剛峯寺。質素で規模も大きくないところに、逆に惹かれました。
さらに10分ほど歩いて・・・
高野山のシンボル、根本大塔。
近くにある蓮池。このあたりは人もそれなりにいますが、全体的に静かな雰囲気につつまれていました。
この後、千手院橋からバスで高野山駅に戻り(約10分)、ケーブルカーと南海電車で下界に戻りました。
はじめての高野山、その印象
高野山を初めて訪れた印象は、まず聖域とはいえ排他的な雰囲気がなかったこと。とはいっても普通の地方の町とはまったく違う、やはり特別な世界です。そして、宿坊という旅館とは少し違った空間で考え事にふけることができ、日本の歴史の縮図のような場所を訪れることができるという点も含め、高野山は、他のどこにもないここだけの時間を過ごせる場所でした。たまたま私が関西在住ということもあり、訪れるのに費用も時間もそれほどかからずにこのような場所に来ることができたのもありがたかった。急に決めた旅先でしたが、今回も「人生について考える」旅をよいものにできたのは、この場所のおかげだと感じています。
関連メモ
「人生について考える旅」で訪れたところです。