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沢井 鯨「P.I.P.(プリズナー・イン・プノンペン)」

P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)

ご紹介下さった方

じぞうさん

紹介メッセージ

去年の夏くらいにリリースされて話題になってたみたいですからもうお読みかもしれませんが、まだでしたらとにかく読んでください。これがデビュー作というだけあって文章力、構成力ともにやや難ありですが、そんなこと気にならないくらいのインパクトがあります。「アジアン・ミステリー」とオビに書いてありますが、無理にカテゴライズすればクライム・ノヴェル+冒険小説、くらいかな。とにかくカンボジアという国のダーク・サイドをここまで活写した作品もないのでは、という感じです。

この小説は著者の実体験をベースにしているということで、多くの読者の興味は「どこまでがノン・フィクションなのか?」というところにあると思うのですが、まあそれはそれとしてまずは一読を。後半の面白さは特筆ものです。(2001年9月23日)

管理人の感想

シンガポールへ遊びに行く飛行機の中で、この本を読みました。機内の6時間が、まったく退屈ではありませんでした。

ひとことで言えば、カンボジアでいわれのない罪で投獄された男のその後、という物語です。しかし、この作品で描かれているカンボジアの腐敗ぶりには戦慄を覚えるほどのものがあります。しかもそれが作者の実体験に基づいている(どこまでがほんとなのか、という問題はあるにしても)ものです。ですから、この本を読んでいる間は、単なる脱獄物語を超えた興奮を感じていました。

加えて、個人的に非常に興味を持った部分があります。なぜポル・ポトが、自国民の3分の1を虐殺するに至ったかという理由について述べられているところです。この本にも書かれているように、例えばヒトラーのユダヤ人虐殺は、その行為・思想は許されるものではないにしろ、そこに至った理由にある程度の筋道があります。ところがポル・ポトのやったことにはそういった筋道がありません。単に自分の国や国民を破壊しただけに見えます。なぜそんなことをしたのか?これは以前から抱いていた疑問だったのです。この本で述べられている説は、完全に納得できるほどのものではないにしろ、なかなか興味深いものです。

この本を読み終わりシンガポールに降り立って、そのクリーンで整った様子を目の当たりにして、この本で描かれているカンボジアとの歴然とした差を感じました。ひとえに、この差をもたらしたのは政治の差だということができると思います。この本からは、間接的にではありますが、政治の重要性というものをも実感させられました。

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