庭を歩いてメモをとる

おもしろいことや気になることのメモをとっています。

三部作の完成 - 小沢健二「春の空気に虹をかけ」大阪城ホール

(2018年5月5日更新。コンサートが終わったので曲名を明記しました。)

f:id:yositeru:20180430070713j:plain


開演前

f:id:yositeru:20180430071130j:plain

快晴で暑いくらいの陽気の中、西日に向かって進んだ大阪城ホール。私にとって3回目の小沢健二のコンサート。

スタンドC5列目、ステージに向かって右側。ステージからは少し離れているけど、ドームのスタンドとは違ってステージが「はるか彼方の別世界」ではないのがありがたいです。

何よりも、椅子があるから座って音楽に集中できそうなのが助かります。前回のzeppはしんどかった。そういう世代なので。


春の空気に虹をかけ

パフォーマンス

めっちゃ歌わせるなあ。

「魔法的」のとき、「ひふみよ」と比べて「知的なエンターテインメント」から「気持ちいいパフォーマンス」へ軸足が移りつつあるなと思ったけど、今回はさらに「いっしょに楽しもう!」なんだなと実感し続けた2時間でした。

何より小沢さんが「ひふみよ」よりも「魔法的」よりもリラックスして楽しんでいた感じなのがうれしくて、こちらも気持ちがほぐれてくるのです。

まあそれでも、少なくとも私の周りのお客さんや私は、大声で歌うというよりは、小沢さんが今ここで奏でている音楽を大切にしたくて見守っているような感じだったけど(それもまたよかった)。かわりに一生懸命手を動かしたり、手拍子をとったり。


満島ひかりさん。聴いていて、ああ、小沢さんにちょうどよかったのだと思います。

満島さんは、女優にしては歌がしっかりしてる。けど、不安定(ファンの方、すみません)。小沢さんも、一番の才能はヴォーカルじゃない。20年前に比べてだいぶ訓練したと思うけど、どうしても不安定なところはある(ファンの方、すみません・・・私もファンだし、あの小沢さんのヴォーカルも小沢さんの音楽の重要な一部ということはわかっているつもりなのですが)。そういう点で、ちょうどよかった。

一方で、お二人は、ステージでの映え具合についてもうまいぐあいにバランスがとれていました。満島さんが、小沢さんより輝きすぎているわけでもなく小沢さんの横で存在感をなくしてしまうわけでもなく。ステージの中心、スターになれる二人。この点でも、ちょうどよかった。

そういえば、小沢さんと満島さんとふたりいっしょに傘に入る演出があるんですが、これが似合う50歳の男性っていったい何なのでしょう。


楽団

楽団が豪華。贅沢なストリングスもそうなんだけど、リズムとホーンの締まり具合がまさにファンクで、この両方が小沢さんの音楽を支えているというのが。

そして中低域の厚みが小沢さんのアルバムとおんなじ感じなのがなるほどというかさすがという印象です。どなたかも書いていらしたと思うのですが、「LIFE」が出たときも、高音と低音だけ強調したキラキラサウンド全盛の中、中低域の厚みに渋さを感じていたので。そんなことも思い出す音でした。


音楽

最近の曲、20年以上前の曲、どちらもが愛され受けとめられていました。

「ひふみよ」では新曲が特別席に座っていた。それを私はとてもうれしく思いました(帰ってきてくれた上に、新曲も!って)。

「魔法的」では、むしろ新曲が主役でした。その試みも、新曲たち(歌詞も含め)がそれに耐えられるクオリティだったことも、やっぱりうれしかった。

今回は、最近の曲も以前の曲も、両方が溶けあっていて昇華されていたんです。

「ひふみよ」と「魔法的」はこのための布石だったのか・・・というのは言い過ぎとしても、この3つのコンサートツアーは実は三部作だったのかな、と思わせるような完成度です。これもやっぱり、とてもうれしい。


三部作の完成

そんな中で感じたことはたくさんあるんですが、特にやられたのは本編ラスト2曲の選曲です。

その中でも特に身体に衝撃を感じた瞬間は・・・

まず、その1曲目「ある光」がなんの曲かわかった時。なぜそれがアップテンポでギターもひずみ気味だったのかという理由もその時すぐにわかりました。

そして、小沢さんが「次の曲も思いっきり歌いたいです」と言ってその曲のイントロが流れ、「狂ったように歌いたい。狂ったように」と言ってその2曲目「流動体について」が始まったとき。

小沢さんが、この20年間を総括して、本当の意味で帰ってきてくれたんだ!JFKから羽田へ!と実感したその時の衝撃。

上に書いた、「ひふみよ」「魔法的」と今回の「春空虹」の位置づけもすっと腹におちました。三部作の完成。

詞だけでも、音楽だけでも極上なのに、ステージパフォーマンスも素晴らしい上に、この「選曲」というとどめ。

毎回、音楽以外の、かなり重要な何かがあるよなあ、この人のライブは。


終演後

こうして私は、またしても、この人のコンサートを心から愉しませてもらうと同時に、驚かされ、打ちのめされ、うれしくなり、日常に戻ったのでした。まあ、5カウントだけではすんなりとは戻れないんだけれども。

f:id:yositeru:20180430095147j:plain


関連メモ

小沢健二コンサート

小沢健二の曲

コーネリアス、フリッパーズギター

音楽全般のおすすめメモ


(広告)