庭を歩いてメモをとる

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筒井康隆「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」

家族八景 (新潮文庫)七瀬ふたたび (新潮文庫)エディプスの恋人 (新潮文庫)

[物語]
七瀬は人の心を読めるテレパス。自分の能力を人に知られないようにするため、職場を転々と移ることのできるお手伝いさんとなり、様々な家族の内面をかいま見、時には家族関係に変容をもたらす(家族八景)。七瀬は次第に他の未知能力者と出会うとともに、未知能力者を抹殺しようとする組織と対峙することになる(七瀬ふたたび)。一転、高校の事務員となった七瀬は、不思議な少年の存在を知る。その少年の周りには、得体の知れない強大な力が存在しているようだった・・・(エディプスの恋人)。


[感想]
読もうと思ったきっかけは、NHKドラマ「七瀬ふたたび」を一緒に観た妻がこの三部作を買ったから。ちょうど私も、原作はドラマよりさらに人間の負の部分を描いているという話を聞いていて、関心を持っていました。

果たして、「家族八景」では、見事なまでにそれぞれの問題をかかえた家族が次々と登場します。いくつかの家族については、ひどすぎて笑ってしまうくらい。人の心を覗く「楽しみ」を味わってしまいました。一方で、時には家族関係を破壊しようと行動を起こす七瀬に、ドラマ版では感じられなかった邪気のようなものを感じ、興味深かった。

「七瀬ふたたび」はどうしてもドラマとの比較をしてしまいますが、個人的にはドラマのほうが丁寧に物語を構築している気がしました。未知能力者たちを抹殺しようとする組織の存在理由や、未知能力者たち同志の心の通い合いなど。こういうのはどうしても先に接したほうを評価してしまうのでしょうか。

「エディプスの恋人」には、久々に先がまったく読めないわ、謎が明らかになってもその壮大さに唖然とするわで驚かされっぱなしでした。前二作での未知能力者たちの心理描写だけでもすさまじい想像力を駆使しているなと思わされましたが、筒井さんの力はそんな程度にとどまるものではありませんでした。もちろん、エディプス(オイディプス)王の伝説をなぞっただけの話じゃないです。あくまでモチーフの一部を借りているだけなので、タイトルを見て翻案ものかと思うのは損だと感じました。

続編は、これは、ないですよね・・・残念ではありますが。他の筒井作品、何を読もうかな。


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