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ナスカの地上絵はなぜ作られたか - ピーター・ジェイムズ、ニック・ソープ「古代文明の謎はどこまで解けたか」Ⅱ

古代文明の謎はどこまで解けたか (2) 地上絵と伝説に隠された歴史・篇

子どものころ、エジプトのピラミッドやマヤの神殿などの古代文明ものが大好きでした。デニケンの唱える宇宙人飛来説を信じていたあの頃。

その後、そういう古代文明を「ミステリー」ではなく「歴史」として捉えられるようになってからも、唯一「ミステリー」であり続けたのがナスカの地上絵。これを古代の人が作るのはそれほど難しくないってことはわかります。でも、何のために?少なくとも現在はどんな説が主流なの?それを知りたくなって手に取ったのがこの本です。さまざまな「古代文明」「伝説」を客観的に、しかしいたずらに批判的にもならず捉え、これまでの研究結果や説を比較検討しています。こういう本を待っていたんだよな。

で、結論から言うと、結局ナスカの謎は解明されていません。通説もないようです。「宇宙人の滑走路」説は論外として、よく言われている「天体図」説もアウト。地上絵から選び出した186本の線を分析したところ、太陽と月の動きに一致したものは39。これは偶然の一致で期待できる数値の2倍ですが、実は夏至や冬至が2回のヒットとして数えられていたのです。

では、いちばん「あり」な説は?それは雨乞いに使われていたのでは、というものです。地上絵のエリアにある726本のラインが、ほぼ例外なく「山地からパンパに延びている丘のふもと」か、「二つの主要な渓谷とその支流に接するパンパの盛り上がった縁」に沿っているそうです。このことを、ある学者は地上絵のエリアを「降雨を左右する神々との交信に適した地」と考えています。

でも個人的にはなんかしっくりこないです。たしかに、ナスカが降雨がとても重要な意味をもつ地域だってことはわかります(そういえば現地に行ったときもほんとに空気が乾燥していたし、周りに木などまったくなかったですし)。じゃあなんでコンドルや蜘蛛や木の絵が必要なのかよくわからないし。まあ新たなおもしろそうな説の登場を待つとしようかな。


あと、興味深かったのがイギリスのアーサー王伝説について。この本によると、これはまったくの作り話ではないようです。アーサー王の都の名前はキャメロットですが、イギリスのキャドベリーという街は昔キャマレイトと言われており、王の活躍したとされる5世紀には実際に栄えていたこと。5世紀以降、急に「アーサー」という名前が人気になったこと(この本では、20世紀後半にダイアナと名付けられた女の子が増えたのと同じように、と書いています)。同時期にフランスまで出征した王がどうも実在したこと。そんな事実が並べられていて面白かったです。


ちなみに、本筋とはまったく関係ありませんが、人類がいつ頃どうやってアメリカ大陸に到達したかを検討している章で、「東アジアにもコーカソイドがいて、最もよく知られているのは日本の北部にいるアイヌたちである。」という記述を読んでびっくりしました。ええ、モンゴロイドじゃなかったの?マイクロソフト「エンカルタ」には以下の記述がありました。

19世紀末から20世紀前半にかけては、ヨーロッパの知識人の間でアイヌが人種的に白人の系統であるという説を背景にアイヌへの関心が高まり、当時各国で開催された万国博覧会にアイヌがつれていかれた。

ウィキペディアによると、現在はコーカソイド説よりも縄文人近似説が主流らしいです。


そんなこんなで、ナスカの謎は解けなかったものの、いろんな意外な発見があった本でした。そして、わからないものをわからないと書いていたその姿勢が好印象だった本でもありました。


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