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外国語人気ランキングとその変化(特に日韓日中関係の影響)

日本で人気がある外国語は何語なのでしょうか。まあ一番は英語なんでしょうけど、その他は時代によって変わっている気がします。

なので、NHK語学番組テキスト発行部数からそれを推測してみます。

1999年時点

まずは井上史雄さんの「日本語の値段」にある調査結果から。

  • 英語が圧倒的1位。1999年で300万部。
    • 大きく伸びたのは1961年~63年(約30万部~約180万部。以下、すべて折れ線グラフを目視した推定値)、平成2年~3年(約225万部~約400万部)。
    • ピークは平成3年で微減しており1998年現在で300万部。
  • 中国語 64万部(1967年スタート)
  • イタリア語 64万部(1990年スタート 急伸長中)
  • フランス語 44万部(1959年スタート?)
  • スペイン語 28万部(1967年スタート)
  • ドイツ語 21万部(1959年スタート?微減)
  • ハングル(ここでの言語名は講座名・テキスト名に合わせました) 16万部(1984年スタート)
  • ロシア語 6万部(1973年スタート)


1999年時点ではイタリア語がフランス語やスペイン語より多かったというのは意外でした。


ちなみに本書には「NHK語学番組受講者のうち、女性の占める割合(1999年)」も記載されています。

  • イタリア語8割
  • フランス語7割
  • スペイン語6割
  • ドイツ語5割


イタリア語人気は女性が支えていたのですね。

さて、以上の結果はいわゆる「韓流ブーム」の前の時期のものです。また、その後の日韓・日中関係の冷え込み時期も入っていません。なので、その後を追ってみました。


2000年代以降の朝鮮語*1・中国語の人気推移

2005年

「冬のソナタ」が日本で放映されたのが2004年からですが、翌年には早速NHK講座のテキスト発行部数にも影響が出ていたようです。

2000年代に入ると、「韓流」が社会現象となり、第2次韓国語ブームが起こりました。2001年に8万部だったNHK講座のテキスト発行部数が、2005年以降、テレビ22万部、ラジオ10万部で計32万部と大幅に増えていることからもわかります。

(「公益財団法人国際文化フォーラム 」(2010年)から)

やはり韓流ブームの力は大きかったようですね。これが文化の力か。

ではその後は?尖閣諸島で日本の領海を侵犯していた中国漁船の船長が海上保安庁に逮捕されたのが2010年、日本政府による国有化が2012年。韓国の李明博大統領が竹島に上陸したのも2012年。

なので2013年の状況を見てみます。

2013年(平成25年)

CD付テキスト(基礎英語1・2・3)の発行数は550,200部(24年度588,400部)。その他15講座の発行数は799,000部(24年度928,700部)と24年度から大きく部数を減らした。特に、中国語、ハングル講座の落ち込みが著しかった(24年度比73.4%、その他の講座91.5%)。

(「一般財団法人NHKサービスセンター 平成25年度事業報告書」から

日韓関係・日中関係の悪化が語学人気にも影響しているようです。わりとはっきり出ていますね。

では現在は?


2018年

NHK関連のサイトでは情報を見つけることができなかったので、オンライン雑誌通販サイトのFujisan.co.jpの売上ランキングから、英語以外のテキストについて。

  • 3位 NHKテレビ テレビでハングル講座
  • 8位 NHKラジオ まいにちロシア語
  • 9位 CD NHKラジオ まいにちフランス語
  • 11位 CD NHKラジオ まいにちロシア語
  • 17位 NHKラジオ まいにちフランス語
  • 19位 NHKテレビ 旅するスペイン語
  • 21位 NHKテレビ 旅するドイツ語
  • 23位 NHKテレビ テレビでハングル講座 書いてマスター!ハングル練習帳
  • 26位 NHKラジオ まいにちイタリア語
  • 27位 NHKテレビ テレビで中国語
  • 28位 NHKラジオ まいにち中国語
  • 30位 NHKテレビ 旅するフランス語

Fujisan.co.jp NHK語学テキストランキング2,018年1月14日閲覧結果から抜粋)


これはちょっと意外すぎる結果。特にロシア語がここまで上位に来ていること、中国語がこんなに低いことが。

何か理由があるのかもしれませんが、思いつきません。オンライン雑誌通販サイトということから、一般の書店とは違う何かのバイアスがあるのかな。

というかそもそも、これだけネットやスマートフォンアプリなどで語学学習ができる環境になった今、NHKの語学テキストの部数で語学人気を推測するという試み自体に無理が生じているのかもしれません。

ただ、1999年頃のイタリア語人気は今は落ち着いていることなどはわかる気がしますし、なんだかんだいって今も韓国ドラマなどが一定の人気はあるようだし、国家間関係と言語は別、という割り切りが進んでいるということなのかな、とも感じました。だからといって国家間の関係がよくないままでいい、とは思いませんが。

ちなみに売上1位はこちらでした。


大学の外国語科目開設状況

さて、NHK語学テキスト以外に日本での人気外国語を調べる方法はないかと思っていたら、「日本語の値段」の著者井上史雄さんが、大学の外国語科目開設状況をまとめてくださっていました。(その名も「『日本語の値段』のその後」という記事です。 → スリーエーネットワーク「季刊ジャネット第54号」(2010年)(PDF)

それによると、2000~2007年の人気ランキングと状況は以下の通りです。

  • 1位はもちろん英語だが・・・
  • 2位は中国語で、英語とそんなに差がなく、この期間に大幅に伸びている
  • 3・4位はフランス語とドイツ語が同じくらい
  • 5位の韓国語(この記事での表記)はこの期間にもっとも延びている
  • 6位スペイン語は2000年時点の韓国語と同じくらいだがこの期間に変化がない
  • 以降ロシア語、イタリア語、ラテン語、アラビア語と続く


やはり中国語と韓国語の伸びが目立っています。

2007年までの状況なのでその後の日韓・日中関係悪化の影響はわかりませんが、科目数をすぐに減らすことはできないにしても、科目登録者が少なくなるなどの影響は出ているのかもしれません(未確認)。



以上、NHK語学テキスト部数でも大学の外国語科目開設状況でも、言語の人気はやはり経済・国際関係・文化の浸透度の影響を強く受けるということが確認できたように思います。まあ、当たり前の結果ではあるのですが、思ったより外国語人気って簡単に変化するものなんだな、という印象です。


関連メモ

日韓・日中関係

竹島と尖閣諸島が論争になっていった経緯は。


台湾が親日なのは本当なのか、そしてその理由は何なのか。


文化が国家関係を超えた例。(「11月21日(木)東京ドーム」の項に韓国のファンの方とのやりとりを記載。このメモでは短いですが、実際にはもっといろいろお話しでき、その後もLINEでやりとりさせていただくなど長いおつきあいになりました。)


(英語)日韓・日中関係についての個人的な感覚と、韓国・中国の方との150以上のやりとり(コメント欄)


言語関連

同じく「日本語の値段」からのメモ。


西洋人と東洋人のもののとらえ方が違う様子を複数の実験で確認し、その理由を推察。


「幼児は与えられる言語データが不完全でも完全な文法能力を生み出せる。これはなぜか?」「読字障害者の割合が日本より英語圏で多い理由について」など。


アマゾン奥地で発見された「これまでの言語理論を揺るがす言語」について。


長崎方言と「日本人のルーツ」のかかわり。


本・まんが総合

興味深かった本の一覧と感想ぺージへのリンク。

*1:朝鮮語、韓国語、ハングルなどいくつかの呼称がありますが、日本トップクラスの外国語研究・教育機関である東京外国語大学の言語名表記が「朝鮮語」のため、このメモではそれで統一します。


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