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高校時代の仲間たちが語る村上龍 - 69 sixty nineオフィシャルガイドブック

村上龍「69」。龍さんが1969年・17歳のときのエネルギーにあふれた日々を、笑いと、時には考えさせる描写で描いた小説。この小説の映画が2004年に公開されているのですが(実は未見です)、そのオフィシャルガイドブックにはこの小説のモデルになった人物へのインタビューが掲載されています。この小説を1987年・17歳のときに読み村上龍に注目するようになった私としてはそれが気になり、中古でガイドブックを入手してみました。

ケンとアダマ

まず最初に、主人公ケンのモデルである村上龍さんと、いちばんよくつるんでいる友人アダマ(山田正)のモデル室田正則さんとの対談について。

二人ともまず映画について。俳優がちゃんと佐世保弁を話していると語っています。龍さんも「方言で映画に入った」と。特に体育教師役の嶋田久作さんが上手だったそうです。

映画のガイドブックなので映画についての好意的なコメントが続きますが、違和感を感じたところにも言及がありました。

村上:米軍基地のフェンスを飛び越えるところ。あそこだけはプロデューサーの伊智地さんに「変えてほしい」と言ったんだけど、監督が撮りたかったのかな。でもね、基地の街の子供は、アメリカ軍には悪戯しないんです。からかうなんてとんでもない。それは本当の支配者だって知ってるから。

村上龍作品は、米軍の存在や、外国の軍隊と日本の関係性をテーマにした作品が多くあります。デビュー作「限りなく透明に近いブルー」「半島を出よ」など。現時点での長編最新作の「オールド・テロリスト」にも米軍は登場します。そんな龍さんとしては、これは見過ごせないポイントだったのでしょう。


一方、室田さんの語る当時の龍さんはこんなふう。

室田:(インパクトは)すごくありましたね。ランボーやら、サルトルやら、ゴダールやら、まったく知らないことばかり話されて。それでレッド・ツェッペリンのLP貸してもらって聴いて、本当に衝撃的で。”何これ?”みたいな。
村上:いや、僕は触媒みたいなもので、ランボーにしても、あの頃の映画やロック、それに世界の政治的ムーブメントにしても、それ自体に力があったんですよ。教師が言ってることよりも、そっちのほうがリアリティがあるっていう感じがしましたから。
うちのお袋は延々言ってたもん。”村上龍がウチの息子をダメにした”って(笑)。


そして、小説に書かれなかったエピソード。

村上:(要約)担任の松尾先生が、「”あの二人はバカだからあんなことをやっているんだ”っていう教師もいる。悔しいから、今度の期末テストはいい点をとって見返してやってくれ。数IIIだけでいいから。」室田とちょっと勉強したら、室田が97点で1番、僕が94点で2番だった。これは自慢してるみたいだから書かなかった。

そういえば小説でも、龍さんが模試で非常にいい成績を残したことが書いてあったような。


その他の登場人物

その他にも、モデルとなった人物が当時のこと、当時の龍さんのことに応えています。実名も記載されていますが、ここでは控えておきます。

「指紋のない中村」

龍さんの後輩で、バリケード封鎖のときに校長の机の上に・・・の人ですね。

(龍さんは)エネルギーのかたまりみたいな人でした。(中略)同級生の中には、龍さんを怖いと感じていたのもいましたが、私はとにかくスゴイという感覚を持っていました。(中略)とにかくいろんなことを知っていて、教えてもらっていたような感じです。それは今でも同じです。それと、一学年下ということもあったんでしょうが、私にはすごく優しい人でした。それ以来、今でも仲良く一緒に遊んだり仕事をしたりしています。

「長崎オランダ村」で、小説家ケン(龍さん)とともに食べて語り合うイベント企画業のナカムラもこの方ですね。龍さんのキューバイベントなども一緒にやっておられるのだとか。

「佐藤ユミ(アン・マーグレット)」

小説で「妖婦」と形容されるヒロインの一人。この本が出る少し前まで、佐世保市内で英語教室をなさっていたそうです。アンケートの回答も知性がにじみでるような感じでした。

(龍さんは)目の鋭い人だった(中略)。時折見せる笑顔はとても優しく、良い家庭の、育ちのいい男子生徒という印象もありました。
あのイベントに参加したのは、せめてもの自己主張でした。薄暗く、少し痛みを伴っていた若いときの思い出が、今、明るい花束になって戻ってきたような気がしています。龍さんに感謝です。
私たちの母校は、あの映画の風景にしっくりとなじむようなノスタルジックな雰囲気をもつ学校です。撮影許可が下りなかったことは、あの時代の生徒と学校の構図を象徴しているようで、感慨深いものがあります。

前述の室田さんとの対談で、龍さんは、(小説・映画の舞台である)佐世保北高校では、この小説で描かれているバリケード封鎖が「今でもジョークになっていない」と語っています。「佐藤ユミ」さんの最後の回答もそれを裏付けている気がします。

「長山ミエ(工業の番長の女)」

(龍さんは)いつも「いいもの観たほうがいいよ。いい音楽聴いたほうがいいよ」と周囲のみんなに言っていました。人並み外れて情報収集に長けていて、私たちが知りたいと思うことを先に知っていて、そのことが膨大にあるため、自分を持て余しているふうでした。

この方、なんと小説で交際していた「工業の番長」と結婚され(その後離婚)、お子さんもいらっしゃるそうです。

「バンド・シーラカンスのヴォーカル フクちゃん」

(69年の龍の印象は)才能が出口を求めてウロウロ、イライラしている

この方の回答ページは、字数制限を大幅に超えているためフォントサイズがかなり小さくなっていました。その熱意のようなものも含め、小説でのイメージに合っている気がします。今も「シーラカンス」での活動を続けていらっしゃるそうです。




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