3本の共通点は、「謎をオカルトで解決しない」、つまり現実でも物理的には再現可能な内容だったところ(苦しいシーンもあるが・・・特に1本目)と、最初から最後までドキドキできたこと、噂通りどの作品もラストで「ほほう」と感じられたところ。では、作品毎の味わいの違いは?それをメモしていきます。ネタバレはないつもりです。
シャッターアイランド(2010年)
物語
1954年アメリカ。連邦捜査官のテディとチャックは、犯罪歴のある患者ばかりを集めた精神病院の島「シャッターアイランド」へ向かう。患者が1名失踪したためだ。しかし、病院は捜査に非協力的で・・・
感想
公開当時、上映前には「この映画のラストはまだ見ていない人には決して話さないでください」などのテロップが流れた作品なので、衝撃のラストを期待していたのですが、この作品の一番おもしろいところはそこではないように感じました。
最初に見終わった感想は「結局どっちが真相なんだろう?まあたぶん[こちら]なんだろうな」というものでした。で、テディ役・ディカプリオへのインタビュー(映画.com)(ネタバレ)などを読む限りでは、制作側の意図は、よしてるの想定と同じだったようです。
さらに「映画「シャッターアイランド」徹底解説サイト」(ネタバレ「あり」ページも「なし」ページもあり)を拝読すると、いろんな「ちょっと引っかかるシーン」が「こんな理由でこうなっている」ことがわかってきました。このサイトのおかげでこの映画のおもしろさがぐっとアップした感じです。サイト制作者さんに感謝します。この映画についてはこの「徹底解説サイト」があればもう十分かと思います。
一点だけ付け加えるとしたら、あるシーンでマーラーの音楽が流れていた理由について。(以下、映画を未見の方には意味不明な記述になり申し訳ありません。ネタバレにはならないと思います。)私はこれを、マーラーがユダヤ人だったことと、その音楽にもユダヤの音楽が取り入れられているためだと考えています。
要するに「二度見が楽しい映画」だと言えると思います。公開時に「二度見キャンペーン」が行われたのもマーケティングとして的確かと。
悪夢のエレベーター(2009年)
物語
エレベータが突然止まり出られなくなった。中にいるのは、妻が出産間近の浮気男、出所したばかりの中年空き巣やくざ、人の心を読める中年ジョガー、自殺志願のゴスロリ少女。突然の密室の中でそれぞれが会話を交わすうち、次第に各人の事情が明らかになっていく・・・
感想
オチが一番意外だったのはこれかな。舞台が現代の日本で、かつ日常的な場所を中心に話が展開するので、映画の中に入っていきやすかったのもよかったです。そしてそういう何の変哲もない舞台でこれだけの要素を詰め込めるのもなかなかの手腕だと感じました。
エスター(2009年)
物語
現代北米。三人目の子どもを流産したケイトは、喪失感を癒すため家族と相談し孤児院から聡明な女の子エスターを家族として迎え入れる。しかしエスターが来てから事件が次々起こり・・・
感想
この3本の中で、映画として一番どきどきしながら観られたのはこの作品でした。よくできたサイコホラー。スプラッターな場面がないし、嫌な映像は一瞬で終わらせるところも「精神面でどきどきさせてやる」という制作側の意気込みが感じられてよかったです。
ちなみにオチは観る前から予想してたのがたまたま「あたり」でしたが、そんなことで面白さが損なわれる映画ではありません。
ところで、エスターの名前について感じたことがあります。英語での綴りはEstherなのですが、これは旧約聖書に出てくる女性「エステル」がもとだと思われます。このエステルは養子で、養われた一家に対してではないものの後に多くの人に災厄をもたらすこと(ユダヤ人から見るとそれは正当な復讐になるのでしょうが)が映画のエスターとの共通項という気がします。狙ったのかな。考え過ぎかな。
なお、エステルについて書かれた「エステル記」は、聖書の中でも論議を呼ぶ書のようです。参考になるサイトをご紹介します。
【旧約聖書】エステル記の謎:神がいちども登場しない復讐の物語がなぜ聖書に入っているのか? | しろうと哲学者トリス氏の生活と意見
そうそう、以上の3本とも、愉しめますが後味はあまりよくありません。ダウナーなときは避けて味わわれるといいと思います。