庭を歩いてメモをとる

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坂本龍一 Trio Tour Japan & Korea NHK大阪ホール

教授(ピアノ)、ジャケス・モレレンバウム(チェロ)、ジュディ・ カン(ヴァイオリン)。この3人でのライヴ。同じ3人でのアルバム"Three"はあえて聴かずに臨みました。ですので、どうしても同じ編成(ヴァイオリンだけ別人)の以前のアルバム"1996"との比較になってしまいますが、以下感想をメモします。ネタバレありです。

ひとことで言えば、1996よりとんがっている!例えば「美貌の青空」の終盤のインプロなフレーズ(でもでたらめではなくかっこいい、今までの「美貌の青空」の中で一番好き)、"The Last Emperor"の歌い上げるような情熱性(でもテーマのリピートは省略するなどの研ぎ澄まされ感も同時に)・・・還暦を迎えてますます先鋭化する教授の音楽性に感銘を受けました。焼き直し的セルフカバーなんかとはまったく違う。先にアルバムを聴かなくてよかった。驚けたから。

そしてオーディエンスもそれに呼応していました。大阪でのいつかのライヴで、戦メリのイントロが始まったとたんに拍手した回がありました。戦メリもいいですし、もちろん今回も大きな拍手がありましたが、今回の本編最後の曲となった"1919"の盛り上がりと拍手はそれを超えていたように思います。つまり、アバンギャルドが歓迎されている雰囲気が満ちた空間だったのです。季節柄咳がよく聞こえましたが(これはしょうがない)、でもここ一番のところは静寂で3人の音楽を受け止めているのもひしひしと感じられ、みなさんほんとに教授の音楽が大好きなんだ、と感じられたのもこのライヴをより磨かれたものにしていました。

そういう「さらに」という点でいうと、PAのピュアさというか加工感のなさも素晴らしかったですし、一方で低音が凄いな、さすが生は違うと思ってたら実はチェロは低い音の弦が一本多い特別なものだとの紹介があったりもしました。

新曲についていうと、来年の大河ドラマ「八重の桜」のテーマ。ほんとに「教授が大河ドラマのテーマつくったら」って感じでした。要するにポピュラリティは持たせながらとんがってもいるという。この曲については教授もMCで特別な思いがあることを語ってらっしゃいました。子どものころから大河ドラマの音楽が大好きだった、当時三善晃武満徹一柳慧など錚々たる方々がやってきた仕事、それが自分に回ってきたということで重責を感じ珍しく数ヶ月かかった、とのこと。さらに、主人公八重の生き様に感激して依頼もないのに創ったという「八重のテーマ」も披露。こちらも素晴らしく、激動の人生を荘重さをもって表現した音楽でした。教授は「お蔵入りするかも」とおっしゃってましたがそれはもったいなさすぎます・・・

以上のように大満足のライヴだったのですが、一点だけ、ええそれはないよ!なことが。なんと会場で新譜かツアーパンフを買うと教授との握手券がもらえたのですが、私は会場入りが早すぎて、そして前日の会場でそんなことがあったことも知らなかったのです・・・気がついた時にはどちらも完売。これは残念すぎた・・・

でも会場で"Aqua","The Last Emperor"の、待望の教授本人アレンジのピアノソロスコアを買えたのは大きな収穫。後者はちょうど今別のスコアでピアノの先生に教わっているところなのですが、こちらのスコアで練習しなおすことに決めました。なんといっても教授本人アレンジともなれば気持ちの入り方が違います。他には戦メリ、Parolibre、シェルタリング・スカイがありました。一部500円とお高めですがファンとしては待望の(今までなかったですよね?)本人アレンジですからありがたいものです。

そんな、大いに残念なことがひとつだけあったけど、他は大きく心を動かされた夜でした。 まったく、この方からは目が(耳が)離せません。


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