本書を、犯罪者処遇だけではなくそれ以外の仕事や教育にも活用できないか、そういう視点で読んでみました。
本書のメッセージはタイトルの通りです。
仕事でミスを起こした同僚・部下への指導の最大の目的がミスの再発防止だとするなら、私も著者の考えにかなり近いです。
では、反省させないとするなら、どうすればいいのでしょうか。
問題行動が起きたとき、ひとまず叱ることは控え、本人が問題を起こすことに至った理由に耳を傾けることです。
このプロセスを経ないと、本人が罪を認識し再犯しないよう努力することが難しくなるそうです。「7つの習慣」のひとつ、「理解してから理解される」を思い出しました。
もう一つ、大いに参考になったのは以下の内容です。
再犯しないためには、「二度と事件を起こしません」と固い決意をすることよりも(固い決意も必要ですが)何より人に頼って生きていく生き方を身に付けることです。人に頼って生きていくことができれば、彼らは「人」の存在の重要性に気づくことが理解できます。
これは仕事にもあてはまりますね。特に組織で仕事をする場合、人や組織との連携(=人に上手に頼り頼られる)なくして望む結果を出すことは困難です。
そして「人に頼らない」ことは、他の弊害も生み出します。次の指摘にはうならされ、納得させられました。
自分のなかに、正しいと思って刷り込まれた価値観が多ければ多いほど、他者に対して「許せない部分」が増えていきます。・・・「一人で頑張ること」とが大切だとたたき込まれた者は、「一人で頑張れず途中であきらめてしまう人」や「他者にすぐに助けを求める人」を目にするとイライラします。
関連メモ:
本書は、全体的に論の主張の仕方にちょっと我田引水的というか声が大きいというか、そういう印象を受けました。しかし記述内容は興味深く、また、犯罪者処遇の世界以外の仕事や日常生活・教育にも活用可能なノウハウが多く、いわゆる「おもしろくてためになる」本でした。
(追記)あとがき部分のこのデータにも驚きました。無期懲役刑については、実際の刑期は延び続け、人数は増えている。実態は終身刑に近づいていっているのですね。
- 無期懲役受刑者の平均受刑在所期間:2002年23.5年 → 2007年31年10ヶ月 → 2011年35年2ヶ月
- 無期懲役受刑者数:2002年1,152人 → 2011年1,812人