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なぜ女性作曲家は少ないのか

(2018年3月16日更新)

音楽が人間にどのような影響をどのようなメカニズムで及ぼすのか。それに性差はあるのか。それを考察した本です。

男性ホルモンと音楽

まず、実は男性ホルモンと音楽に関連性があるという実験について。

  • 200名の被験者に様々な種類の音楽を聴かせる実験を行った。
  • どんな種類の音楽を聴いてもテストステロン(男性ホルモン)は変化した。
  • しかし、変化の仕方に性差があった。男性は音楽を聴くとテストステロンが減ったが女性は上昇した。

音楽を聴くと、男性は男性ホルモンが減り女性は増える、つまり中性化するのですね。

それが何を意味するのかは私にはわかりませんが、男性ホルモンが音楽と関連していること、作用が男女で逆であることはわかりました。

他の調査結果はどうでしょうか。

  • ラットの雄は超音波で鳴いて雌を誘うが、この音声の発生にはテストステロンが必須。
  • カエルでもテストステロン値が高いと長い間泣き続けられる。
  • 16-20世紀のクラシック音楽家129名の作品2,148曲について、それらの曲が作曲されていた月を集計したところ、3月と7・8月がもっとも多いことがわかった。
    • これはテストステロンが多くも少なくもない中間値である時期と一致している。
  • 以上のことから、テストステロンと音楽には関連性があると考えられる。

男性ホルモンはラットやカエルが鳴くのにも必要なのですね。鳴き声を音楽と考えると、これも「男性ホルモンと音楽」の関連を表しているといえそうです。

しかし、人間が作曲するには男性ホルモンが「多くも少なくもない」ほうがいいのですね。これは意外です。

もっと意外だったのは、男性ホルモンが季節で変わるということですが・・・

よしてるによる補足

テストステロンについては、「男性ホルモンである」ということくらいしか知らなかったのでちょっと調べてみました。

男性ホルモンのテストステロンは「男を形づけるホルモン」です。精子の生産など性機能に大きく関わり、筋肉や骨格、毛深さなどの性的特徴を発揮させます。闘志や攻撃性など精神面にも関わり、その男性の性格に大きな影響をおよぼしています。女性にもテストステロンはあり、女性の心身に少なからず影響をおよぼしていますが、男性と女性ではそのレベルに10倍から20倍の違いがあります。逆に、女性ホルモンのエストロゲンも男性にあり、脳や骨に働くことが分かっています。

ニッスイアカデミーより引用

男性ホルモンは、その男性の性格にも影響があるのですね。ものを創造したい、作曲をしたいというような気持ち・気質にも影響するのかもしれません。

それを裏付けるような、男性ホルモンと職業との関連性についての記事もありましたので紹介します。(朝日新聞の医療サイトapital「テストステロンは『長寿ホルモン』男はつらいよ 医療篇」長尾和宏医師

  • テストステロンが高い人が多い職業:画家、俳優、音楽家、建設業、猟師、スポーツ選手、軍人
  • テストステロンが低い人が多い職業:牧師、教師、医師

男性ホルモンの多い人の職業はいわゆる芸術系(音楽家も含まれていますね)と身体能力が要求される系で占められていますね。一方男性ホルモンの少ない人の職業は知識労働職という感じです。

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女性作曲家が少ない理由

で、前置きが長くなりましたが、このメモのタイトル「なぜ女性作曲家は少ないのか」についてです。本書の考察をまとめてみます。

  • 脳の右半球に損傷が起こると、言語能力は正常だが音楽能力が失われるという症例がある。
    • よって右脳と音楽能力は関連していると考えられる。
  • 男性は胎児期から自分の睾丸などから大量のテストステロン分泌を受ける
    • → 左脳のニューロン構築を遅らせる
    • → 代償として右脳が発達する
  • 男性作曲家は何らかの原因(遺伝、病気、ストレス)でたまたま男性ホルモンの分泌異常が起き、そのために音楽能力を司る右脳がより発達し、優秀な作曲家になるのではないか
  • 女性には以上のプロセスが起こりにくいので作曲家が少ないのではないか

右脳は音楽能力と関係しているが、男性は男性ホルモンのおかげで右脳が発達しやすい(左脳の発達の遅れの代償として)。だから女性よりも作曲家になりやすい。

これが、男性に比べ女性は作曲家が少ない理由なのです。

前段で、男性ホルモンと音楽の関係をご紹介しましたが、それ以前に、男性ホルモンは音楽能力に関係のある脳を発達させる作用があるということですね。

よしてるの感想:作曲家と作家の違い

私も以前から、なぜ教科書に載っているような有名作曲家は男性ばかりなのか気になっていました。

もちろん、昔は女性が表立った表現者として活躍することが難しい社会事情があったということは理解しているつもりですが、一方で同じ時代に現代でも読み継がれている作品を生み出した女性作家はいます。この違いはなんなのかと。

よしてるが思いついた例を挙げてみます:

  • ジェーン・オースティンとベートーヴェン
  • ブロンテ姉妹とショパン
  • 樋口一葉と滝廉太郎
  • 与謝野晶子と山田耕筰

上記の人たちは、それぞれほとんど同じ時代を生きていますが、同時期の女性作曲家を思い浮かべることは難しいです。

そんな疑問がずっとあったので、本書の「男性のほうが男性ホルモンのおかげで右脳が発達しやすいから、女性よりも作曲家になりやすい」という説は、非常に納得度が高いものでした。

それに、言語機能、つまり小説や詩に関連する能力は、左脳に存在することが多いという事実も、この説の納得度を高めています。

右利きの人の大多数(98%あるいは99%)が、言語機能は左脳に支配されている。右脳は顔を識別したり思いだしたりする働きや、空間的な位置関係を理解する働きをしている。左利きの人の脳の構造と働きにどのようなパターンがあるかはわかっていない。左利きの人の約65~70%が左脳に、30~35%が右脳に言語機能をもつといわれている。また、右脳と左脳の両方で言語機能が統御できる人もいる。

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となると、「女性のほうが男性ホルモンが少なく右脳が発達しにくいため、左脳がより発達しやすいため、男性よりも作家になりやすい」と言えるのかな?

以上はよしてるの思いつきですが、作曲家と作家におけるそれぞれの男女比の違いの理由を考えるときのヒントにはなりそうな気がしています。


音楽能力と免疫

その他、興味深かった箇所がこちら。

  • 音楽能力・数学能力・言語能力が高い人は男女を問わず他の人と比べて2倍もアレルギーになりやすい。
  • ゲシュヴィンドとガラバルダは、この理由として左脳の発達の遅れ(その代償で右脳発達→音楽能力が発達)が、免疫機能に関係した組織(胸腺など)に障害が起こすのでは、と言っている。
  • テストステロンは免疫系を抑制する(免疫活動が低下し胸腺の成長も遅れる。寄生虫への抵抗も弱まる)

音楽能力の高い人はアレルギーになりやすい、その理由がまたしても左脳の発達の遅れにあるというのです。

感想

これも非常に興味深いのですが、具体的データは挙げられていませんでした。

個人的には、テストステロンは攻撃性を高めると言われているのに、攻撃を実現するための最も基本的な要件の一つと思われる「丈夫な身体の形成と維持」に反するこの作用がなぜ起こるのかが不思議だなと感じています。なので納得度は低いです。


人間が子孫を残し生き残る上で、音楽はどう役立つのか?

これも長年の疑問でした。

有力なのは「社会化説」「社会統合説」だそうです。

  • 音楽は、情動に働きかけることで人間関係を円滑にし、お互いの協力を通じて、社会の統合や維持に役立つ。
  • この説の強みは、民族音楽学や文化人類学で明らかにされたさまざまな文化での音楽の姿と一致していること。

音楽は社会をまとめるツールであるという説ですね。

感想

これも以前から気になっていたことです。音楽にこんなに心を奪われるのはなぜか?こんなに影響を受けるのであれば、その理由があるはず、と。

別のある本では、音楽は「威嚇」の一種であり、男性が別の男性を驚かせ女性を得る競争に勝つためのツールという説を読んだことがあります。

しかし、実際には男性音楽家に魅力を感じる男性も多いので、それはどうかなと感じていました。

なので、この「社会化説」のほうがよりしっくりくる感じです。実際は、この説も含めた、いろんな「存在理由」が音楽にはあるのだと思います。

関連メモ



全体を通じた感想

以前から感じていた疑問に、ある程度科学的な視点から興味深い仮設を導きだしてくださっていることは評価したいです。

しかし、客観的な記述と主観的な記述(音楽への愛情や世相への不満など)が混在している点と、根拠データの記載が少なすぎるところは不満です。参考文献リストがないことにもがっかりしました(と思ったら、出版社のページに掲載しているようです)。

読んで興味深かったけど、もっと根拠を具体的に挙げてほしかったです。おそらく読みやすさを優先して現在のかたちになったのでしょうが、重要な箇所だけでもデータを明示されていれば、より納得して読めたと思います。




関連メモ


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