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ブライアン・エプスタイン「ビートルズ神話 エプスタイン回想録」

ビートルズをデビュー前から支え解散前の1967年に33歳で死去したブライアン・エプスタインが1964年8月(ビートルズが世界的スターダムにのし上がった頃)に書き上げた回想録です。日本では1972年に片岡義男さんの訳で出版されています。友人がTwitterでこの本のことを書いていたのを見て読んでみました。あれだけビートルズのそばにいた人が彼らをどんなふうに見ていたのか。そこが特に知りたかったのです。印象に残ったところは次の通りです。


まず「ビートルズの魅力は、なにか魔法のようなものであり、有機的に微妙につながりあった説明不可能なものであるかもしれません・・・その魅力は「シー・ラヴズ・ユー」などの音楽的な魅力をはるかにこえています。」という言葉。ビートルズの最大の魅力は、というと、私自身の感覚ではそれは音楽だとは思いつつ、そう断言できないくらいにそれ以外の「魅力」も感じているのが実情です。あれだけビートルズと膨大な時間をともにしたエプスタインも、やっぱり彼らの音楽以外の名状しがたい魅力に惹かれていたんだなあ。

個々のメンバーについてはどうか。「ポールは気分屋で不機嫌なことが多くつきあいにくい。聞きたくないことは一切聞かない。スイッチを切ったみたいに。しかし心の深いところではやさしい。はじめての人たちに会うようなときには、ポールが一番愛想がよい。単にうわべだけのものではなく、周囲の人たちがそうすれば楽しい気分になれるのだということを知っているので、自然に微笑や熱意が出てくる。また、他のメンバーにも忠誠心がある。だから私は彼のことを高くかっている。(以上要約)」このポールに関するコメントはなんかすごくよくわかる。って私はポールのプライベートを知っているわけではもちろんないんですが、いろんな映像や逸話を聞いて勝手に想像しているポール像にぴったりあてはまっている感じです。「15万ポンドとひきかえにビートルズのマネジメント権を譲らないか、という話があった。ビートルズのマネジメントが多忙とプレッシャーでつらかったので、保留にしてメンバーに相談した。ポールは「それなら、ぼくたちも店をたたむ」と即答した(要約)」というエピソードも非常に「らしい」なと思いました。

一方で、「ビジネスの面でもっともたけているのがジョージ。金銭感覚が鋭い。」というコメントには驚いたものの、「いろんなことを知りたがる。」というのは後のジョージのスピリチュアル面の探求を暗示しているようで興味深いです。


エプスタイン本人については、子供の頃は体が弱く他の生徒とうまくやっていくことができず学校を変わったり、青年期も軍隊から抜けたりもしたものの、家業の家具屋で売り子を始めると頭角を現したとのこと。そこでお客の身になって考えることの重要性を知った、販売の仕事はとてもやりがいがあるとの言葉もあり、これがビートルズのマネジメント姿勢につながっているのかと納得しました。

読んでいて一番印象深くかつ重かったのは、この回想録の終盤で「私が、すべての責任をとらなければならないのです。おかねの問題が心配なのではなくて、仕事の面での失敗が気に病まれるのです。・・・私の実力を名声の大きさのほうが追い抜いてしまっています。」などという記述が頻発するところ。ビートルズが成功の階段を駆け上がりまさに世界中で知られるようになった時期で、薬物の過剰摂取で死去する3年も前の段階ですでにこのような状態だったのです。仕事のプレッシャーだけでなく、ロンドンのショウビズ界では彼の若さや地方(リヴァプール)出身であることもコンプレックスの源泉になっているようで、苦悩している様子が重く伝わってきました。この本の記載内容には一部信憑性に疑問があるとの声がありますし、実際そうなのかもしれませんが、この部分は特に「エプスタインの心の叫び」のように感じられ、そういった疑問はまったく感じませんでした。


優れたルポルタージュに見られる整理された情報や文章で構成されているわけではないですが、逆に本人がとつとつと語っているようなこの本だからこそビートルズそしてブライアン・エプスタインの「肉声」を感じられたような気がした次第です。


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