ロウアー・スローター
バイブリーから、舗装されていない田舎道なども通りつつ30分でロウアー・スローター(Lower Slaughter)に到着。実は私たち、バイブリーを観た後は「もし時間があればどこか見ていこうか」くらいの気持ちしかなく、ここも「ついでに」訪れたにすぎませんでした。ところが・・・
まず、どの村よりも落ち着いたその雰囲気に圧倒されました。静寂、と言っていいくらいの静けさ。しかしそれは、寂しさを伴うものではありません。人がほとんどおらず、人や動物の声や音もわずかしか聞こえてこないのですが、家々には生活のにおいがあり、さびれた風情がまったくないのです。
夕日に照らされたロウアー・スローター。
水車小屋がありました。
コッツウォルズの人々は(イギリス人自体がそうなんでしょうが)本当に花が好きなようです。静かでも寂しくないのはこのせいかもしれません。
川に面した通りから少し脇にはいると、小さな新興住宅地のような一角がありました。もちろん家々のスタイルはコッツウォルズのものなので、違和感は全くありません。しかし新しい。その一角を、こんなところに住めるなんてどんな気分だろうと思いながら散歩します。
それにしても静かで、美しい街並みです。美しいんだけれども、生活の場でもあるせいか、地に足がついたような存在感があります。見るために作られたものではなく、まず第一に雨風をしのぎ、家族を守るための場所であることがはっきり伝わってくるのです。しかし、その条件を果たしながらも美しいというのは、街並みの理想型なのではないかと思えてきます。私たちは、川のほとりで一言二言会話を交わしながらも、基本的にはこの村にとけこむように静かに体を休めます。
ついでに来ただけのはずの村が、結果的に私個人としてはもっともお気に入りになってしまいました。ここも有名な村ですから、日中は人々がひしめきあいそれなりの喧噪もあるのでしょう。しかし私たちがここを訪れたのは18時過ぎ。もう団体旅行客は皆無でした。それに加えて、夕日の具合が絶妙で、それが蜂蜜色のレンガをより優雅に映し出してくれたのです。村のたたずまいだけでなく、時間にも恵まれたということなのだと思います。
アッパー・スローター
立ち去るのが本当に惜しかったのですが、日も暮れてきましたので、となりのアッパー・スローター(Upper Slaughter)に向かいます。車で10分もしないうちに到着。
ここは、今までのコッツウォルズの村々と違い、丘の間に集落がある、という感じです。ゆるやかにアップダウンした道に家々があるのです。
村の中には、川に一部がつかった道があります。日本なら橋にしてしまうところでしょうね。なぜこんな状態になっているのかは不明ですが、妙に印象に残った風景です。
イギリスの田舎では、こういう「○○ベリー」系(正式な名前がよくわかりません)のくだものをよく目にします。
パブの夜
アッパー・スローターにいる間に日は本格的に沈みだします。いくら緯度の高いイギリスとはいっても、9月半ばに19時を過ぎればもうずいぶんと暗い。ここで村巡りを切り上げ、ブロックリーの宿に帰ることにします。
今夜は、女性陣も含め、男性陣の宿"The Crown Inn"のパブに直行。かなり疲れているはずなのになぜか全員でダーツを楽しんだ後、飲み食いに。海外を一人で旅するのも大好きですが、1日が終わるとき、こうやって気のおけない友人たちとその日1日を振り返るのはグループ旅行ならではの醍醐味です。
私の頼んだCod(タラ)はちょっと大きすぎ。残してしまいました。店側もそのことはわかっているようで、ウェイターはこれを笑いながら運んできました。
気づけばもう22時。この6人のメンバーで夕食をとるのはこれが最後なので名残惜しい気持ちもあるのですが、今日は1日コッツウォルズを巡って疲れ果てているのも事実。解散することにしました。女性陣を宿まで送るため外に出ると、昨日以上の満点の星空。予想以上に素晴らしかった今日一日をしめくくるのにふさわしい眺めです。昨日同様、男性陣は芝生に寝転がって星空を眺めてから宿に帰りました。